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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略
第267話 迷宮都市 お互いの事情説明&食事会 2
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なんで?
だってこの味、母が作った物と全く一緒だ。
父が好きな肉じゃがの味がする……。
母はとても料理上手だったから、その味で育った私達兄妹は少しの味の変化にも敏感だ。
旭は味音痴な母親の料理を食べていた所為か、私が何を作っても美味しいと言って食べてくれるんだけど。
サヨさんが味噌汁を飲んで、満足そうに頷いたのでほっとする。
ちゃんと鰹節から出汁を取って作ったのだ。
いつもは簡単に出汁の素で作るんだけど……。
今日は、お客様に食べて頂く物だからね。
鰤の照り焼きも、とても美味しかった。
これも母の作る味によく似ている。
兄が一通り料理を食べ終えた頃にサヨさんへ質問した。
「つかぬ事をお聞きしますが、日本の娘さんの名前は木下 美佐子ではありませんか?」
「ええそうですよ、何故娘の名前をご存じなの?」
「母が昔、話してくれた事があるんです。60歳で若くして亡くなった祖母の事を……。祖母の名前は小夜と言うらしいです」
えっ!?
兄は突然何を言い出すの?
それって、サヨさんが私達のお祖母さんって事?
でも年齢が合わないじゃん!
母もサヨさんも78歳なのに……。
「お母様の名前は、本当に木下 美佐子と仰るの?」
「はい。今は結婚して椎名 美佐子になっていますが、旧姓は木下です」
「まぁ、まさかそんな事が……。異世界であの子の産んだ孫に会えるなんて……」
サヨさんは、兄の言葉に感極まって泣き出してしまった。
旭は突然の話の内容についていけないらしく、口をポカンと開けたままだ。
「お兄ちゃん、それじゃあサヨさんは私達のお祖母さんって事なの?」
「あぁ。名前に聞き覚えがあったんだが、料理を食べて確信した。母の作る肉じゃがと同じ味がしただろう?」
「うん、私もそれには驚いた」
こんな事があるの?
母方の祖母は、私達が生まれる前に亡くなったと聞いていた。
当然、私達は一度も会った事がない。
それにサヨさんは、こちらの世界で転生したから母の容姿と似た所は見当たらず全く気が付かなかった。
兄は祖母の名前を知っていて、更に料理を食べて思い至ったんだろう。
最初にサヨさんの名前を聞いて首を傾げていたのは、名前に聞き覚えがあったからなんだ。
確かに、ここまで母と同じ味だとは思わなかった。
料理には、その家の味付けが出る。
所謂、家庭の味だ。
旭の家は……。
まぁ、誰にでも得手不得手はあるから仕方ない。
私も何度かご馳走になった事があるけど、砂糖と塩を間違えた料理が出てきたよ。
旭の母親は、味見をしない人らしい。
基本の料理に、色々付け加えて何だかおかしな味になってしまう人もいる。
隠し味が、隠してない味になっていたりね。
料理は愛情だとよく言われるけれど、過度の愛情は入れない方がいい気がする。
基本を忠実に、それから少しずつ好みの味に寄せていけばよい。
「サヨさん。私達の体に直接血の繋がりはありませんが、今でも日本の両親が親だと思っています。異世界で亡くなったお祖母さんに会う事が出来るなんて、とても驚きました。これからは孫として、よろしくお願いします」
「ええ、ええ、勿論ですよ。美佐子の子供ですもの、祖母だと思ってちょうだい。あの子は子供に先立たれてしまったのね。私が60歳になった時、娘はまだ結婚していなかったのよ。あれからちゃんと結婚したのね。こうして娘の産んだ孫に会う事が出来たのだから……」
そう言って再びサヨさんは涙を零した。
転生し日本に残してきた娘の産んだ孫に会えたのだから、感動もひとしおだろう。
離れ離れになってしまった家族の消息が分かったのだ。
正直私は会った事がないので、祖母だと言われてもピンとこなかったけれど。
家族になるには、一緒に過ごした記憶がないと難しい。
特に母は思い出すのが辛かったのか、亡くなった祖母や祖父の事は余り話さなかった。
祖母が亡くなって数年後、私がまだ幼い頃に祖父も他界している。
3歳だった私には、祖父の事も記憶にないのだ。
兄は覚えているだろうか?
やっぱり私が異世界に転移したのは何か理由があるらしい。
ここまで関係者に会う事になるとは……。
そして異世界と日本では時間の流れが、必ずしも一緒ではないと気付いた。
これはどうやら雫ちゃんも、見付かる可能性が高そうだ。
確証がないから旭には言えないけど……。
そして突然思い出す。
サヨさんは、兄達の恋愛に賛成してくれるだろうか?
日本での記憶を持っていたら同性愛には厳しいかも知れない。
特に母親の世代はカミングアウトも中々難しい時代だった。
更にその上の世代となるとお察しだ。
下手したら別れさせられるかも?
こりゃ前途多難だ。
結婚するどころじゃないかも知れない。
私が全力でバックアップしてあげないと!
