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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第129話 迷宮都市 奏屋に新しい果物の紹介

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 土曜日、朝8時。
 まだ兄達は戻ってこない。

 朝食にふわふわのホットケーキ(メレンゲを角が立つくらい泡立てると出来る)を作り上にバターを乗せ、たっぷりとメープルシロップをかけて食べる。
 一緒にアイスティーを飲んだら、喫茶店で食べるのと変わらないくらい美味しい!

 市販のホットケーキMIXは、誰でも簡単に作れるから大変便利だ。
 アレンジも色々可能だしね。
 ドーナツとかアメリカンドッグとか蒸しパンやクッキー等、子供の頃は母がよくドーナツを揚げてくれたなぁ……。 

 一応、兄達の分も作りアイテムBOXに収納し服を着替えて異世界へ。
 奏屋かなでやへ、地下11階の梨・地下13階のぶどう(ピオーネ・シャインマスカット)を卸しにいくのだ。

 さてさて、幾らになるのか今から楽しみ~。
 つい顔がほころんでしまう。
 イケない、こんな表情で町を歩いていたら不審人物に見えるよ。

 顔の表情を元に戻すと素知らぬ振りをして店内へ入った。
 いつもの店員さんが応接室まで案内をしてくれる。
 テーブルの上に用意された紅茶とクッキーを食べ、のんびり待つと店長さんが入ってきた。
 席を立って挨拶をする。

「こんにちは。いつもお世話になっています」

「こちらこそ大変お世話になっております。当店にダンジョン産の果物を毎週卸して下さり、ありがとうございます」

 お互い頭を下げ合い席に着いた。

「今日は、また新しい果物を持ってきました。味の確認をしてもらえますか?」

 マジックバッグから地下11階の梨と地下13階のぶどう(ピオーネ・シャインマスカット)2房を取り出し、そばに控えていた店員さんへ手渡す。

 店員さんは受け取った果物を店長さんへ見せると、何か指示を受け梨を手に部屋から出ていった。
 店長さんが梨を切るよう頼んだのだろう。
 ぶどう2房は陶器製の綺麗な皿に置かれている。

「どうぞ試食して下さい。紫色のぶどうの方は皮をいて食べる必要がありますが、緑色をしたぶどうは皮ごと食べても大丈夫です。味の好みはあると思いますが、貴重・・さは緑色をしたぶどうの方が高いと思います」

 明確な言葉は避けたけど、桃と同様に見付かりにくい事をやんわりと伝えておく。
 これで値段も上がるだろう!

「では失礼して頂きます」

 店長さんは、まず初めにピオーネの皮をいて食べ始めた。
 ああっ、しまった!
 甘みはピオーネの方が高いから、食べてもらう順番を指定するの忘れたよ。
 シャインマスカットの方が、あっさりしてるんだよね~。

 ピオーネを2・3粒食べた店長さんは、その味に感心しているようにみえる。
 次に私のアドバイス通り、皮をかずシャインマスカットを1粒口に入れた。
 
 皮ごと食べられるぶどうを、初めて食べたんだろう。
 少し驚いた表情をしている。
 店長さんがぶどうを食べ終わる頃、店員さんがカットされた梨が綺麗に盛られた皿を持ち入ってきた。

 テーブルの上に置かれると、店長さんは梨を1切れフォークで刺し食べる。
 続けてもう1つ食べた後、私の顔を見るとうなずいた。
 おおっ、これは好感触だ。
 高価買取が期待出来る。

「全て大変美味しゅう御座ございます。所で頂いた梨とぶどうは、どの階層で採れた物になりますでしょうか?」

「はい。梨は地下11階で、ぶどうは地下13階の物です」

「なるほど、よく分かりました。では梨1個で銀貨8枚、紫色のぶどう1房で銀貨10枚、緑色のぶどう1房で銀貨20枚。いかがでしょうか? 数は梨とぶどう2種類を各10個、卸して下さると助かります」

 予想通り高価買取きましたよ!
 シャインマスカットは、なんと1房銀貨20枚(20万円)の超高級フルーツになった。
 
 一体、誰がそんな値段を払って食べるんだろう?
 この世界にも、お金持ちは沢山いるんだろうなぁ。

「その価格で問題ありません」

 店員さんにマジックバッグを手渡され、りんご30個・みかん30個・桃10個・梨10個・ピオーネ10個・シャインマスカット10個を入れて返却する。

「代金をお支払いしますので、少々お待ち下さい」

 店員さんが部屋から出ていくと、私は前から確認したかった『お米』の件を店長さんに尋ねた。
 店内を探したけど見付からなかったんだよね。

「私が探している食材なんですけど『お米』を知っていますか?」
 
「『お米』で御座ございますか? 申し訳ありません。私は聞いた覚えのない食べ物のようです。それは一体どんな形の物でしょうか? 他領にっては名称等変わる事も御座ございます。詳しく教えて頂けませんか?」

 う~ん、なんて言ったら『お米』が伝わるのかなぁ。

「小麦みたいに実が生ります。粉を引きパンとして食べる物ではなく、もみ殻から外した状態の物を、水を入れてくんですけど……」

 私の説明で上手く表現出来ただろうか?

「私の勉強不足の所為せいか、やはりそのような食材は存じあげません。お客様の期待に応えられず非常に残念です。もし王都の本店に知っている人間がおりましたら、またお伝えさせて頂きます」

 残念、やはりこの世界に『お米』はないのか……。

「よろしくお願いします。それと今日は植物油を購入したいんですが、ありますか?」

 油は基本魔物から取れるラードに近い物を使用するのが普通だけど、私はダンジョンの食事改善の為にどうしても植物油が欲しい。

「それでしたら当店に御座ございます。直ぐに御用意致しますので、お待ち下さい」

 その時ちょうど店員さんが果物の代金を持ち部屋に入ってきた所だったので、店長さんは植物油を持ってくるよう指示を出した。
 私が金貨4枚・銀貨98枚を受け取ると、店員さんは直ぐに部屋から出て植物油を持ってきてくれる。

「こちらがオリーブ油で、お値段は1壺銀貨3枚(3万円)になります」

 私は渡された陶器壺のふたを取り確認した。
 新鮮なオリーブ油の匂いがするから酸化している様子はない。
 量は1ℓくらいだろうか?

 この世界にもオリーブの木があるんだなぁと妙な事に感心しながら1壺購入して、店員さんへ銀貨3枚を支払った。
 冒険者達に購入してもらった、焼肉のたれ(ぼったくり価格)と同じ値段とは……。

 この世界は機械化されていないため、手摘てづみでの収穫になるだろうしオリーブ油をしぼるのは大変な作業だろう。
 
 味に癖がないサラダ油なんか作れないだろうしね。
 オリーブ油はイタリアンを作る時以外使用しないから、いつも大抵賞味期限が切れちゃうんだよ。
 
「それでは失礼します」

「はい、本日も貴重きちょうな品をありがとうございます。今後ともご贔屓ひいきのほど、よろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 店長さんに、そう言われて席を離れる。
 応接室からうながされ、店を出る際また深々とお辞儀をされてしまった。

 もうなんと言うか、このやり取りが落ち着かない。
 私はしがない一般市民です。
 こんなに丁寧ていねいな扱いをされる人間ではございませんよ。

 でもまぁダンジョン産の果物が市場に出回る事はないだろうから、唯一の取引先を失いたくないのかも知れないね。

 露店の野菜屋さんに寄りキャベツとトマトを購入する。
 本当はレタスが欲しかったけど、ないのでキャベツを代わりにしよう。

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