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21. 10月26日 塔の下
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落下していくわたしの頭に浮かんだのは一つの顔だった。精悍な顔つきと、青くて力強い瞳。
「手を掴んで!」
緊迫した声がしたと同時に、わたしは手を掴まれた。目を開けると、ひどく真剣なヘンリーの顔があった。
すっかりパニックになっているわたしをヘンリーはしっかりと腕に抱き寄せ、《向かい風》のスペルを唱えた。
突如として風が発生し、地面から上空へ向かって通り過ぎていく。
《向かい風》のスペル!どうしてわたしは思いつかなかったのよ?
わたしはヘンリーの唱えた魔法によって、冷静さを取り戻しはじめた。
落下速度はかなり減速したものの、この速さではヘンリーもわたしも落ちるときに怪我をしそうだ。
間に合うかしら。わたしは覚悟を決め、長く複雑なスペルの詠唱をはじめた。
ヘンリーが何かを言いかけたが、聞こえなかったふりをする。
さあ、アリス・ホームズ。集中して取りかかるの。失敗は許さないわ。
わたしは自分自身に言い聞かせた。
スペルを一字一句正確に唱えきると、わたしの肘から下が緑に変化する。わたしは地面に向かって弓矢を引く仕草をする。
すると、真下から草が生え、どんどん成長していく。
まもなく、ヘンリーとわたしはぐんぐん伸びる草むらに突っ込んだ。
「きゃあ」
「うわっ」
わたしは瞑っていた目をおそるおそる開くと、一面の緑が視界に飛び込んできた。生まれたばかりの青い匂いが鼻腔を満たす。
わたしはゆっくりと起き上がった。
「いたっ」
「ごめんなさい。大丈夫?」
わたしはヘンリーを下敷きにしてしまっていたらしい。わたしは急いで立ち上がった。
「僕は大丈夫だ」
ヘンリーは体のあちこちを確かめると、起き上がって服に着いた葉っぱを払った。
わたしたちはあちこちに小さな切り傷を作ったものの、どこも怪我はないようだった。
即席でできた草むらを抜けて開けた場所に出ると、ヘンリーはヒューッと口笛を吹き、感心してみせた。
「それにしても、この状況でよくあの高度な魔法を発動できたね」
「わたしには木の神のご加護があるもの。それにあなたが《向かい風》のスペルを使ってくれたおかげで、どうにかなったわ」
わたしは膝が震えていたようだ。これ以上立っていられず、倒れる寸前にヘンリーがわたしを抱きとめた。
どのくらい経っただろう。何十分もそうしていたような気がするが、実際には数分のことだったのだろう。
足の震えが治まってきたので、わたしは身を離そうとした。
すると、ヘンリーが腕の力を弱めてこちらを見た。
「怪我はない?」
「ないわ。もう大丈夫みたい。ありがとう」
「アリーが無事でよかったよ。一体こんなところで何をしていたの?」
「わたしは乗馬の途中で塔の上に寄ったの。知らない人が現れて、それで驚いてしまって」
思い出したら、また怖くなってきた。たまらずヘンリーの胸に顔をうずめる。
「そいつに何かされたの?」
ヘンリーの声が鋭さを増し、緊張が走ったのがわかった。
わたしは首を横に振る。
「いいえ。わたしが塔の上で日記を書いていたら、男の人がふらりとやってきて、思いつめた顔をしてたの。
その人はわたしに気がつくと何か言いながらこちらに向かってきて、それで怖くて後ずさりをしたら、雨で下が濡れていて足が滑ったんだと思う」
「何もなくてよかった」
ヘンリーはつぶやくと、顔をしかめた。
「アリーは同伴者もなく、一人で来たの?」
「ペガサスに乗ってダウンタウンを駆けるのが好きなの。わたしは社交的なタイプではないから兄さんくらいしかお願いできる人がいないのよ。だけど兄さんは家業で忙しいし、そもそもわたしには専用のメイドがいないの。
社交界デビューしたばかりというわけでもないし、必ずしも付き添いが必要とは限らないわ。
それに、ここには何度も来ているの。
魔法が使えない人はそうそう登ってくる高さじゃないし、貴族はダウンタウンになんか来ないから」
まくしたてるわたしに向かって、ヘンリーはため息をついた。
「ここはアリーのお気に入りの場所だということはわかったよ。でも一人で出歩くことはやっぱりやめるべきだ。
僕が偶然居合わせたからよかったものの、今日よりもひどい目に遭う可能性だってあるんだ」
「ええ、そうね。ヘンリー、あなたの言うとおりだわ」
