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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第241話 椎名 賢也 60 ダンジョン 地下10階 親友が妹に召喚された 1

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 2時間程、お互いの話をしていた後で沙良が旭に質問した。

「旭さぁ。ダンジョンマスターって何かする必要ある?」
 
「いや? ダンジョンマスターの仕事は何もないよ」

「じゃ、外に出たいよね?」
 
「そりゃ勿論もちろん出たいよ! 俺11年間、ここでずっと1人だもん」

 何で今更、分かっている事を聞くのか不思議だったが次の瞬間、妹の斜め上だった発想をこの時ばかりは感謝した。

「分かった。召喚! 旭 尚人あさひ なおと

「へっ?」

 なんと妹は、異世界にいる目の前の旭を召喚したのだ!
 一体、誰がそんな発想をするだろうか?

 普通は、ここにいない誰かを呼ぼうとするだろう。
 しかも旭は既に異世界に転移させられた後だ。
 召喚出来るとは流石さすがに俺でも考えない。

 そして旭の体が光り再び光の粒子が消える頃には、20歳当時の姿に変わっていた。

 医大で勉強漬けだった日々を思い出す。
 あの頃も、ずっと家庭教師をしていた。

 うん、高校3年生からの家庭教師代は絶対請求してやろう。
 5年間分だから、さぞかし高額になるに違いない。

 お礼だと言っていたお店もおごってもらってないしな。
 しかし夢の話が本当の事だったなんて、不思議な事もあるもんだ。

 何だ?
 テレパシー的な何かか?

 お互い考えている事が偶然同じで、波長が合ったんだろうか……。
 結局、Dカップ美女である「FOXEY」の涼子りょうこちゃんには会えずじまいだった。

 旭、全然お礼になってないぞ?    

「やっぱり~、こうなると思ったんだよね。『手紙の人』律儀りちぎだからさ。はい、これ姿見ね」

 沙良は自分のした事を当然の結果だと思っているのか、大して感動する様子も見せずアイテムBOXから姿身を取り出して旭に姿を確認するようにうながす。

 自分の姿を鏡で確認した旭は、驚いて目を見開いている。

 そりゃビックリするだろう。
 俺も相当驚いている。

 沙良がテーブルの下に落ちていた封筒を取り上げた。
 見慣れた封筒だ。

 封筒には【召喚された方へ】と書かれている。

椎名 沙良しいな さら様から召喚された方へ
 すべての元凶は私です。
 この責任を取り、出来うる限りの保障をさせて頂きました。
 まず、いま貴方がいる世界は地球ではありません。
 剣と魔法のファンタジーである所の異世界です。
 椎名 沙良しいな さら様にあわせて、年齢は設定させて頂きました。
 また、貴方様の能力を変更致しました。
 なお、既に覚えた能力はそのままとさせて頂きます。
 
 旭 尚人あさひ なおと様の能力
【時空魔法】 
 ●アイテムBOX 容量無限・時間停止。
【光魔法】
 ●ヒール 怪我を治す事が出来ますが、病気を治す事は出来ません。
 ●ホーリー HPを回復します、アンデッド系を攻撃します。
 ●ライトボール 攻撃魔法・照明替わりにもなります。

 まずは「ステータス」と唱え、自分の能力を確認する事をお勧めします。
 最後に、このような不幸な目にわせてしまいましたが、これからの貴方の人生が幸多き事でありますようお祈り申し上げます。』

 おおっ、本当に沙良に召喚されたんだな!

 これでダンジョンマスターじゃなくなるから、ダンジョンから出る事も出来るだろう。

 俺は気掛かりだった事が解決して安心した。
 沙良に毎回ダンジョンの地下10階まで連れてきてもらうのは、少々面倒だと思っていたのだ。

「だって、手紙に『地球世界・・・・の人間・・・を、呼び出せる』って書いてあったじゃん! 取りえずステータス確認してみれば?」
 
「本当っ? ステータスっと」

 旭は驚愕きょうがくから立ち直ると、満面の笑みで自分のステータスを確認して報告してくれた。

【現在のステータス】
 旭 尚人あさひ なおと 20歳
 レベル 25
 HP 1,170
 MP 1,170
 魔法 時空魔法(アイテムBOX)
 魔法 光魔法(ヒールLv2・ホーリーLv10・ライトボールLv10)
 魔法 火魔法(ファイアーボールLv10・ファイアーアローLv10)
 魔法 水魔法(ウォーターボールLv10)
 魔法 土魔法(アースボールLv10)
 魔法 風魔法(ウィンドボールLv10)
 魔法 石化魔法(石化Lv10) 
 魔法 雷魔法(サンダーアローLv10) 
 魔法 闇魔法(ドレインLv0)

 ヒールレベルが上がらなかったのは、治療の必要がなかったからだろう。
 俺達も魔法で魔物を先制攻撃しているので、怪我を負う事はない。

 ドレインも同じ理由で使用した事がないんだろうな。
 そして魔法Lvは10がMAXらしい。

「そろそろ、いいかな? ドラゴンいないし自宅へ帰りたいんだけど」

 ダンジョンマスターではなくなって、感激している旭を他所よそに沙良が言った。

 お前は少しは旭の気持ちを気遣きづかえよ!
 俺達2人からの視線を受けても、沙良は平気らしい。

 まぁ旭もダンジョンから出られるようになったんだから、ここにずっといる必要もないだろう。

「じゃあ帰ろう!」
 
「了解!」

 沙良が設置したテーブルや椅子なんかを片付け始めた。
 部屋の周囲を見渡してから、旭に当分ここには来ないから忘れ物をしないように言っている。

 良かったな、旭。
 等身大人形を仕舞しまっておいて。

 あのままだったら、きっと沙良に見られてたぞ?

 生活感あふれる地下10階は、全ての物が収納されて何もない部屋になった。
 まさに、立つ鳥跡をにごさず。

 これからは、沙良のホーム内で日本と同様の生活を送ってくれ。

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