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第五章・四大元素の鍵
中山教授の救出
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国立図書館の非常口の階段を駆け下りた戦士チームは駐車場に止めてあったワゴン車に乗り込み、料金所の出口の前で待っていたメッセンジャーを追いかけて通りを走り出す。
「速いわね。アレ、なんて乗り物?」
「ロードバイク。ペダルを漕いで走るんだよ」
チーネがフロントガラスに顔を近付けて軽快に走るメッセンジャーを眺め、ソングが隣で説明している。
「すばしっこい奴じゃ」
ハンドルを握るアリダリが渋滞する車をすり抜け、信号もギリギリで通り抜けて脇道へ入って行くメッセンジャーに苦戦を強いられている。
「見失いそうじゃわ」
「ソング、チーネ」
荷台からエリアンとトーマが武器を出してみんなに渡し、ワゴン車がカーブでガードレールに車体を擦って揺れて転びそうになった。
「僕はあの車の方がいいね」
ポルシェを見たジェンダ王子が窓を開けて白い歯を見せ、エリアンが襟首を掴んで盾と剣を持たせた。
「ジェンダ王子。観光気分はもう終わりだ」
「そうよ。それに車なんて毒を吐き出す乗り物に過ぎない。人間界は文明に毒されているわ」
チーネが甲虫の胸当てと肘当てを装着し、エリアンが戦闘服の金属の胸カップと鎖を付けて戦闘モードになり、ソングも剣を持ってみんなに呼びかけた。
「とにかく、教授を助けようぜ」
「そうだな。ソング」
「俺たちは戦いに来たんだ」
チーネもエリアンもソングに微笑みかけ、トーマがジェンダ王子の肩を叩いて励まし、恋のゲームを楽しむ王子が戦士として目覚める事に期待した。
アルダリはバックミラーでその光景を見て、戦士チームに纏まりが出たと微笑み、アクセルを踏んでロードバイクに迫り過ぎて慌ててスピードを緩める。
「友よ。もうすぐ助けに行くぞ」
その頃、中山教授は車に乗せられて二子玉川から千鳥運河の工場地帯に連れて行かれ、休業中の倉庫の二階の事務室に閉じ込められた。
「教授。質問に答えれば解放してやる。お前は人間界の危機を告発してるらしいな?」
椅子に座らされてロープで縛られ、ファラが鞭を持って質問している。
「どうせ、殺すくせに」
「まさか?私がそんな悪い人間に見える?美し過ぎて、トップモデルと間違われるのよ。ねっ、ウルガン」
ひび割れたガラス窓から、通りと運河を眺めていたウルガンは振り返って軽く頷いた。サングラスをして、人間の姿に戻り平常心を取り戻している。
「もちろんです」
中山教授は気のない返事だと思ったが、鼻までズレたメガネをファラに向けて別の指摘をした。
「どちらにせよ、人間には見えませんね」
「じゃー、なんだと思うのよ?」
ファラが鞭で頬を打ち、落ちた眼鏡を踏み潰して唇を突き出して至近距離で詰問する。
「お前が異界の戦士チームに会うつもりだったのは知っている。何を話すつもりだった?」
「貴女は美しくはない。土から生まれた醜い魔女だと教えるつもりでした」
その言動にウルガンが驚き、振り返ってファラが鞭で殴るのを止めた。『それはランス様と自分しか知らない秘密』この男は想像以上に情報を握っている。
「ふざけんな。殺すぞ」
「ファラさま。もう少し、聞き出した方がいい。こいつ、人間にしては魔術を心得る優秀な学者です」
「馬鹿で愚かな人間だ。私だけでなく、マンダー家の四姉妹を侮辱する言動は許せぬ」
ファラの瞳に怒りの炎が浮かび、手のひらの窪みから火を放出させ、中山教授は顔を背けたが後頭部の髪が焼け焦げて顔を顰めた。
『アルダリ、ヘルプだー』
その時刻、戦士チームはメッセンジャーの案内で二子玉川の自宅の前に到着したが、屋根が破壊されたのを見て、その惨状を追って車で公園付近まで行って付近を捜索した。
「足跡だ」
エリアンが身を屈めて芝生を踏み付けた足跡が公園の奥へ続いているのを発見し、アリダリが『help』の灰をポケットから出して空中に浮遊させる。
「こっちだ」
ひとひらの灰が風に揺られて宙を舞い、噴水の広場から銅像の背後をアリダリと戦士チームを案内した。
「ここで連れ去られたか?」
焦げ跡と血糊が銅像の台座に付着しているのをアルダリが見つけ、エリアンが指で血糊を救って匂いを嗅いでいる。
「中山教授の血か?他の足跡は二名……」
「人間じゃないね」
チーネも鼻に息を吸いこんで花冠の耳を開き、エリアンと一緒に銅像の周辺を調べてファラとウルガンの足跡と空気中の残像を発見した。
「ああ、狼族だ」
「よくわかるな?」
ソングが目と鼻を擦って感心し、ジェンダ王子とトーマも肩をすくめて苦笑いしている。
人間の視力と臭覚では感じ取れないが、妖精のチーネは自然の変化に鋭敏で、山猫族の血を引くエリアンは獣の匂いを嗅ぎ分けられる。
「追えるか?」とアリダリが聴くと、エリアンが三角の耳を立てて頷いて先を歩き出す。
そしてロードバイクに跨って眺めていたメッセンジャーが、図書館からずっと疑問に思っていた事を質問した。
