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第七現象・本条家への告発

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「不吉な痣を持つ子が産まれ、本条家を滅ぼす。そんな霊媒師の予言が過去にあり、父道成はそれを信じた。そして木月家の赤子に不吉な痣があると知って、殺そうとしたのです」

「そんな理由で生き埋めにしたのか?」

 圭介が辻也を睨み、怒りの衝動に駆られた。一瞬、キズオの呪いを肯定しそうになり、血の怨恨に心を毒されそうになる。

「でも、なんで生きてるのよ?」

 京子がそう呟き、圭介の頬が引き攣っているのを安堂刑事が心配して紅茶を進め、自分も怒りを落ち着かせようとダージリンティーの香りを口に含んだ。

「晩年、父はブランデーをそちらのカウンター席で飲み、酔いが回ると、木月家の赤子を埋めたがまだ安心できないとぼやいてました。そんな父が嫌で僕は家を出たのです」

「ふん、あなたは尻尾を巻いてこの家から逃げ出したのよ」

 そう憤る京子の左腕を圭介が掴まえて裾を捲り、三浦鈴子と同じ四角い傷線が皮膚に浮き出ているのを確認した。

「霊媒師の予言通り、本条家は不吉な痣の子に滅ぼされるようだ?」

 京子はそれには答えずに圭介の腕を振り払い、裾を直して刻まれた血文字の痣を隠す。

「誰が助けたんだろう?」

 静観していた孝則がそう呟き、圭介は自分が生き埋めにされ、母が指の爪を剥がしながら雨に濡れた泥を掘り起こし、ぽっかりと空いた隙間に母の形相が見えたシーンを蘇らせた。

「本条、いや本田順子ってのは何者だ?」

 圭介は丸い夜空に浮かんだ母のシルエットが、一瞬、順子の笑みに変貌する妄想を見たのだ。

 その頃、順子は家の周辺を警察が見張っている事を知り、家にこもって時々二階の窓から顔を出して外を眺めた。

「もうすぐ、真の本条家の人間になるわ」

 そう呟いて一階に降りると、狭い和室に入って仏壇に線香をあげ、妾のまま亡くなった母の写真を拝んで報告する。

「本条順子が呪術師キズオと町を支配するの。私たちで王国だって作れるかもよ。だって、キズオは誰でも呪い殺せるんだもん」

 独り言のように呟き、妖艶に微笑んで夢想した。

 順子は黒髪に白い肌のほっそりとした美人で、少女の頃から妖しい色気があり、母親に飽きた道成は順子を可愛がるようになった。

「あいつは私を人の形をした玩具だと思っていたわ。まっ、こっちも利用させてもらったけどね」

 寝室で悪戯された時、赤子が生き埋めにされると知り、木月家の親を尾行して裏山に埋められた赤子を助けて、暫く家で匿ったのである。

 木月家は過去に本条家に仕えた霊媒師の家系で、町を支配する道成の命令に逆らう事ができず、家族会議で赤子を埋める事にしたが、順子が助けて秘密裏に育てるように説得した。

「キズオを助けたのは私とお母さんだもん。あの時から、こうなると思ってたよ」

 数男がキズオになり、生き埋めにした家族をも恨み、血の呪いと共に成長したのは順子の愛情の賜物だった。

 順子の母親は癌で痩せ細って死んでしまったが、その子は愛人として道成に可愛がられ、本条家の連絡係として重要な役割を得ていた。
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