もう家に引きこもろう。わたしだってこんな目に遭うのはごめんだ。
「一人で出歩かないと約束してほしい。一緒に来てくれる人が見つからないときは、今度からは僕を頼って」
「え?」
わたしは素っ頓狂な声をあげた。
「時間は作れるから。帰還して最初のうちはやることも多いけどね。アリーを一人にしたくないよ」
「ヘンリー」
わたしはヘンリーの瞳を見つめた。
「助けてくれてありがとう。ヒーローみたいだったわ」
「アリーの信頼に応えられてよか――」
ヘンリーがひとつのセンテンスを言い終わらないうちに、男の悲鳴が頭上から聞こえた。
見上げると、男は足を踏み外したのか真っ逆さまに塔から落ちてくる。
ヘンリーは向かい風のスペルを唱えて男を減速させ、ついでに落下地点が緑の上になるように調整してやった。
男は「ぐえっ」と奇妙な声を発しながら、ゆっくりと地面にぶつかり、次第に人だかりが出来た。
ヘンリーは男を病院に連れて行ってあげるよう指示する。
ペガサスのクリシーがゆっくりと降りてきた。人見知りなので隠れていたらしい。
「ちょっと、今までどこに隠れてたの?」
わたしはクリシーを撫でてやる。
どうしてヘンリーはここにいるんだろう?わたしは突然沸いた疑問を口にした。
「ねえ、ヘンリー。なんでダウンタウンにいるの?今は宮殿で冒険談を説明してるはずでしょ?」
「昨日アリーと食事したとき、ペガサスでダウンタウンを駆けるのが好きだって言っていたのを思い出して、久しぶりに歩いてみたくなったんだ。そうしたら、この塔が目に留まってさ。ここからの景色は素晴らしいだろうなと思ったから《飛翔薬》をふりかけて登っていたんだ。
自分の目を疑ったよ。アリーが落ちてきたんだから」
わたしは恥ずかしさのあまりうつむいた。わたしって手のつけようがないじゃじゃ馬娘だ。
「さあ、家まで送るよ」
ヘンリーはわたしをクリシーに乗せると、思いついたように笑みを浮かべた。片方の口角が上がって、いかにもバッドボーイ風だ。
ヘンリーって、こんな顔もできるのね。
「なあに?わたしをどこかにさらおうとでもしてるの?悪だくみを思いついたって顔してるわよ」
「まさか違うよ。でも、そうだね。ちょっと寄り道していかない?」
ヘンリーはそう言って、わたしに笑いかけた。
それはつい頷いてしまうような反則級の笑顔だった。
「手を掴んで!」
緊迫した声がしたと同時に、わたしは手を掴まれた。目を開けると、ひどく真剣なヘンリーの顔があった。
すっかりパニックになっているわたしをヘンリーはしっかりと腕に抱き寄せ、《向かい風》のスペルを唱えた。
突如として風が発生し、地面から上空へ向かって通り過ぎていく。
《向かい風》のスペル!どうしてわたしは思いつかなかったのよ?
わたしはヘンリーの唱えた魔法によって、冷静さを取り戻しはじめた。
落下速度はかなり減速したものの、この速さではヘンリーもわたしも落ちるときに怪我をしそうだ。
間に合うかしら。わたしは覚悟を決め、長く複雑なスペルの詠唱をはじめた。
ヘンリーが何かを言いかけたが、聞こえなかったふりをする。
さあ、アリス・ホームズ。集中して取りかかるの。失敗は許さないわ。
わたしは自分自身に言い聞かせた。
スペルを一字一句正確に唱えきると、わたしの肘から下が緑に変化する。わたしは地面に向かって弓矢を引く仕草をする。
すると、真下から草が生え、どんどん成長していく。
まもなく、ヘンリーとわたしはぐんぐん伸びる草むらに突っ込んだ。
「きゃあ」
「うわっ」
わたしは瞑っていた目をおそるおそる開くと、一面の緑が視界に飛び込んできた。生まれたばかりの青い匂いが鼻腔を満たす。
わたしはゆっくりと起き上がった。
「いたっ」
「ごめんなさい。大丈夫?」
わたしはヘンリーを下敷きにしてしまっていたらしい。わたしは急いで立ち上がった。
「僕は大丈夫だ」
ヘンリーは体のあちこちを確かめると、起き上がって服に着いた葉っぱを払った。
わたしたちはあちこちに小さな切り傷を作ったものの、どこも怪我はないようだった。
即席でできた草むらを抜けて開けた場所に出ると、ヘンリーはヒューッと口笛を吹き、感心してみせた。
「それにしても、この状況でよくあの高度な魔法を発動できたね」
「わたしには木の神のご加護があるもの。それにあなたが《向かい風》のスペルを使ってくれたおかげで、どうにかなったわ」
わたしは膝が震えていたようだ。これ以上立っていられず、倒れる寸前にヘンリーがわたしを抱きとめた。
