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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第243話 椎名 賢也 62 再びミリオネの町へ 1

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 冒険者ギルドで換金を済ませた後で自宅に戻ると、今後の事について沙良から提案があった。

「お兄ちゃん。ダンジョン終わっちゃったし、もうこの町でやる事ないから他のダンジョンへ行こう! まだ自宅、あきらめてないんでしょ?」

「そうだな、レベルを上げてもらわないと」

「じゃあ、やっぱ迷宮都市じゃない?」

「俺も聞いた事がある。最深攻略組が18階にいるらしいぞ? アーサーが言ってたな」

「この町ともお別れだね。今後は3人で頑張ろう!」

「早くLv30まで上げてくれ!」

「了解! 旭に明日の朝、出発するって伝えておいてね」

 2年間過ごしたリースナーの町を出る時は、大勢の人に見送られる事になった。
 路上生活をしていた子供達は、泣きながら手を振っている。
 
 炊き出しを手伝ってくれた女性冒険者や、最終攻略組の冒険者達まで総出だ。
 沙良はミリオネの町を出発する時と同じように、泣いて手を振り返している。

 最初にこの町にきた時は、沙良を狙う奴隷商やマジックバッグを狙う冒険者の対処に悩んだが良い経験になった。

 異世界では、いずれ通る道だったと思う。
 覚悟を決めて対応したが、結局この2年間で沙良を狙う冒険者は後を絶たなかった。

 男性冒険者の実に1割もの人間を不能にしたんだ。
 それはこの異世界が、法によって人権が守られていない事の証明だった。

 妹を守り抜くために、これからは旭もいる事だし心強い味方が出来たと思う。 
 妹が好きなら何も言わないでも守ってくれるだろう。

 こいつは一応空手も習っていたし、俺よりは強いと思って間違いない。
 まぁあかねに負けるようじゃ、どれだけ有効なのか疑問が残る所だが……。

 素人よりはマシなはずだ。
 俺は喧嘩けんかなんてした事がないしな。
 
 ダンジョンで11年間を過ごしたなら、魔法の扱いにも長けているから心配は要らない。

 2人で沙良を守っていけば良い。
 妹には傷ひとつ付けさせる気はないんだから、協力してもらおう。

 あいつには何も知らずに幸せに生きてほしい。
 人の悪意に絶望する事がないように……。

 そして最後に冒険者ギルドに挨拶に行った際、再びお腹を壊した事にして解体場の親父から預かってもらっていた5セットのペンダントとイヤリングを受け取った。

 無事、沙良ヘのプレゼントが完成したのだ。
 これで20歳の誕生日の準備は調った。

 本当にギリギリになってしまいあせったよ。
 俺が1カラットの宝石のカットに中々OKを出せないでいたから、宝石屋には大分迷惑をかけてしまった。

 でもこだわった甲斐かいは充分にあっただろう。
 スマホのカメラで写したような繊細なカットを実現出来たんだから、俺としては満足のいく作品になっていると思う。
 
 指輪は旭が順調にアプローチを成功すれば、購入するだろう。
 宝石は沢山余っているから、本人が作るのも有りだ。
 
 
 そうして俺達は、3人で迷宮都市のダンジョンを攻略するためにハンフリー公爵領を出た。

 沙良に手を出してきた奴隷商と冒険者だが、クランリーダーが犯人を捜し出し衛兵所に連れていった。
 そのお陰で奴隷商は捕まり、違法行為が摘発てきはつされ鉱山送りとなったようだ。
 
 これでリースナーの町の治安も大分良くなるだろう。
 俺は最後まで、自分の手で始末を付ける事にならずに済んで安心した。

 沙良が迷宮都市にいく前に、ミリオネの町に寄って子供達に武器や防具を渡したいと言ったので一度寄る事にする。

 あれから2年が経過している。
 子供達の成長は早いから、皆大きくなっている事だろう。

 馬車に揺られて半日。
 久し振りにミリオネの町へと帰ってきた。

 前回きた時は、直接ミリオネの森に移転しローリエを採取しただけだから町の中には入っていないのだ。
 沙良が最初に購入した家へと向かう。

 俺と旭はその後を付いていった。
 家には冒険者登録が出来ない10歳以下の子供が、1人で留守番をしていたらしい。

 沙良はその子供に今住んでいる人数を聞き、アプリコットの詰まった巾着を人数分と未使用の解体ナイフを渡していた。
 そして夕食は自分が作る事を伝えて家を出る。

 その後も家を4軒回り、同じように巾着を人数分渡し夕食を作る事を伝えていく。

 子供達の家の庭を借りて、沙良が夕食を作り出した。
 今回はダンジョンで狩ったファングボアの肉を使用し、コンソメも使用してスープを作る事にしたらしい。
 
 沙良がコカトリスの卵を使って卵焼きを作ると言うので、これはついに出番が来たと喜んだがオリハルコンの解体ナイフを取り出した途端とたんに頭を殴られた。

 せん。
 しかも兄を殴るとは何事だ!

 が、怒っている妹は怖いので大人しくライトボールでコカトリスの卵を電子切開しておいた。
 妹は、綺麗に割られた殼を洗ってまた収納している。

 なんでもコカトリスの卵は殻にその値打ちがあるらしく、買取金額は銀貨10枚(10万円)だが中身の卵は1万円くらいだとか。
 今回使用した卵の殻は銀貨9枚(9万円)の価値があるので、節約大好きな妹は換金してもらう心算つもりなんだろう。

 俺達2人は沙良が料理をしている間に露店に行き、パンと串焼きを購入してきた。

 旭がダンジョンから出て初めて歩く街並みを、興味津々の様子で見ている姿に自分の時の事を思い出して笑ってしまった。

 沙良に不審者のようだから落ち着いてと言われたんだっけな。
 リースナーの町では、直ぐに乗合馬車に乗ってしまったから旭は異世界の景色を見た事がない。

 ダンジョン内では20畳の部屋に閉じこめられていたから、異世界を満喫まんきつしているんだろう。 

 露店で鉄貨を払って商品を受け取る事も楽しそうだった。

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