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9. 神々しい制服姿
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マリーとジョゼフ王子がいる聖堂は、清らかな光に包まれていた。マリーはまぶしくて目をつぶる。光が収束すると、マリーはおそるおそる目を開けた。そこには信じられない光景が広がっていた。
白い羽が舞う中、一人の男子生徒が佇んでいた。彼の横顔は成長途中の美少年らしく、中性的な美しさがあった。あまりに神秘的な光景に、マリーは心の中でシャッターを押して、永遠に大事にしまっておきたいと思った。
男子生徒はマリーに気がつくと、にっこりとほほ笑みを浮べた。女の子みたいにきれいな顔つきなのに、背が高いのがアンバランスな魅力を引き出している。
「ユリーカ様!どうして制服を?」
マリーははっとして、ユリーカに駆け寄った。白い制服がユリーカの淡い髪色にマッチしていた。
「やあ、マリー。君が呼んでくれたからね。それで、どうしたの?」
「おい、こいつは誰だ?気に入らねえな」
王子は舌打ちをし、想像も付かない方法で乱入してきたユリーカを睨んだ。
「ユリーカ様もこれから学校に通うの?それなら、あたしたち明日からクラスメイトね!」
ユリーカとマリーはほほ笑み合っている。王子はたまらず、割って入る。
「おい!俺を無視するな。俺は王子だぞ。いけ好かないお前は誰だよ!?つーか、どうやって羽を散らしてんだ?」
「はあ。王子、ここは聖堂なんだから静かにしてくださいよ。彼はユリーカ様です」
「ユリーカだあ?そんな名前の貴族、聞いたことねえよ。馬鹿みてえな名前だな」
マリーは王子をきっと睨みつけると、ユリーカの手を取って、ステップでも踏むような足取りで王子の脇をすり抜けた。
「ユリーカ様、校舎を案内しますね」
「おい!俺は無視かよ?明日の昼、食堂に来いよ!」
「騒がしいお友達だね」
マリーはユリーカを連れて、教室まで歩いてきた。教室には二人だけ。窓から差込むのはやわらかい夕焼けだ。
「ごめんなさい、ユリーカ様。でもあの人はあたしの友達ではないです」
「ああ、彼にひどいことをされたの?だからぼくを呼んだのかな」
ユリーカは納得がいったというように、マリーの頭をなでた。
「来てくれてありがとうございます。あたし、毎日ユリーカ様にお祈りをしていました」
「うん、ありがとう。君が祈ってくれていることはわかっていたよ。あまりに一生懸命だから、こうして君のことを守りに来たんだ」
マリーは感動のあまり、ユリーカに自分自身が感じていることを素直に伝えた。
「あたしはあの日、決めました。ユリーカ様に助けてもらったときから、あなたがどこに行こうともついていくと。あたしをユリーカ様から遠ざける障害は一切ありません!
あたしは聖女になろうと思います。聖女を目指すのは、聖女が神様の妻になれるからだと聞いたからです。
もし聖女に選ばれたら、あたしはユリーカ様の奥さんになれるってことですよね?」
「それは形式的なものであって、文字通りに受け取られても――」
「だめなんですか?あたしはいいです。それが形だけだって気にしない。その事実が重要なんです」
ユリーカは困ったように笑う。マリーはここまで言ったから、引くに引けない状態に陥った。こうなれば、最後まで押し切るつもりだ。
「ユリーカ様、責任取ってください」
ユリーカは困惑した顔をマリーに向けた。マリーは一言で説明した。ほとんど言いがかりだ。
「あたしをあなたの世界につれてきた責任」
「こうやって助けに来たよ」
「それはかっこいいです」
「うん。ずっと見守っているよ」
「そうじゃないです。ユリーカ様、一人の男として責任を取ってください」
マリーはユリーカの目をじっと見つめた。透明で複雑な色合いの瞳が自分を見下ろしていることに、マリーは胸のときめきを感じる。
「ぼくは神様だからなあ」
「夫として責任を取ってください。絶対に聖女に選ばれますから。そのときは、約束してください」
「君を妻にした事実はないし、今までの聖女たちだって形式的なもので、ぼくは誰も妻にしたことはないからなあ。聖女になったとしても、君だけ特別扱いするものね」
マリーは瞳に涙を溜めて、今にも泣きそうだ。見事に玉砕して、泣かない女はいないだろう。
「あたしが本当の意味で、最初で最後のユリーカ様の妻になってみせます」
