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3幸せ、のはず

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 お子様ランチの皿。
 オープンカーみたいになっているやつ。
 あれを買った。
 藤堂くんは、子供みたいに目を輝かせて喜んだ。
 曰く、『ちっちゃい頃、ファミレスとかあんまり行ったことないから、夢だった』とのこと。

 お金持ちだと庶民的なファミレスには行かないのかな、と一瞬思ったのだけど、すぐにそうじゃないことに気づいた。

 薄々感じてはいたけれど、藤堂くんは、親との関わりが極端に少ない気がする。
 日常生活で家族の気配が全くないのも気になっていたし、幼少期の思い出の話になっても、どうにも空っぽに聞こえる。
 この空洞の正体が親の不在なのではないか。
 そしてこれこそが、彼の虚言癖の原因なのではないか。
 ……と、パトカーのお皿をうれしそうに愛でる横顔を見ながら思った。

 うれしそう、なのに、寂しそうなのは何でだろう――

 おれは大胆にも、隣駅に行かないかと誘った。
 浅草の隣、鶯谷うぐいすだには、東京屈指のラブホテル街である。
 まあきっと、藤堂くんはラブホテルなんて慣れてるだろうけど……と思ったが。

「すっごいドキドキした。止められたらどうしようって」

 カラフルに光るバスタブに浸りながら、藤堂くんは恥ずかしそうに笑った。

「おれのせい? 子供っぽいから?」

「いや、そうじゃないよ。変な話だけど……どうでもいい奴と入るんなら、止められたら逃げちゃえばいいわけで。でもふみは大事だから、絶対守りたいし。だから緊張した」

 守りたいなんて言われて、キュンとしてしまう。

「でも……エッチはやさしくできないからね、ごめんね」
「う、うん。いや、最近はなんかもうそういう感じで期待してるし」

 いじわるされたり、自分勝手に無理やりされると、興奮する。
 もしかしたら元々Mっ気があったのかもしれないけど、多分それだけじゃない。
 止められない衝動をぶつけられるごとに、ものすごく甘えられているような気がして、愛しくなる。

 ザパッと音を立てて、両腕を大きく広げた藤堂くんが、「ん」と言う。
 おれは何も言わずに背中を預けた。
 バックハグで抱きしめられたのでさらに密着すると、藤堂くんは既にゆるく勃起していた。

「ふみは優しい。何でも受け止めてくれて、甘えたくなる」
「甘えていいよ、だって、」

 恋人だもん。

 ……というそのひと言が照れ臭くて、おれは無意味に顔を洗った。
 藤堂くんはおれを抱きしめる力を強めて、体を引き寄せた。
 耳をむ仕草は明らかに性的なもので、それだけで興奮してしまう。

「……ぁ、とうど、く……ん、まだだめ」
「どうして? したくない?」
「はあっ、お風呂じゃやだ……」
「やだって言われるとしたくなっちゃう」

 コリコリと乳首を擦られて、身悶えてしまう。

「あンッ、や……、ぁ」
「気持ちいい?」
「んぅ、ん……、勃っちゃう、んん」
「可愛いね。ベッドでしよっか。立てる?」

 と言いながらも乳首を擦る手は止めてくれなくて、おれがびくびくと跳ねるたびに、お湯がザブンと波打つ。

「はぁっ、も、藤堂くん、いじわるしないで……」

 半泣きで振り返ると、藤堂くんは満足そうに目を細め、キスしてくれた。
 自ら舌を差し出してしまう。
 激しく絡め合いながら、お湯の中で藤堂くんの手を探り当てて、ぎゅっと繋いだ。

「いじわるしてごめんね。ちゃんとベッドでしよう?」

 くたっとした体を預ける。
 藤堂くんは、「可愛い」と耳元でつぶやいた。
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