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Day7 - やっぱり大好きだ

7-1

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[やったーーーーー討伐成功ーーー!!!]
[りくちゃんおめでとう!!!れ!れ!!!]
[やばい、めっちゃうれしいw このゲーム1ミリも知らないのにw]
[↑わかるwwww]

 祝福のコメントとジャラジャラと入るコインの音、ゲーム画面に大きく表示された『MISSION COMPLETED』の文字。
 僕は深く息を吸い込み、長い長い戦いを制した達成感を噛み締めた。

「理空、クリアおめでとう。よかったね」
「うん。水戸くんがきのうの配信時間を確保してくれたおかげだから。ありがとう」

 最終日、7日目のきょうは、ディスプレイに順位とポイントがリアルタイムで表示されている。
 20:00以降は再び非表示になり、投票は21:00で締切。そこで順位が確定。22:00に授賞式の運びだ。
 多分、のんきにゲームをやっているカップルは僕たちだけだと思うけれど、ずっと見守っていてくれた視聴者さんたちのためにも、最後までできてよかった。

 順位は現在、2位と1位をいったりきたり。
 1位は当然ハルトさんたちで、たまに何かのタイミングで抜かしても、3分もしないうちに元に戻る。
 多分、ハルトさんたちのファンが、僕たちが上がらないように待機しているのだろう。

「7日間、ありがとう。このコントローラー、使いやすかったな」

 なんとなくお礼を述べながら、コードをくるくると巻き、ゲーム機を元の位置にしまう。

 作戦でもなんでもなく、もう、R18モードを使うのはやめようということになった。
 チャットもずっと繋ぎっぱなしで、等身大の僕たちを見てもらって、デビューにふさわしいかを判断してもらいたい。
 そういう風にふたりで考えて決めた。

[他のカップル見てきたら、R18すぎて、もはや画面がついてるところが少ないw]
[朝から、エロ聴いて疲れたらりくちゃん見てまたエロ聴いてりくちゃん見てを繰り返してる……]
[わかるw たまにみとりく挟まないと心が汚れる感じさえあるわw]

 そう、初日からついていた謎の固定タグ『豆カップル』は、晴れて『みとりく』という新タグと併記されるようになった――豆カップルが消えたわけではない。

「さて、理空の配信も終わったので、ちょっとふたりでイチャイチャさせてください。チャットは繋げたままにしておきますので、たまに読みます」

[了解! うちらはうちらで盛り上がっとく!]
[思う存分、世のけがれを清めてくれwww]

 ごろんとベッドに転がると、水戸くんはゆるっと僕の背中に腕を回し、まぶたにキスしてきた。

「最後の外デート、どうする?」
「カフェで、水戸くんが好きな大きいパフェ食べるのは?」
「バドミントンして、理空のテニ騎士デビューのアピールにしてもいいけど」
「……カフェ」

 水戸くんはくすくす笑いながら、僕の耳のうしろあたりに唇を寄せてきた。
 くすぐったくて首をすくめると、さらに笑う。
 最初は、精巧な人形みたいな王子様だと思っていたけど、こうやってじゃれあっていると、子犬みたいで可愛い。

「タダで食べ放題なんて最後だしさ、ものすごく大きいの食べよう」
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