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最終章・MOMOEとの別れ
『禁断の書』最終章
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駐車場、ワゴン車の車内モニターにもゴースト参戦の兆候が現れ、ネットワークに霊エネルギーが溢れて機器がスパークし、長谷部と安川と角田が驚いて接続端子を抜いている。
「なんだ?電源が落ちたぞ」
洗脳者に襲われルーフの衛星アンテナが傾き、荷台の機器が破損した原因かと思われたが、鴉と蝙蝠が空を飛ぶのを見上げた洗脳者が一斉に体育館へ歩き始め異変を感じた。
「あれ、野上さんたちじゃないですか?」
「しかも、駅の方から若者が集まって来てます」
野上と深野と石塚が擦り傷と汚れた服で路地を走って来るのが見え、長谷部たちが駆け寄ると、スマホでマップを見る若者たちが通り過ぎて学園の方へ行く。
「野上さん。大丈夫ですか?」
「ああ、なんとか逃げて来た。それより、どうなってるんだ?」
「まさか、洗脳者が増えたの?」
深野も石塚も膝に手をついて嘆いたが、角田と安川がスマホで調べて笑顔で答えた。
「SNSで呼びかけてくれたようです」
「エディバーのサイトにも応援が多数ありますよ」
拡散されたツィート画面【人間も参戦しよう。至急、五条霧笛学園へ。】を全員に見せ、野上と長谷部が肩を叩き合い、安川と角田が深野と石塚に肩を貸して若者たちの後に続く。
(この時、全員が多元宇宙論を信じていた訳ではないが、人間とゴーストは見えない糸で繋がり、裏表の世界を共有して暗黒の支配を防ごうとした。)
体育館の屋根を通り抜けてゴーストの集団が会場に現れ、空中に浮かんで壇上の前に隊列を組んだが、ダーク司祭は特に気にする事なく連とMOMOEを魔眼で睨み、魔剣を一振りして近付いたゴーストを風圧で吹き飛ばす。
「無能なゴーストを集めて、勝てると思ったか?」
黒い蛾と魔文字がステージに黒い幕を張り、グラウンド側の扉から入った洗脳者が体育館に増え、壇上前に人垣を作ってゴーストと対峙した。
司祭は魔剣を床に突き立て、『禁断の書』を両手で掲げて連とMOMOEと四人のゴーストに表紙を見せ、開く素振りをして嘲笑う。
「ゴーストをブラックホールに吸い込むなんて人間より造作ない。手間が省けて、君たちに礼を言うべきかね?」
しかし連は体育館の隅に空中潜水艦が横付けし、魔文字を追い払ってドアを開け、生徒たちが外へ避難するのを見て微笑んだ。
「礼は後でいいです」
「それでは暗黒の物語を完結させるか」
「こっちはミレフレのエピローグを書き足す」
「そうだね。司少年の想い出とその後……」
MOMOEが連の肩からフクロウのペンを手に取り、空中にスラスラと絵を描き始めると、空中潜水艦のゴースト職人が異次元プリンターで立体化させて送信する。
「ふん、まだ感傷的なシーンで人間の心を呼び覚ませると思っているのか?私は魔王と対等な存在になり、君の心臓を握り潰してMOMOEが絶望するのを終幕とする」
ダーク司祭は書物を演台に置き、魔王の剣を床から抜いて構えたが、怨念に取り憑かれた司祭の読み違いであり、残虐な魔王の意識下にあればゴーストと人間が集合したパワーアップに気付いただろう。
MOMOEが描き、四人のゴーストが触れてリアル化した病院での過去のシーンは時間を超えて現実味を帯び、左眼の灰に埋もれた司少年を突き動かした。
揺れる左の眼窩の中で魔眼の炎で灰になった人間の眼の残り滓を脇によけ、リトル司が穴の隙間から少し顔を出して覗き、魔剣の向こうに鮮やかな色合いのスライドショーが上映されるのを鑑賞する。
その頃、司少年の目は微かに視力があり、病院で友だちになった百恵、和希、駿太、拓実、麻里子の顔も薄っすらと見えていた。
病室のベッドの上でみんなでカードゲームをしたり、真夜中の病院を冒険して遊び、治療の苦しみをひと時だけ忘却した。
司少年の眼の手術前の誕生日、星空の病院の屋上に集まって小さなケーキにロウソクの火を灯し、願いを込めて吹き消すと、目を閉じた司少年の頬に百恵がキスをしてくれた。
『僕はモモエに恋をして、もう二度と笑顔を見れない暗黒の世界で絶望した……』
しかし司祭は空中に描かれた絵を魔剣で切り裂き、四人のゴーストとMOMOEを蹴り飛ばすと、剣と盾で抵抗する連を左腕で捕まえて引き寄せ、心臓を握り潰そうとしたが……ふと左眼から溢れ出る涙に動きを止めた。
「なんだ?この感情は……」
連は胸ぐらを掴まれて宙吊りになり、司祭の顔を哀しそうに見上げて形勢が逆転した事を告げる。
「ゴーストと人間の力を見誤りました。それと人間の心は恋という熱量で変化する。It's Magic」
司祭は連を捕らえたまま振り返り、ゴーストが魔文字と黒い蛾のシールドを突き破り、人間が会場に紛れ込んで洗脳者を押し退け、霊的なパワーバランスが逆転したのを知った。
