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第4章・ズンビの恐怖
記憶の残像
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毒霧のような強酸性雨に濡れた郊外の住宅街に、空の穴から獣が嗚咽を漏らすような呻き声が響き渡り、雨音に合わせて悪魔が迫る恐怖のリズムが聴こえてくる。
闇に閉ざされた街の屋根の上に歪な体型をした獣の影が幾つかあり、真紀子は付近を眺め回して脳アメーバを吸い終えた頭部を投げ捨て、快感に震える胸を押さえた。
裕子の頭部は屋根から通りに転げ落ち、無残な姿で水溜りの上に立って晒されている。
『フン、気分が台無しだ』
真紀子は顔を顰めて鼻を鳴らし、離れてはいるが同類を警戒して、樋を伝って二階の窓に飛び付き、ガラス戸を開けて室内に入った。
『変な気分だな』
隣りの家に侵入した時に見た家族写真をふと思い出し、少女の顔が白いキャンバスに鉛筆で描かれ、名前が頭の中に浮かび上がる。
『ノ……ノゾミ?』
それは裕美子の記憶だったが、脳アメーバを吸収した時に真紀子の脳細胞に加えられ、自分が何者かという疑問にヒントを与えた。
『なんか、懐かしい香りがする』
窓側に勉強机があり、壁際にベッドが置かれ、本棚には問題集と小説もあるがコミックが大半を占め、白いシャツと学生服がハンガーで壁に掛かり、窓からは森川家の屋根が見える。
数十分前、隼人が窓辺に立って雨に濡れる通りを憂鬱そうに眺めていた部屋であったが、ズンビに変貌した真紀子は我が子の記憶さえ失っていた。
シャツを鷲掴みにして匂いを嗅ぎ、目を閉じて空白を埋めよとうするが、首を傾げてポイっと投げ捨て、窓ガラスに映った裸身が気になり、部屋を出て通路をゆっくりと歩き奥のウォークインクローゼットへ入った。
『なんかしっくりこない』
真紀子がモデル時代に溜め込んだ服や靴、アクセサリー、エルメス、プラダのバッグが棚に並び、レアなシューズもあるが息子が生まれてからは殆ど使ってない。
『コレだな』
真紀子は無造作に椅子の上に置いてあった赤いタンクトップとショートパンツを手に取って試着してみるが小さ過ぎてぶち切れる。
『なんだ。ダメか?』
仕方なくブルーのジャージの袖と丈を切ってスポーツブラ風にし、パープルの巻きスカートを腰に巻いてピンで留めた。
『まっ、コレでいいか?』
コンバースのシューズを履き、全身を鏡に映すと胸と尻の肉厚でコスチュームはピチピチだったが、唇を真っ赤なルージュで塗り潰し、ポニーテールの髪にヘアバンドを装着して戦いの準備は完了した。
闇に閉ざされた街の屋根の上に歪な体型をした獣の影が幾つかあり、真紀子は付近を眺め回して脳アメーバを吸い終えた頭部を投げ捨て、快感に震える胸を押さえた。
裕子の頭部は屋根から通りに転げ落ち、無残な姿で水溜りの上に立って晒されている。
『フン、気分が台無しだ』
真紀子は顔を顰めて鼻を鳴らし、離れてはいるが同類を警戒して、樋を伝って二階の窓に飛び付き、ガラス戸を開けて室内に入った。
『変な気分だな』
隣りの家に侵入した時に見た家族写真をふと思い出し、少女の顔が白いキャンバスに鉛筆で描かれ、名前が頭の中に浮かび上がる。
『ノ……ノゾミ?』
それは裕美子の記憶だったが、脳アメーバを吸収した時に真紀子の脳細胞に加えられ、自分が何者かという疑問にヒントを与えた。
『なんか、懐かしい香りがする』
窓側に勉強机があり、壁際にベッドが置かれ、本棚には問題集と小説もあるがコミックが大半を占め、白いシャツと学生服がハンガーで壁に掛かり、窓からは森川家の屋根が見える。
数十分前、隼人が窓辺に立って雨に濡れる通りを憂鬱そうに眺めていた部屋であったが、ズンビに変貌した真紀子は我が子の記憶さえ失っていた。
シャツを鷲掴みにして匂いを嗅ぎ、目を閉じて空白を埋めよとうするが、首を傾げてポイっと投げ捨て、窓ガラスに映った裸身が気になり、部屋を出て通路をゆっくりと歩き奥のウォークインクローゼットへ入った。
『なんかしっくりこない』
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『コレだな』
真紀子は無造作に椅子の上に置いてあった赤いタンクトップとショートパンツを手に取って試着してみるが小さ過ぎてぶち切れる。
『なんだ。ダメか?』
仕方なくブルーのジャージの袖と丈を切ってスポーツブラ風にし、パープルの巻きスカートを腰に巻いてピンで留めた。
『まっ、コレでいいか?』
コンバースのシューズを履き、全身を鏡に映すと胸と尻の肉厚でコスチュームはピチピチだったが、唇を真っ赤なルージュで塗り潰し、ポニーテールの髪にヘアバンドを装着して戦いの準備は完了した。
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