129 / 709
第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略
第265話 迷宮都市 日本人だったサヨさん
しおりを挟む
時間がないので、残り8軒もさくさく回り人数と年齢を確認し迷宮都市に移動。
迷宮都市の子供達155人については、毎週炊き出しで顔を合わせているので全員の住んでいる家と年齢は把握済みだ。
何気に私の記憶力って凄いんじゃないかしら?
これはステータス表記にないだけで、知力がLv相当に上がっているのかもね……。
今テストをしたら満点が取れそうよ!
学生時代に、この記憶力が欲しかった~。
2つの町を確認して回っただけで、4時間以上が経過している。
でもそのお陰で人数と年齢を確認出来たので、後はサイズ別の人数を集計すればいいだけだ。
毛糸を買いに行くと言って『肉うどんの店』を出たので、アリバイ作りのために雑貨屋に行き大量の毛糸を購入する。
子供達315人分と『製麺店』の大人10名分・『肉うどんの店』の大人5名分を編むので、毛糸は幾らあっても困らない。
サヨさん達のグループにボランティアとは言え、労働力を借りて更に毛糸代まで負担してもらう訳にはいかないからね。
夕方の5時。
『肉うどんの店』の店内に入ると、まだ皆は編み物の最中だった。
母親達に毛糸の入ったマジックバック3㎥(旭から貰った)を渡して、今日の編み物教室は終了。
手伝ってくれた人全員に、お礼として桃を1個ずつ手渡した。
息子の店で売っている値段(銀貨10枚・10万円)を知っているサヨさんは、恐縮していたけれどアイテムBOXに大量にあるので気にしないでほしい。
今日はサヨさんと約束をしているので、とても楽しみにしていた。
初めて会う、元日本人の転生者もしくは転移者だ。
今まで、この世界の人に不審がられると思って聞けなかった事を色々聞いてみよう。
店を出て人気のない場所まで歩き、2人きりになってからサヨさんに話しかけた。
「サヨさん。これから私の能力で移動するので驚かないで下さいね」
「まぁ、何処に連れて行かれるのかしら?」
うふふっと、サヨさんは悪戯っぽく笑っている。
意外とおちゃめな人なんだな。
「一瞬ですから、目を瞑って下さい」
「はい、心の準備はしましたよ」
「じゃあ行きますね!」
言った瞬間に自宅の玄関に到着。
「もう目を開けてもいいですよ」
「あらあら、まあまあ! これは一体どういう事なのかしら!?」
驚かないように注意をした心算だったけれど、サヨさんは予想外の場所に連れてこられて、とてもビックリしてしまったみたいだ。
「えっと、ここにいるのも何ですし。部屋に入りましょう」
靴を脱いで部屋の中に入ると、サヨさんは固まってしまった。
「サヨさん? 大丈夫ですか? 椅子に座って下さい」
「えぇ、何とか……。まさか、日本の部屋にくる事が出来るなんて信じられないわ」
衝撃で動けないサヨさんの手を引き、椅子に座ってもらう。
ご高齢なので倒れてしまったら大変だ。
私は日本の物が懐かしいだろうと思い、緑茶を急須で入れてお出しした。
「まぁ、緑茶だわ! 懐かしい良い香りね~、頂きます」
そう言うと味わうように、サヨさんがゆっくりと緑茶を飲んでくれた。
これで少しは落ち着いて話が出来るかしら?
「サヨさん。気が付いていらっしゃるかも知れませんが、私は元日本人の転移者で椎名 沙良と申します。今は若返って19歳ですが、本当の年齢は55歳なんです」
「ええ、日本の方だと予想しておりました。『肉うどん店』のオーナーの時点でね。異世界にうどんはありませんから。私も元日本人で木下 小夜という名前でした。当時は60歳だったから夫も子供も孫もいたんです。気が付いたら、赤ん坊になっていてそれはもう混乱しましたよ」
サヨさんは遠い記憶を思い出しながら語り出したのだった。
「記憶を持ったままでしたから、60歳で赤ん坊のフリをするのも大変だったわ。母親の苦労を知っているから、なるべく迷惑をかけないように大人しい赤ん坊を演じましたけど……。お腹が空くのだけは耐えられなくてね、体が欲しがる物だからやっぱり泣いてしまうんです。不思議ですね、赤ん坊は泣くのが仕事なんでしょう。それから大人になって、今の主人と出会ったんです。日本にいた時の主人と離婚した訳じゃないから一緒になる事には葛藤がありましたけど、これも運命だと思って受け入れ結婚しました。その時に、名前をサヨと改名したんです。こちらの世界の両親が付けてくれた名前もありましたが、60年間自分の名前だったサヨの方がしっくりするんですよ。えぇ、本当に色々ありました。長い話になるけれど、同郷の誼で聞いて下さるかしら?」
「ええ、勿論。時間は沢山あるので大丈夫です。日本人の方とお話し出来るなんてとても嬉しい事なので、是非聞かせて下さい」
--------------------------------------
お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
これからもよろしくお願い致します。
--------------------------------------
迷宮都市の子供達155人については、毎週炊き出しで顔を合わせているので全員の住んでいる家と年齢は把握済みだ。
何気に私の記憶力って凄いんじゃないかしら?
これはステータス表記にないだけで、知力がLv相当に上がっているのかもね……。
今テストをしたら満点が取れそうよ!
学生時代に、この記憶力が欲しかった~。
2つの町を確認して回っただけで、4時間以上が経過している。
でもそのお陰で人数と年齢を確認出来たので、後はサイズ別の人数を集計すればいいだけだ。
毛糸を買いに行くと言って『肉うどんの店』を出たので、アリバイ作りのために雑貨屋に行き大量の毛糸を購入する。
子供達315人分と『製麺店』の大人10名分・『肉うどんの店』の大人5名分を編むので、毛糸は幾らあっても困らない。
