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第2章・ミズウイルスの脅威
人類絶滅の兆候
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『蝋燭のロウは溶けて流れ落ち、ドロっとした液体に歪な塊が小皿に傾いて浮かび、芯の炎が揺れて消えそう……』
直太のイメージ映像であるが、人間の肉体がロウのように崩れるタイムリミットを感じて善三に説明を促したが、善三は激辛ラーメンをチョイスしてお湯を注ぎ、三分で説明を終わらせるつもりで腕時計を見た。
「まっ、三分もあれば終わる」
しかし赤い唐辛子の粉がお湯に広がるのを隼人が見て気持ち悪くなり、吐き気を催して流し台へ走る。
母の皮膚と肉が腐って真っ赤な蝋燭のように溶けて崩れるのが目に浮かび、バスルームでシャワー浴びていた者が母なのかと思い始める。
「おじいちゃん」と直太は無神経な善三を怒り、濃厚な匂いに鼻を摘んでテーブルの激辛ラーメンのカップを見えない位置に下げた。
「アレは……母だったのか?皮膚が剥がれて、肉がこぼれ落ちそうだったんだぞ」
隼人は胃に吐く物がなく、シンクを胃液で汚して蛇口を捻って流し、直太が差し出した手拭いで口を拭き、肩を落として椅子に座り直す。
「申し訳ない。それでは本題に入るが、わしは恐竜の絶滅は強酸性雨が原因だと考えた。その雨を生み出した原因は宇宙のウイルス性微生物であり、微生物の分泌が硫酸化合物を生み出し、皮膚を溶かすとウイルスが血流に侵入する」
善三はミネラルウォータで喉を潤し、唇から垂れた水の雫を手の甲で拭って神妙な面持ちで話を続けた。
「約6600万年前、地球に火球が落下して大気を汚染し、強酸性雨が降り続いて他の微生物が死滅して食物連鎖が崩れたが、恐竜を絶滅させた主な原因はウイルス性微生物の感染である」
何度か学会で仮説を論じ、研究論文と本も出版したがファンタジーに影響されたホラー作家だと善三は狂人扱いされた。
しかし今年の5月初旬に関東圏の上空に火球が光って未確認飛行物体だと世間を驚かせ、それから連日のように酸性雨が降り続き、高層ビル群やスカイタワーからも雨空に光る火球が発見されている。
「その兆候が始まり、昨夜の強酸性雨からミズウイルスが発生した。中国の大気汚染が酸性雨の原因だと気象学者が言っているが、実際は火球が空気中で発光して蒸発し、ウイルス性微生物の雨が降っているからだ」
「ミズウイルス?」
隼人は古い映画で観た強酸性の体液を持つ『エイリアン』を想像した。緑色の血は宇宙船の床を溶かし、強靭な身体組織と優れた運動能力を持つ最強の生物で宇宙空間でも生存可能だ。
「僕とおじいちゃんはミズウイルスと呼んでいるんだ。雨に濡れて感染すると、変化する肉体が水分を必要として水を好むみたいなの」
「母もミズウイルスであんな姿に……」
隼人は水を好むと言われ、感染した母がシャワーを浴びてバスタブの水に浸かった理由を納得した。
「それで母は死んだのか教えてくれ?」
直太が善三に顔を寄せ、耳元で隼人の母親がバスルームでシャワーを浴び、スプレーガンで消毒液を吹きかけると水の溜まったバスタブに倒れ込んだ事を小声で教えた。
「成る程。正直なところマウスで実験をしただけなので確約はできないが、隼人くんのお母さんは生きている可能性がある」
善三はそれだけ言って、麺が伸びるのを言い訳にして激辛カップ麺を持って端っこの席に移動し、「後は直太に聴きなさい」と言って背を向けて食べ始めた。
直太は隼人を連れて研究室の方へ行き、水槽の脳アメーバーに近寄ると、濁った液状の塊がこっちに泳いでアクリル板に張り付いて威嚇した。
「ネズミの動画を見たでしょ?感染して生き延びるかは本能的な知恵で環境に適し、肉体を改造できるかが鍵になるんだよ。今はそうとしか言いようがない」