「レン、逃げろ」
梟が司祭の顔面に襲いかかり、連は腕から離れたが、司祭に代わって魔王の形相が出現するのを床に倒れ込んで見た。
「なんだ?電源が落ちたぞ」
洗脳者に襲われルーフの衛星アンテナが傾き、荷台の機器が破損した原因かと思われたが、鴉と蝙蝠が空を飛ぶのを見上げた洗脳者が一斉に体育館へ歩き始め異変を感じた。
「あれ、野上さんたちじゃないですか?」
「しかも、駅の方から若者が集まって来てます」
野上と深野と石塚が擦り傷と汚れた服で路地を走って来るのが見え、長谷部たちが駆け寄ると、スマホでマップを見る若者たちが通り過ぎて学園の方へ行く。
「野上さん。大丈夫ですか?」
「ああ、なんとか逃げて来た。それより、どうなってるんだ?」
「まさか、洗脳者が増えたの?」
深野も石塚も膝に手をついて嘆いたが、角田と安川がスマホで調べて笑顔で答えた。
「SNSで呼びかけてくれたようです」
「エディバーのサイトにも応援が多数ありますよ」
拡散されたツィート画面【人間も参戦しよう。至急、五条霧笛学園へ。】を全員に見せ、野上と長谷部が肩を叩き合い、安川と角田が深野と石塚に肩を貸して若者たちの後に続く。
(この時、全員が多元宇宙論を信じていた訳ではないが、人間とゴーストは見えない糸で繋がり、裏表の世界を共有して暗黒の支配を防ごうとした。)
体育館の屋根を通り抜けてゴーストの集団が会場に現れ、空中に浮かんで壇上の前に隊列を組んだが、ダーク司祭は特に気にする事なく連とMOMOEを魔眼で睨み、魔剣を一振りして近付いたゴーストを風圧で吹き飛ばす。
「無能なゴーストを集めて、勝てると思ったか?」
黒い蛾と魔文字がステージに黒い幕を張り、グラウンド側の扉から入った洗脳者が体育館に増え、壇上前に人垣を作ってゴーストと対峙した。
司祭は魔剣を床に突き立て、『禁断の書』を両手で掲げて連とMOMOEと四人のゴーストに表紙を見せ、開く素振りをして嘲笑う。
「ゴーストをブラックホールに吸い込むなんて人間より造作ない。手間が省けて、君たちに礼を言うべきかね?」
しかし連は体育館の隅に空中潜水艦が横付けし、魔文字を追い払ってドアを開け、生徒たちが外へ避難するのを見て微笑んだ。
「礼は後でいいです」
「それでは暗黒の物語を完結させるか」
「こっちはミレフレのエピローグを書き足す」
「そうだね。司少年の想い出とその後……」
MOMOEが連の肩からフクロウのペンを手に取り、空中にスラスラと絵を描き始めると、空中潜水艦のゴースト職人が異次元プリンターで立体化させて送信する。
「ふん、まだ感傷的なシーンで人間の心を呼び覚ませると思っているのか?私は魔王と対等な存在になり、君の心臓を握り潰してMOMOEが絶望するのを終幕とする」
ダーク司祭は書物を演台に置き、魔王の剣を床から抜いて構えたが、怨念に取り憑かれた司祭の読み違いであり、残虐な魔王の意識下にあればゴーストと人間が集合したパワーアップに気付いただろう。
MOMOEが描き、四人のゴーストが触れてリアル化した病院での過去のシーンは時間を超えて現実味を帯び、左眼の灰に埋もれた司少年を突き動かした。
揺れる左の眼窩の中で魔眼の炎で灰になった人間の眼の残り滓を脇によけ、リトル司が穴の隙間から少し顔を出して覗き、魔剣の向こうに鮮やかな色合いのスライドショーが上映されるのを鑑賞する。
その頃、司少年の目は微かに視力があり、病院で友だちになった百恵、和希、駿太、拓実、麻里子の顔も薄っすらと見えていた。
病室のベッドの上でみんなでカードゲームをしたり、真夜中の病院を冒険して遊び、治療の苦しみをひと時だけ忘却した。
司少年の眼の手術前の誕生日、星空の病院の屋上に集まって小さなケーキにロウソクの火を灯し、願いを込めて吹き消すと、目を閉じた司少年の頬に百恵がキスをしてくれた。
『僕はモモエに恋をして、もう二度と笑顔を見れない暗黒の世界で絶望した……』
しかし司祭は空中に描かれた絵を魔剣で切り裂き、四人のゴーストとMOMOEを蹴り飛ばすと、剣と盾で抵抗する連を左腕で捕まえて引き寄せ、心臓を握り潰そうとしたが……ふと左眼から溢れ出る涙に動きを止めた。
「なんだ?この感情は……」
連は胸ぐらを掴まれて宙吊りになり、司祭の顔を哀しそうに見上げて形勢が逆転した事を告げる。
「ゴーストと人間の力を見誤りました。それと人間の心は恋という熱量で変化する。It's Magic」
司祭は連を捕らえたまま振り返り、ゴーストが魔文字と黒い蛾のシールドを突き破り、人間が会場に紛れ込んで洗脳者を押し退け、霊的なパワーバランスが逆転したのを知った。
「レン、逃げろ」
梟が司祭の顔面に襲いかかり、連は腕から離れたが、司祭に代わって魔王の形相が出現するのを床に倒れ込んで見た。
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