ZUNBE

田丸哲二

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第2章・ミズウイルスの脅威

母への想い

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 直太と隼人は防護服を脱いで一緒に善三の後から地下室に降りた。暗い場所から移動したせいか、室内は眩しいくらいに明るく感じ、隼人が目を細めて見回す。

 コンクリート打ちっぱなしのワンフロアだが、奥のスペースに研究器材が並び、逆側にキッチンと寝床のスペースと食料貯蔵庫があり、数ヶ月は地下室での生活が可能だ。

「ネズミの動画って、ここで撮ったのか?」

「うん。それがネズミの脳アメーバー」

 実験用ケースにはもうあのネズミの残骸は無かったが、ガラスの水槽の液体の中に脳アメーバーの一部がクラゲのように浮かんでいる。

「脳アメーバー?」

「うん。まだ動いてるでしょ」

「まっ、夕食にしよう。食材は豊富だが、忙しかったのでインスタントでいいかね?」

 善三がテーブルの上に何個かカップ麺を出して並べ、コンビニのおにぎりとペットボトルのお茶を用意し、直太と隼人を席に座らせた。

 善三と直太は昨夜から研究に没頭し、食事を作る暇もなく今この時の緊急事態に備え、これから更に忙しくなると想定している。

「いや、俺、食欲なくて」と、隼人はテーブルに着いたものの、項垂れてペットボトルだけ手にして一気にゴクゴクと渇いた喉に流し込む。

「母はどうなったんだ?」

 隼人は洗面所の前に倒れた母と、バスルームの浴槽に沈み込んだ肉塊の崩れた化け物を同一視する事ができず、ペットボトルを震わせてブツブツと呟く。

「まさか、家に隠れているのか……」

「隼人くん。食べないと家族を守れない。君には直太を守ってもらわんと困る。わしも友人として期待しとるからな」

 善三が三人分のカップにお湯を注ぎ、隼人と直太の前に差し出し、神妙な顔付きで話し始めた。

「俺、直太を裏切ったけど。これからは絶対に友だちとして直太を守るつもりです。おじさんの事も変な人だと思ってだけど、偏見だった。ごめんなさい」

「ありがとう。やはり隼人くんは頼もしいね。直太が幼い頃に飛行機事後で両親を亡くしたのを君も知ってるだろ?あの頃、ずっと泣いてたが、この研究を手伝い始めてから元気になったんだ」

「おじいちゃん。僕の話しはいいから」

 直太は善三に育てられたと言っても過言ではないが、今は自分の事よりも隼人に早く立ち直って欲しかった。過酷であるが、生き残るには苦難を乗り越えて立ち向かうしかない。

「そうだな。今から話す事を心して聞いてくれ……」
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