「いったい、貴方達は何者なんですか?」
「最強の戦士チームだよ」
ソングがそう言うと、他の者も一斉に振り返ってメッセンジャーに満面の笑顔を見せた。
「心配するな。中山教授はわしらが助ける」
「速いわね。アレ、なんて乗り物?」
「ロードバイク。ペダルを漕いで走るんだよ」
チーネがフロントガラスに顔を近付けて軽快に走るメッセンジャーを眺め、ソングが隣で説明している。
「すばしっこい奴じゃ」
ハンドルを握るアリダリが渋滞する車をすり抜け、信号もギリギリで通り抜けて脇道へ入って行くメッセンジャーに苦戦を強いられている。
「見失いそうじゃわ」
「ソング、チーネ」
荷台からエリアンとトーマが武器を出してみんなに渡し、ワゴン車がカーブでガードレールに車体を擦って揺れて転びそうになった。
「僕はあの車の方がいいね」
ポルシェを見たジェンダ王子が窓を開けて白い歯を見せ、エリアンが襟首を掴んで盾と剣を持たせた。
「ジェンダ王子。観光気分はもう終わりだ」
「そうよ。それに車なんて毒を吐き出す乗り物に過ぎない。人間界は文明に毒されているわ」
チーネが甲虫の胸当てと肘当てを装着し、エリアンが戦闘服の金属の胸カップと鎖を付けて戦闘モードになり、ソングも剣を持ってみんなに呼びかけた。
「とにかく、教授を助けようぜ」
「そうだな。ソング」
「俺たちは戦いに来たんだ」
チーネもエリアンもソングに微笑みかけ、トーマがジェンダ王子の肩を叩いて励まし、恋のゲームを楽しむ王子が戦士として目覚める事に期待した。
アルダリはバックミラーでその光景を見て、戦士チームに纏まりが出たと微笑み、アクセルを踏んでロードバイクに迫り過ぎて慌ててスピードを緩める。
「友よ。もうすぐ助けに行くぞ」
その頃、中山教授は車に乗せられて二子玉川から千鳥運河の工場地帯に連れて行かれ、休業中の倉庫の二階の事務室に閉じ込められた。
「教授。質問に答えれば解放してやる。お前は人間界の危機を告発してるらしいな?」
椅子に座らされてロープで縛られ、ファラが鞭を持って質問している。
「どうせ、殺すくせに」
「まさか?私がそんな悪い人間に見える?美し過ぎて、トップモデルと間違われるのよ。ねっ、ウルガン」
ひび割れたガラス窓から、通りと運河を眺めていたウルガンは振り返って軽く頷いた。サングラスをして、人間の姿に戻り平常心を取り戻している。
「もちろんです」
中山教授は気のない返事だと思ったが、鼻までズレたメガネをファラに向けて別の指摘をした。
「どちらにせよ、人間には見えませんね」
「じゃー、なんだと思うのよ?」
ファラが鞭で頬を打ち、落ちた眼鏡を踏み潰して唇を突き出して至近距離で詰問する。
「お前が異界の戦士チームに会うつもりだったのは知っている。何を話すつもりだった?」
「貴女は美しくはない。土から生まれた醜い魔女だと教えるつもりでした」
その言動にウルガンが驚き、振り返ってファラが鞭で殴るのを止めた。『それはランス様と自分しか知らない秘密』この男は想像以上に情報を握っている。
「ふざけんな。殺すぞ」
「ファラさま。もう少し、聞き出した方がいい。こいつ、人間にしては魔術を心得る優秀な学者です」
「馬鹿で愚かな人間だ。私だけでなく、マンダー家の四姉妹を侮辱する言動は許せぬ」
ファラの瞳に怒りの炎が浮かび、手のひらの窪みから火を放出させ、中山教授は顔を背けたが後頭部の髪が焼け焦げて顔を顰めた。
『アルダリ、ヘルプだー』
その時刻、戦士チームはメッセンジャーの案内で二子玉川の自宅の前に到着したが、屋根が破壊されたのを見て、その惨状を追って車で公園付近まで行って付近を捜索した。
「足跡だ」
エリアンが身を屈めて芝生を踏み付けた足跡が公園の奥へ続いているのを発見し、アリダリが『help』の灰をポケットから出して空中に浮遊させる。
「こっちだ」
ひとひらの灰が風に揺られて宙を舞い、噴水の広場から銅像の背後をアリダリと戦士チームを案内した。
「ここで連れ去られたか?」
焦げ跡と血糊が銅像の台座に付着しているのをアルダリが見つけ、エリアンが指で血糊を救って匂いを嗅いでいる。
「中山教授の血か?他の足跡は二名……」
「人間じゃないね」
チーネも鼻に息を吸いこんで花冠の耳を開き、エリアンと一緒に銅像の周辺を調べてファラとウルガンの足跡と空気中の残像を発見した。
「ああ、狼族だ」
「よくわかるな?」
ソングが目と鼻を擦って感心し、ジェンダ王子とトーマも肩をすくめて苦笑いしている。
人間の視力と臭覚では感じ取れないが、妖精のチーネは自然の変化に鋭敏で、山猫族の血を引くエリアンは獣の匂いを嗅ぎ分けられる。
「追えるか?」とアリダリが聴くと、エリアンが三角の耳を立てて頷いて先を歩き出す。
そしてロードバイクに跨って眺めていたメッセンジャーが、図書館からずっと疑問に思っていた事を質問した。
「いったい、貴方達は何者なんですか?」
「最強の戦士チームだよ」
ソングがそう言うと、他の者も一斉に振り返ってメッセンジャーに満面の笑顔を見せた。
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