隼人は漠然としか理解できなかったが、これから実際の体験を経て、母が人間という生物を超越して、最強の生物に変貌してゆくのを目の当たりにするのであった。
直太のイメージ映像であるが、人間の肉体がロウのように崩れるタイムリミットを感じて善三に説明を促したが、善三は激辛ラーメンをチョイスしてお湯を注ぎ、三分で説明を終わらせるつもりで腕時計を見た。
「まっ、三分もあれば終わる」
しかし赤い唐辛子の粉がお湯に広がるのを隼人が見て気持ち悪くなり、吐き気を催して流し台へ走る。
母の皮膚と肉が腐って真っ赤な蝋燭のように溶けて崩れるのが目に浮かび、バスルームでシャワー浴びていた者が母なのかと思い始める。
「おじいちゃん」と直太は無神経な善三を怒り、濃厚な匂いに鼻を摘んでテーブルの激辛ラーメンのカップを見えない位置に下げた。
「アレは……母だったのか?皮膚が剥がれて、肉がこぼれ落ちそうだったんだぞ」
隼人は胃に吐く物がなく、シンクを胃液で汚して蛇口を捻って流し、直太が差し出した手拭いで口を拭き、肩を落として椅子に座り直す。
「申し訳ない。それでは本題に入るが、わしは恐竜の絶滅は強酸性雨が原因だと考えた。その雨を生み出した原因は宇宙のウイルス性微生物であり、微生物の分泌が硫酸化合物を生み出し、皮膚を溶かすとウイルスが血流に侵入する」
善三はミネラルウォータで喉を潤し、唇から垂れた水の雫を手の甲で拭って神妙な面持ちで話を続けた。
「約6600万年前、地球に火球が落下して大気を汚染し、強酸性雨が降り続いて他の微生物が死滅して食物連鎖が崩れたが、恐竜を絶滅させた主な原因はウイルス性微生物の感染である」
何度か学会で仮説を論じ、研究論文と本も出版したがファンタジーに影響されたホラー作家だと善三は狂人扱いされた。
しかし今年の5月初旬に関東圏の上空に火球が光って未確認飛行物体だと世間を驚かせ、それから連日のように酸性雨が降り続き、高層ビル群やスカイタワーからも雨空に光る火球が発見されている。
「その兆候が始まり、昨夜の強酸性雨からミズウイルスが発生した。中国の大気汚染が酸性雨の原因だと気象学者が言っているが、実際は火球が空気中で発光して蒸発し、ウイルス性微生物の雨が降っているからだ」
「ミズウイルス?」
隼人は古い映画で観た強酸性の体液を持つ『エイリアン』を想像した。緑色の血は宇宙船の床を溶かし、強靭な身体組織と優れた運動能力を持つ最強の生物で宇宙空間でも生存可能だ。
「僕とおじいちゃんはミズウイルスと呼んでいるんだ。雨に濡れて感染すると、変化する肉体が水分を必要として水を好むみたいなの」
「母もミズウイルスであんな姿に……」
隼人は水を好むと言われ、感染した母がシャワーを浴びてバスタブの水に浸かった理由を納得した。
「それで母は死んだのか教えてくれ?」
直太が善三に顔を寄せ、耳元で隼人の母親がバスルームでシャワーを浴び、スプレーガンで消毒液を吹きかけると水の溜まったバスタブに倒れ込んだ事を小声で教えた。
「成る程。正直なところマウスで実験をしただけなので確約はできないが、隼人くんのお母さんは生きている可能性がある」
善三はそれだけ言って、麺が伸びるのを言い訳にして激辛カップ麺を持って端っこの席に移動し、「後は直太に聴きなさい」と言って背を向けて食べ始めた。
直太は隼人を連れて研究室の方へ行き、水槽の脳アメーバーに近寄ると、濁った液状の塊がこっちに泳いでアクリル板に張り付いて威嚇した。
「ネズミの動画を見たでしょ?感染して生き延びるかは本能的な知恵で環境に適し、肉体を改造できるかが鍵になるんだよ。今はそうとしか言いようがない」
隼人は漠然としか理解できなかったが、これから実際の体験を経て、母が人間という生物を超越して、最強の生物に変貌してゆくのを目の当たりにするのであった。
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