どのくらい経っただろう。何十分もそうしていたような気がするが、実際には数分のことだったのだろう。
足の震えが治まってきたので、わたしは身を離そうとした。
すると、ヘンリーが腕の力を弱めてこちらを見た。
「怪我はない?」
「ないわ。もう大丈夫みたい。ありがとう」
「アリーが無事でよかったよ。一体こんなところで何をしていたの?」
「わたしは乗馬の途中で塔の上に寄ったの。知らない人が現れて、それで驚いてしまって」
思い出したら、また怖くなってきた。たまらずヘンリーの胸に顔をうずめる。
「そいつに何かされたの?」
ヘンリーの声が鋭さを増し、緊張が走ったのがわかった。
わたしは首を横に振る。
「いいえ。わたしが塔の上で日記を書いていたら、男の人がふらりとやってきて、思いつめた顔をしてたの。
その人はわたしに気がつくと何か言いながらこちらに向かってきて、それで怖くて後ずさりをしたら、雨で下が濡れていて足が滑ったんだと思う」
「何もなくてよかった」
ヘンリーはつぶやくと、顔をしかめた。
「アリーは同伴者もなく、一人で来たの?」
「ペガサスに乗ってダウンタウンを駆けるのが好きなの。わたしは社交的なタイプではないから兄さんくらいしかお願いできる人がいないのよ。だけど兄さんは家業で忙しいし、そもそもわたしには専用のメイドがいないの。
社交界デビューしたばかりというわけでもないし、必ずしも付き添いが必要とは限らないわ。
それに、ここには何度も来ているの。
魔法が使えない人はそうそう登ってくる高さじゃないし、貴族はダウンタウンになんか来ないから」
まくしたてるわたしに向かって、ヘンリーはため息をついた。
「ここはアリーのお気に入りの場所だということはわかったよ。でも一人で出歩くことはやっぱりやめるべきだ。
僕が偶然居合わせたからよかったものの、今日よりもひどい目に遭う可能性だってあるんだ」
「ええ、そうね。ヘンリー、あなたの言うとおりだわ」
もう家に引きこもろう。わたしだってこんな目に遭うのはごめんだ。
「一人で出歩かないと約束してほしい。一緒に来てくれる人が見つからないときは、今度からは僕を頼って」
「え?」
わたしは素っ頓狂な声をあげた。
「時間は作れるから。帰還して最初のうちはやることも多いけどね。アリーを一人にしたくないよ」
「ヘンリー」
わたしはヘンリーの瞳を見つめた。
「助けてくれてありがとう。ヒーローみたいだったわ」
「アリーの信頼に応えられてよか――」
ヘンリーがひとつのセンテンスを言い終わらないうちに、男の悲鳴が頭上から聞こえた。
見上げると、男は足を踏み外したのか真っ逆さまに塔から落ちてくる。
ヘンリーは向かい風のスペルを唱えて男を減速させ、ついでに落下地点が緑の上になるように調整してやった。
男は「ぐえっ」と奇妙な声を発しながら、ゆっくりと地面にぶつかり、次第に人だかりが出来た。
ヘンリーは男を病院に連れて行ってあげるよう指示する。
ペガサスのクリシーがゆっくりと降りてきた。人見知りなので隠れていたらしい。
「ちょっと、今までどこに隠れてたの?」
わたしはクリシーを撫でてやる。
どうしてヘンリーはここにいるんだろう?わたしは突然沸いた疑問を口にした。
「ねえ、ヘンリー。なんでダウンタウンにいるの?今は宮殿で冒険談を説明してるはずでしょ?」
「昨日アリーと食事したとき、ペガサスでダウンタウンを駆けるのが好きだって言っていたのを思い出して、久しぶりに歩いてみたくなったんだ。そうしたら、この塔が目に留まってさ。ここからの景色は素晴らしいだろうなと思ったから《飛翔薬》をふりかけて登っていたんだ。
自分の目を疑ったよ。アリーが落ちてきたんだから」
わたしは恥ずかしさのあまりうつむいた。わたしって手のつけようがないじゃじゃ馬娘だ。
「さあ、家まで送るよ」
ヘンリーはわたしをクリシーに乗せると、思いついたように笑みを浮かべた。片方の口角が上がって、いかにもバッドボーイ風だ。
ヘンリーって、こんな顔もできるのね。
「なあに?わたしをどこかにさらおうとでもしてるの?悪だくみを思いついたって顔してるわよ」
「まさか違うよ。でも、そうだね。ちょっと寄り道していかない?」
ヘンリーはそう言って、わたしに笑いかけた。
それはつい頷いてしまうような反則級の笑顔だった。
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