そう言うと、マリーはこれ以上の言及を避けた。引き際を感じて黙ったのだ。少しずつ、絆していけばいい。長期の聖戦になると、マリーは覚悟を決めた。
白い羽が舞う中、一人の男子生徒が佇んでいた。彼の横顔は成長途中の美少年らしく、中性的な美しさがあった。あまりに神秘的な光景に、マリーは心の中でシャッターを押して、永遠に大事にしまっておきたいと思った。
男子生徒はマリーに気がつくと、にっこりとほほ笑みを浮べた。女の子みたいにきれいな顔つきなのに、背が高いのがアンバランスな魅力を引き出している。
「ユリーカ様!どうして制服を?」
マリーははっとして、ユリーカに駆け寄った。白い制服がユリーカの淡い髪色にマッチしていた。
「やあ、マリー。君が呼んでくれたからね。それで、どうしたの?」
「おい、こいつは誰だ?気に入らねえな」
王子は舌打ちをし、想像も付かない方法で乱入してきたユリーカを睨んだ。
「ユリーカ様もこれから学校に通うの?それなら、あたしたち明日からクラスメイトね!」
ユリーカとマリーはほほ笑み合っている。王子はたまらず、割って入る。
「おい!俺を無視するな。俺は王子だぞ。いけ好かないお前は誰だよ!?つーか、どうやって羽を散らしてんだ?」
「はあ。王子、ここは聖堂なんだから静かにしてくださいよ。彼はユリーカ様です」
「ユリーカだあ?そんな名前の貴族、聞いたことねえよ。馬鹿みてえな名前だな」
マリーは王子をきっと睨みつけると、ユリーカの手を取って、ステップでも踏むような足取りで王子の脇をすり抜けた。
「ユリーカ様、校舎を案内しますね」
「おい!俺は無視かよ?明日の昼、食堂に来いよ!」
「騒がしいお友達だね」
マリーはユリーカを連れて、教室まで歩いてきた。教室には二人だけ。窓から差込むのはやわらかい夕焼けだ。
「ごめんなさい、ユリーカ様。でもあの人はあたしの友達ではないです」
「ああ、彼にひどいことをされたの?だからぼくを呼んだのかな」
ユリーカは納得がいったというように、マリーの頭をなでた。
「来てくれてありがとうございます。あたし、毎日ユリーカ様にお祈りをしていました」
「うん、ありがとう。君が祈ってくれていることはわかっていたよ。あまりに一生懸命だから、こうして君のことを守りに来たんだ」
マリーは感動のあまり、ユリーカに自分自身が感じていることを素直に伝えた。
「あたしはあの日、決めました。ユリーカ様に助けてもらったときから、あなたがどこに行こうともついていくと。あたしをユリーカ様から遠ざける障害は一切ありません!
あたしは聖女になろうと思います。聖女を目指すのは、聖女が神様の妻になれるからだと聞いたからです。
もし聖女に選ばれたら、あたしはユリーカ様の奥さんになれるってことですよね?」
「それは形式的なものであって、文字通りに受け取られても――」
「だめなんですか?あたしはいいです。それが形だけだって気にしない。その事実が重要なんです」
ユリーカは困ったように笑う。マリーはここまで言ったから、引くに引けない状態に陥った。こうなれば、最後まで押し切るつもりだ。
「ユリーカ様、責任取ってください」
ユリーカは困惑した顔をマリーに向けた。マリーは一言で説明した。ほとんど言いがかりだ。
「あたしをあなたの世界につれてきた責任」
「こうやって助けに来たよ」
「それはかっこいいです」
「うん。ずっと見守っているよ」
「そうじゃないです。ユリーカ様、一人の男として責任を取ってください」
マリーはユリーカの目をじっと見つめた。透明で複雑な色合いの瞳が自分を見下ろしていることに、マリーは胸のときめきを感じる。
「ぼくは神様だからなあ」
「夫として責任を取ってください。絶対に聖女に選ばれますから。そのときは、約束してください」
「君を妻にした事実はないし、今までの聖女たちだって形式的なもので、ぼくは誰も妻にしたことはないからなあ。聖女になったとしても、君だけ特別扱いするものね」
マリーは瞳に涙を溜めて、今にも泣きそうだ。見事に玉砕して、泣かない女はいないだろう。
「あたしが本当の意味で、最初で最後のユリーカ様の妻になってみせます」
そう言うと、マリーはこれ以上の言及を避けた。引き際を感じて黙ったのだ。少しずつ、絆していけばいい。長期の聖戦になると、マリーは覚悟を決めた。
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