サヨさん達のグループにボランティアとは言え、労働力を借りて更に毛糸代まで負担してもらう訳にはいかないからね。
夕方の5時。
『肉うどんの店』の店内に入ると、まだ皆は編み物の最中だった。
母親達に毛糸の入ったマジックバック3㎥(旭から貰った)を渡して、今日の編み物教室は終了。
手伝ってくれた人全員に、お礼として桃を1個ずつ手渡した。
息子の店で売っている値段(銀貨10枚・10万円)を知っているサヨさんは、恐縮していたけれどアイテムBOXに大量にあるので気にしないでほしい。
今日はサヨさんと約束をしているので、とても楽しみにしていた。
初めて会う、元日本人の転生者もしくは転移者だ。
今まで、この世界の人に不審がられると思って聞けなかった事を色々聞いてみよう。
店を出て人気のない場所まで歩き、2人きりになってからサヨさんに話しかけた。
「サヨさん。これから私の能力で移動するので驚かないで下さいね」
「まぁ、何処に連れて行かれるのかしら?」
うふふっと、サヨさんは悪戯っぽく笑っている。
意外とおちゃめな人なんだな。
「一瞬ですから、目を瞑って下さい」
「はい、心の準備はしましたよ」
「じゃあ行きますね!」
言った瞬間に自宅の玄関に到着。
「もう目を開けてもいいですよ」
「あらあら、まあまあ! これは一体どういう事なのかしら!?」
驚かないように注意をした心算だったけれど、サヨさんは予想外の場所に連れてこられて、とてもビックリしてしまったみたいだ。
「えっと、ここにいるのも何ですし。部屋に入りましょう」
靴を脱いで部屋の中に入ると、サヨさんは固まってしまった。
「サヨさん? 大丈夫ですか? 椅子に座って下さい」
「えぇ、何とか……。まさか、日本の部屋にくる事が出来るなんて信じられないわ」
衝撃で動けないサヨさんの手を引き、椅子に座ってもらう。
ご高齢なので倒れてしまったら大変だ。
私は日本の物が懐かしいだろうと思い、緑茶を急須で入れてお出しした。
「まぁ、緑茶だわ! 懐かしい良い香りね~、頂きます」
そう言うと味わうように、サヨさんがゆっくりと緑茶を飲んでくれた。
これで少しは落ち着いて話が出来るかしら?
「サヨさん。気が付いていらっしゃるかも知れませんが、私は元日本人の転移者で椎名 沙良と申します。今は若返って19歳ですが、本当の年齢は55歳なんです」
「ええ、日本の方だと予想しておりました。『肉うどん店』のオーナーの時点でね。異世界にうどんはありませんから。私も元日本人で木下 小夜という名前でした。当時は60歳だったから夫も子供も孫もいたんです。気が付いたら、赤ん坊になっていてそれはもう混乱しましたよ」
サヨさんは遠い記憶を思い出しながら語り出したのだった。
「記憶を持ったままでしたから、60歳で赤ん坊のフリをするのも大変だったわ。母親の苦労を知っているから、なるべく迷惑をかけないように大人しい赤ん坊を演じましたけど……。お腹が空くのだけは耐えられなくてね、体が欲しがる物だからやっぱり泣いてしまうんです。不思議ですね、赤ん坊は泣くのが仕事なんでしょう。それから大人になって、今の主人と出会ったんです。日本にいた時の主人と離婚した訳じゃないから一緒になる事には葛藤がありましたけど、これも運命だと思って受け入れ結婚しました。その時に、名前をサヨと改名したんです。こちらの世界の両親が付けてくれた名前もありましたが、60年間自分の名前だったサヨの方がしっくりするんですよ。えぇ、本当に色々ありました。長い話になるけれど、同郷の誼で聞いて下さるかしら?」
「ええ、勿論。時間は沢山あるので大丈夫です。日本人の方とお話し出来るなんてとても嬉しい事なので、是非聞かせて下さい」
--------------------------------------
お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
これからもよろしくお願い致します。
--------------------------------------
520
お気に入りに追加
6,155
あなたにおすすめの小説

家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました

【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!
伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。
いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。
衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!!
パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。
*表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*
ー(*)のマークはRシーンがあります。ー
少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。
ホットランキング 1位(2021.10.17)
ファンタジーランキング1位(2021.10.17)
小説ランキング 1位(2021.10.17)
ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?
水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが…
私が平民だとどこで知ったのですか?

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。