36 / 43
探偵の相棒ノゾミン
しおりを挟む
その日の午後、広瀬望美は鎌倉市役所の仕事中に上司に呼ばれて、突然特別休暇を与えると告げられ、何かしでかしたかと思いを巡らせた。
『ハゲ課長と陰で言ってるのが、バレたのか?』
「あのー、嬉しいのですが、どういう事でしょうか?最近、休暇の申請して断られたばかりですよ」
「風が吹いたんだよ」
警察の捜査に協力するように警視総監から市長に直々に電話があったと聞かされ、望美は両手を広げて驚いた。
「おお~、もしかして、た、探偵ですか?」
そう叫ぶと、絶妙のタイミングで腰のケースにぶら下げていた携帯電話が震えて、課長に了解を得てから出ると洋介から説明がある。
「今朝、夏川千聖って刑事が来て、協力を頼まれたんだけど、姉貴の要望でノゾミンを加えないと断ると交渉したんだ。なんか、話が大きくなって僕としては困惑しているが、望美はどう思う?」
「やるに決まってるでしょー。だって、大っぴらに探偵ごっこできるんだよ。な、なんか萌えるな~」
「ごっこ、なのかね?」
望美の喜びように、上司が眼鏡をかけ直して睨み、髪を掻きむしろうとして慌てて手を止めた。
「いえ、私は名探偵の相棒、ノゾミンなんですよ。課長、あまりストレスを溜めないようにしてくださいね」
洋介の姉、由香里はマドンナリーリーの事件で望美と一緒に、洋介が火の錬金術師と戦うのを協力してすっかり仲良しなっていた。
そして望美の明るい性格と類稀な洞察力に感心し、何故洋介が別れた後も親友のように彼女と仲良くしているのか納得した。
『洋介の取説はノゾミンしか知らない』
少年の冒険心と大人の複雑な心情を組み合わせた、ガラスの神経を持つ洋介を扱うのは難しい。水面の波紋で相手の動揺を感じ、花の声で心まで読み取ってしまう者と付き合うのは難しい。
『見えすいた嘘っぽい女性じゃ無理だよね』
自分が言うのも何だが、女は好きな人ができると自然と嘘をつく生き物である。
もしかして広瀬望美には不思議なバリアーがあり、水の錬金術師にも心を読み取られないとか?
「ねっ、洋介。ノゾミンは特殊なんじゃないか?」
由香里がそう聞いてみると、思った通りの答えが返ってきた。
「そうかもしれない。彼女は花も読み取れないパワーがある、異質なのか同種なのか不明だけど、一緒にいると癒されるんだ」
「逆に言えば、火の錬金術師はノゾミンが苦手なタイプにならない?」
そう言われた洋介は、真剣な表情を姉に向けて頷いた。
望美は洋介の能力も性格もよく知り尽くし、精神安定剤と的確なアドバイスをする名探偵の相棒ワトソンみたいな存在なのである。
『ハゲ課長と陰で言ってるのが、バレたのか?』
「あのー、嬉しいのですが、どういう事でしょうか?最近、休暇の申請して断られたばかりですよ」
「風が吹いたんだよ」
警察の捜査に協力するように警視総監から市長に直々に電話があったと聞かされ、望美は両手を広げて驚いた。
「おお~、もしかして、た、探偵ですか?」
そう叫ぶと、絶妙のタイミングで腰のケースにぶら下げていた携帯電話が震えて、課長に了解を得てから出ると洋介から説明がある。
「今朝、夏川千聖って刑事が来て、協力を頼まれたんだけど、姉貴の要望でノゾミンを加えないと断ると交渉したんだ。なんか、話が大きくなって僕としては困惑しているが、望美はどう思う?」
「やるに決まってるでしょー。だって、大っぴらに探偵ごっこできるんだよ。な、なんか萌えるな~」
「ごっこ、なのかね?」
望美の喜びように、上司が眼鏡をかけ直して睨み、髪を掻きむしろうとして慌てて手を止めた。
「いえ、私は名探偵の相棒、ノゾミンなんですよ。課長、あまりストレスを溜めないようにしてくださいね」
洋介の姉、由香里はマドンナリーリーの事件で望美と一緒に、洋介が火の錬金術師と戦うのを協力してすっかり仲良しなっていた。
そして望美の明るい性格と類稀な洞察力に感心し、何故洋介が別れた後も親友のように彼女と仲良くしているのか納得した。
『洋介の取説はノゾミンしか知らない』
少年の冒険心と大人の複雑な心情を組み合わせた、ガラスの神経を持つ洋介を扱うのは難しい。水面の波紋で相手の動揺を感じ、花の声で心まで読み取ってしまう者と付き合うのは難しい。
『見えすいた嘘っぽい女性じゃ無理だよね』
自分が言うのも何だが、女は好きな人ができると自然と嘘をつく生き物である。
もしかして広瀬望美には不思議なバリアーがあり、水の錬金術師にも心を読み取られないとか?
「ねっ、洋介。ノゾミンは特殊なんじゃないか?」
由香里がそう聞いてみると、思った通りの答えが返ってきた。
「そうかもしれない。彼女は花も読み取れないパワーがある、異質なのか同種なのか不明だけど、一緒にいると癒されるんだ」
「逆に言えば、火の錬金術師はノゾミンが苦手なタイプにならない?」
そう言われた洋介は、真剣な表情を姉に向けて頷いた。
望美は洋介の能力も性格もよく知り尽くし、精神安定剤と的確なアドバイスをする名探偵の相棒ワトソンみたいな存在なのである。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】悪女のなみだ
じじ
恋愛
「カリーナがまたカレンを泣かせてる」
双子の姉妹にも関わらず、私はいつも嫌われる側だった。
カレン、私の妹。
私とよく似た顔立ちなのに、彼女の目尻は優しげに下がり、微笑み一つで天使のようだともてはやされ、涙をこぼせば聖女のようだ崇められた。
一方の私は、切れ長の目でどう見ても性格がきつく見える。にこやかに笑ったつもりでも悪巧みをしていると謗られ、泣くと男を篭絡するつもりか、と非難された。
「ふふ。姉様って本当にかわいそう。気が弱いくせに、顔のせいで悪者になるんだもの。」
私が言い返せないのを知って、馬鹿にしてくる妹をどうすれば良かったのか。
「お前みたいな女が姉だなんてカレンがかわいそうだ」
罵ってくる男達にどう言えば真実が伝わったのか。
本当の自分を誰かに知ってもらおうなんて望みを捨てて、日々淡々と過ごしていた私を救ってくれたのは、あなただった。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる