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第3章・ズンビの誕生
ズンビの生態
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半開きのドアから部屋を出て暗い通路を歩き、床に滴った血の跡を追って階段の手前で立ち止まって階下を見下ろすと、メスの人間が下から懐中電灯を照らした。
『お前の血か?』
目に殴られた痣があり、頬も腫れ唇が切れて濡れタオルで押さえている。その女性は中島裕美子。この家の奥さんであり、真紀子とはお隣さん同士で仲も良かったが、お互いその事には気付いてはない。
『ヒッ』と息を呑み、異様な肉付きの皮のずる剥けた生物を見上げ、タオルを落として後退りしたが、真紀子は階段からダイブして背を向けた裕子に伸し掛かり、首に噛み付いて押し倒した。
さっき夫に暴力を振るわれた時よりも恐怖を感じたが、一瞬にして首の肉をごっそりと噛み千切られて叫ぶ暇もなく意識が朦朧として失血死する。
真紀子は「ぺっ」と肉片を口から吐き出し、『生肉は食らうのではなく、体を補修する部品だ』と自問自答し、メスの人間の丸みを帯びた乳房を掴み剥ぎ取るが、品質に不満を感じて投げ捨てた。
『もう一匹獲物がいる……』
リビングの方を見て首と胸から血を流すメスの体を押しやり、スッと立ち上がってオスの人間と対峙した。
この家の主人・中島孝夫は柔道の元オリンピック代表選手で贅肉がついたとはいえ逞しい体付きで、iPhoneのライトで真紀子を照らしてゴルフクラブを持って構えた。
「妻を殺したな」
鮮血に塗れた唇で微真紀子が笑み、筋肉質の人間を足元から頭の天辺まで観察しながら血の付着した手を尻で拭い、『妻?』と床に倒れた肉の残骸を振り返る。
真紀子は言葉は聞き取れたが、明確な意味が分からず異文化の国へ迷い込んだ気分だった。しかも喉が焼け付き、唸り声で片言しか話せない。
数十分前、孝夫は二階の子供部屋へ逃げ込んだ裕子を追いかけ殺意さえ抱いて殴ったが、侵入者に妻を殺されて暴力的な本性が滲み出た。
「バケモノめ。オレの玩具を壊しやがって」
実は真紀子は裕子から夫のDVに悩んでいると相談された事がある。娘の望美を守る為にも離婚を考えているが、恐怖で切り出せないと打ち明けられた。
数十分前の裕子の怪我は夫に離婚を切り出したからである。
「オモ…チャ?」
「喋れるのか?しかし、口もきけなくしてやるぜ。愛する妻を俺より先に殺しやがって」
孝夫が凄んでゴルフクラブを振り上げて距離を詰め、真紀子の頭部に振り下ろしたが、真紀子は特に慌てる事なく左手を上げて受け止め孝夫の顎を右手で掴んで引き寄せた。
「ニク……」
真紀子にとってピークを過ぎた柔道の元代表選手など、飼い慣らされたペットでしかない。躊躇なく攻撃を制し、角度を変えてツラを眺め、肩と胸を揉んで上質の肉の感触を確かめる。
孝夫は顎を掴む握力に身動きができず、間近で見たズンビの顔に怯んだが、指の力が緩んだ瞬間に右腕を引き込み、腰に乗せて豪快に投げ落とした。
ズダッという音に手答えを感じたが、真紀子は下半身を跳ね上げて孝夫の首に足を巻き付けて締めあげる。
頚動脈が圧迫され、絞め落とされる数秒間に不祥事でオリンピックの代表から降ろされ、世間からパッシングを受けた事を想い出した。
『金メダル確実と言われた男が、暴力で家族も壊して不幸にした。すまない、全部俺が悪かった……』
死んだ妻に罪を懺悔し、人生を後悔したが既に遅く、グギッと首の骨が折れ絶命した。
柔道元代表選手とはいえズンビと人間のスピードには差があり、脳アメーバの分泌物で鋼の筋肉が根付いている。
『死んだ?……呆気ないね』
真紀子は足の力を緩めて挟み込んだ頭部を押しやり、仰向けに倒れた人間の肉塊を剥ぎ取り、大胸筋と上腕と太腿と臀部の肉を自分の体にくっ付けて強化した。
『これでパワーもアップする』
その時、メスの死体がピクピクと動き出したのに気付き、完全に付着してない肉を押さえ、首と胸の裂傷から血を流すズンビへ近寄る。
裕子は真紀子に首を噛まれてミズウイルスに感染し、脳がアメーバ状になって活性化して蘇り、濃厚なエナジーが全身の血脈に流れ、皮膚が腫れて剥がれる症状が発生した。
『お前の血か?』
目に殴られた痣があり、頬も腫れ唇が切れて濡れタオルで押さえている。その女性は中島裕美子。この家の奥さんであり、真紀子とはお隣さん同士で仲も良かったが、お互いその事には気付いてはない。
『ヒッ』と息を呑み、異様な肉付きの皮のずる剥けた生物を見上げ、タオルを落として後退りしたが、真紀子は階段からダイブして背を向けた裕子に伸し掛かり、首に噛み付いて押し倒した。
さっき夫に暴力を振るわれた時よりも恐怖を感じたが、一瞬にして首の肉をごっそりと噛み千切られて叫ぶ暇もなく意識が朦朧として失血死する。
真紀子は「ぺっ」と肉片を口から吐き出し、『生肉は食らうのではなく、体を補修する部品だ』と自問自答し、メスの人間の丸みを帯びた乳房を掴み剥ぎ取るが、品質に不満を感じて投げ捨てた。
『もう一匹獲物がいる……』
リビングの方を見て首と胸から血を流すメスの体を押しやり、スッと立ち上がってオスの人間と対峙した。
この家の主人・中島孝夫は柔道の元オリンピック代表選手で贅肉がついたとはいえ逞しい体付きで、iPhoneのライトで真紀子を照らしてゴルフクラブを持って構えた。
「妻を殺したな」
鮮血に塗れた唇で微真紀子が笑み、筋肉質の人間を足元から頭の天辺まで観察しながら血の付着した手を尻で拭い、『妻?』と床に倒れた肉の残骸を振り返る。
真紀子は言葉は聞き取れたが、明確な意味が分からず異文化の国へ迷い込んだ気分だった。しかも喉が焼け付き、唸り声で片言しか話せない。
数十分前、孝夫は二階の子供部屋へ逃げ込んだ裕子を追いかけ殺意さえ抱いて殴ったが、侵入者に妻を殺されて暴力的な本性が滲み出た。
「バケモノめ。オレの玩具を壊しやがって」
実は真紀子は裕子から夫のDVに悩んでいると相談された事がある。娘の望美を守る為にも離婚を考えているが、恐怖で切り出せないと打ち明けられた。
数十分前の裕子の怪我は夫に離婚を切り出したからである。
「オモ…チャ?」
「喋れるのか?しかし、口もきけなくしてやるぜ。愛する妻を俺より先に殺しやがって」
孝夫が凄んでゴルフクラブを振り上げて距離を詰め、真紀子の頭部に振り下ろしたが、真紀子は特に慌てる事なく左手を上げて受け止め孝夫の顎を右手で掴んで引き寄せた。
「ニク……」
真紀子にとってピークを過ぎた柔道の元代表選手など、飼い慣らされたペットでしかない。躊躇なく攻撃を制し、角度を変えてツラを眺め、肩と胸を揉んで上質の肉の感触を確かめる。
孝夫は顎を掴む握力に身動きができず、間近で見たズンビの顔に怯んだが、指の力が緩んだ瞬間に右腕を引き込み、腰に乗せて豪快に投げ落とした。
ズダッという音に手答えを感じたが、真紀子は下半身を跳ね上げて孝夫の首に足を巻き付けて締めあげる。
頚動脈が圧迫され、絞め落とされる数秒間に不祥事でオリンピックの代表から降ろされ、世間からパッシングを受けた事を想い出した。
『金メダル確実と言われた男が、暴力で家族も壊して不幸にした。すまない、全部俺が悪かった……』
死んだ妻に罪を懺悔し、人生を後悔したが既に遅く、グギッと首の骨が折れ絶命した。
柔道元代表選手とはいえズンビと人間のスピードには差があり、脳アメーバの分泌物で鋼の筋肉が根付いている。
『死んだ?……呆気ないね』
真紀子は足の力を緩めて挟み込んだ頭部を押しやり、仰向けに倒れた人間の肉塊を剥ぎ取り、大胸筋と上腕と太腿と臀部の肉を自分の体にくっ付けて強化した。
『これでパワーもアップする』
その時、メスの死体がピクピクと動き出したのに気付き、完全に付着してない肉を押さえ、首と胸の裂傷から血を流すズンビへ近寄る。
裕子は真紀子に首を噛まれてミズウイルスに感染し、脳がアメーバ状になって活性化して蘇り、濃厚なエナジーが全身の血脈に流れ、皮膚が腫れて剥がれる症状が発生した。
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