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第4章・ズンビの恐怖
ズンビの本能
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真紀子はスタイルを維持するために週二でジムに通い、ボクササイズのトレーニングではセンスがあるとコーチから絶賛され、YouTubeでは格闘チャンネルを登録して観戦していた。
個人的にはシュートボクシングの絶対女王・レーナとブルース・リーの大ファンで、ジークンドー(武術)と格闘技の知識も多少はあり、若かったらチャレンジしかったと悔み、夫と息子に笑われた。
そしてズンビの本能なのか、『バトル』というワードからその記憶だけが微かに脳アメーバの中に残り、裕子の娘『ノゾミ』の残像も加えられて、真紀子の心に戦う意義が微かに芽生えた。
『アイ……?』
真紀子は一階に降りてダイニングルームに佇み、家族団欒の風景を思い出した訳ではなかったが、家具やカーテンのインテリアのセンス、芳しい香りの心地よさを感じ、キッチン、寝室、パスルーム、トイレと一通り見学して行く。
森川家の一階から二階は吹抜けで天井が高く、中二階にスキップフロアがあり、窓は少なく壁は分厚い頑丈な作りの五角形の建物で、特徴的な屋根はチョコ型の凹凸で雨水が溝を流れ、室内の壁を這う配管で地下の実験室に貯蔵される。
「あれって、雨水のパイプだったのか?」
地下室から一階に上がった隼人が広いリビングを見回し、善三と直太に質問して一緒に壁際の階段を上がり、スキップフロアから天井と階下を眺めた。
善三と直太はカップ麺を食べ、隼人はおにぎりを一個食べて少し元気を取り戻し、二人がこれから何をするつもりなのか興味が湧いた。
善三に『お母さんは生きている可能性がある』と言われ、最初はモンスターに変貌したなら死んだ方がマシだと思ったが、醜くても母に変わりはないと思い直す。
「うん。地下の実験室までいってる。雨に含まれた微生物と水質を調べているんだ」
「全財産をこの家に注ぎ込んだからな。建物全体が研究施設であり、要塞とも言えなくもない」
善三は三十年前からこの日が来る事を予想して家を改造し、防備も考慮して頑丈な作りに仕上げた。スキップフロアでハンドルを回し、天井に取り付けてある円筒状の装置を移動させて鉄板の台座に直太と隼人を乗せた。
「お前のじいちゃん。スゲ~な」
「まーね。でも、宝くじが当たって資金ができたんだよ」
隼人は今まで変なじいさんだと思っていたが、地下室で直太から説明を聞いて、手のひらを返したようにこの危機を救えるのは善三しかいないと確信した。
個人的にはシュートボクシングの絶対女王・レーナとブルース・リーの大ファンで、ジークンドー(武術)と格闘技の知識も多少はあり、若かったらチャレンジしかったと悔み、夫と息子に笑われた。
そしてズンビの本能なのか、『バトル』というワードからその記憶だけが微かに脳アメーバの中に残り、裕子の娘『ノゾミ』の残像も加えられて、真紀子の心に戦う意義が微かに芽生えた。
『アイ……?』
真紀子は一階に降りてダイニングルームに佇み、家族団欒の風景を思い出した訳ではなかったが、家具やカーテンのインテリアのセンス、芳しい香りの心地よさを感じ、キッチン、寝室、パスルーム、トイレと一通り見学して行く。
森川家の一階から二階は吹抜けで天井が高く、中二階にスキップフロアがあり、窓は少なく壁は分厚い頑丈な作りの五角形の建物で、特徴的な屋根はチョコ型の凹凸で雨水が溝を流れ、室内の壁を這う配管で地下の実験室に貯蔵される。
「あれって、雨水のパイプだったのか?」
地下室から一階に上がった隼人が広いリビングを見回し、善三と直太に質問して一緒に壁際の階段を上がり、スキップフロアから天井と階下を眺めた。
善三と直太はカップ麺を食べ、隼人はおにぎりを一個食べて少し元気を取り戻し、二人がこれから何をするつもりなのか興味が湧いた。
善三に『お母さんは生きている可能性がある』と言われ、最初はモンスターに変貌したなら死んだ方がマシだと思ったが、醜くても母に変わりはないと思い直す。
「うん。地下の実験室までいってる。雨に含まれた微生物と水質を調べているんだ」
「全財産をこの家に注ぎ込んだからな。建物全体が研究施設であり、要塞とも言えなくもない」
善三は三十年前からこの日が来る事を予想して家を改造し、防備も考慮して頑丈な作りに仕上げた。スキップフロアでハンドルを回し、天井に取り付けてある円筒状の装置を移動させて鉄板の台座に直太と隼人を乗せた。
「お前のじいちゃん。スゲ~な」
「まーね。でも、宝くじが当たって資金ができたんだよ」
隼人は今まで変なじいさんだと思っていたが、地下室で直太から説明を聞いて、手のひらを返したようにこの危機を救えるのは善三しかいないと確信した。
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