サヨさんがお祖母さんだという事よりも、兄達の恋愛が心配になり仕方なかったのだった。
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お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
これからもよろしくお願い致します。
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だってこの味、母が作った物と全く一緒だ。
父が好きな肉じゃがの味がする……。
母はとても料理上手だったから、その味で育った私達兄妹は少しの味の変化にも敏感だ。
旭は味音痴な母親の料理を食べていた所為か、私が何を作っても美味しいと言って食べてくれるんだけど。
サヨさんが味噌汁を飲んで、満足そうに頷いたのでほっとする。
ちゃんと鰹節から出汁を取って作ったのだ。
いつもは簡単に出汁の素で作るんだけど……。
今日は、お客様に食べて頂く物だからね。
鰤の照り焼きも、とても美味しかった。
これも母の作る味によく似ている。
兄が一通り料理を食べ終えた頃にサヨさんへ質問した。
「つかぬ事をお聞きしますが、日本の娘さんの名前は木下 美佐子ではありませんか?」
「ええそうですよ、何故娘の名前をご存じなの?」
「母が昔、話してくれた事があるんです。60歳で若くして亡くなった祖母の事を……。祖母の名前は小夜と言うらしいです」
えっ!?
兄は突然何を言い出すの?
それって、サヨさんが私達のお祖母さんって事?
でも年齢が合わないじゃん!
母もサヨさんも78歳なのに……。
「お母様の名前は、本当に木下 美佐子と仰るの?」
「はい。今は結婚して椎名 美佐子になっていますが、旧姓は木下です」
「まぁ、まさかそんな事が……。異世界であの子の産んだ孫に会えるなんて……」
サヨさんは、兄の言葉に感極まって泣き出してしまった。
旭は突然の話の内容についていけないらしく、口をポカンと開けたままだ。
「お兄ちゃん、それじゃあサヨさんは私達のお祖母さんって事なの?」
「あぁ。名前に聞き覚えがあったんだが、料理を食べて確信した。母の作る肉じゃがと同じ味がしただろう?」
「うん、私もそれには驚いた」
こんな事があるの?
母方の祖母は、私達が生まれる前に亡くなったと聞いていた。
当然、私達は一度も会った事がない。
それにサヨさんは、こちらの世界で転生したから母の容姿と似た所は見当たらず全く気が付かなかった。
兄は祖母の名前を知っていて、更に料理を食べて思い至ったんだろう。
最初にサヨさんの名前を聞いて首を傾げていたのは、名前に聞き覚えがあったからなんだ。
確かに、ここまで母と同じ味だとは思わなかった。
料理には、その家の味付けが出る。
所謂、家庭の味だ。
旭の家は……。
まぁ、誰にでも得手不得手はあるから仕方ない。
私も何度かご馳走になった事があるけど、砂糖と塩を間違えた料理が出てきたよ。
旭の母親は、味見をしない人らしい。
基本の料理に、色々付け加えて何だかおかしな味になってしまう人もいる。
隠し味が、隠してない味になっていたりね。
料理は愛情だとよく言われるけれど、過度の愛情は入れない方がいい気がする。
基本を忠実に、それから少しずつ好みの味に寄せていけばよい。
「サヨさん。私達の体に直接血の繋がりはありませんが、今でも日本の両親が親だと思っています。異世界で亡くなったお祖母さんに会う事が出来るなんて、とても驚きました。これからは孫として、よろしくお願いします」
「ええ、ええ、勿論ですよ。美佐子の子供ですもの、祖母だと思ってちょうだい。あの子は子供に先立たれてしまったのね。私が60歳になった時、娘はまだ結婚していなかったのよ。あれからちゃんと結婚したのね。こうして娘の産んだ孫に会う事が出来たのだから……」
そう言って再びサヨさんは涙を零した。
転生し日本に残してきた娘の産んだ孫に会えたのだから、感動もひとしおだろう。
離れ離れになってしまった家族の消息が分かったのだ。
正直私は会った事がないので、祖母だと言われてもピンとこなかったけれど。
家族になるには、一緒に過ごした記憶がないと難しい。
特に母は思い出すのが辛かったのか、亡くなった祖母や祖父の事は余り話さなかった。
祖母が亡くなって数年後、私がまだ幼い頃に祖父も他界している。
3歳だった私には、祖父の事も記憶にないのだ。
兄は覚えているだろうか?
やっぱり私が異世界に転移したのは何か理由があるらしい。
ここまで関係者に会う事になるとは……。
そして異世界と日本では時間の流れが、必ずしも一緒ではないと気付いた。
これはどうやら雫ちゃんも、見付かる可能性が高そうだ。
確証がないから旭には言えないけど……。
そして突然思い出す。
サヨさんは、兄達の恋愛に賛成してくれるだろうか?
日本での記憶を持っていたら同性愛には厳しいかも知れない。
特に母親の世代はカミングアウトも中々難しい時代だった。
更にその上の世代となるとお察しだ。
下手したら別れさせられるかも?
こりゃ前途多難だ。
結婚するどころじゃないかも知れない。
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サヨさんがお祖母さんだという事よりも、兄達の恋愛が心配になり仕方なかったのだった。
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