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火の錬金術師のパフォーマンス
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毒の粉がコップに入れられ、洋介が口に含んだ。そして目を閉じている隙に水を飲んで鈴美が苦しんで倒れた……。英人はその映像シーンを思い起こし、黒いケースの蓋を片手で開け閉めしながら話している。
「見た限りでは占い師が毒を盛り、殺害して自分も自殺を図った。しかしそれが芝居だったとしても、私には関係ない。麻衣さん、僕と一緒にこんな家から去りましょう」
そう言って手を差し出したが、洋介がそれを制して麻衣の瞳を見つめ、マドンナリリーの目を覚ます最後の作戦を開始した。
「毒はこのテーブルの上にある。そして白いユリの花びらを汚す毒を用意して、お母様を殺させようとしたのはその男です。パートナーを装い、最初から遺産目当てでお嬢様と結婚する計画だった」
洋介は白い粉の硝子容器を手にしてそう言うと、蓋を開けて銀のスプーンで大盛りに掬ってコップの中に入れた。
「僕は実際には黄色の粉しか入れてない。白い粉が毒だというのはそこの花の観客の意見だったから、冷や汗もんだったけどね」
左の手のひらでペンダントのカメラのレンズを遮り、指に摘んでいた黄色の粉を白い花びらの裏側に注いで、あたかも白い粉も入れた様に見せかけてガラス棒でかき混ぜた。
「今度はしっかり、白い粉を盛りました。貴方が犯人でないと言うなら、この水を飲んでみろ」
そう言って洋介が白い粉の泡立つコップを城田英人に差し出した。すると意外にも火の錬金術師は微笑みながらそれを手にした。
「いいですよ。それなら私にも考えがありますので」
城田英人がコップの水を飲むのかと思わせたが、それはトリックプレーだった。テーブルを飛び越えてソファの後ろに回り込み、背後から麻衣を捕まえてその口にコップを押し付けた。
「動くな。変な真似をするとお嬢様が毒を飲む事になるぜ」
「英人。娘を離しなさい。貴方の負けよ。信じてなかったけど、洋介さんの推理が全部的中した。まったく私ったら、バカ丸出しだわ」
「どうかな?マドンナリリーはまだ私の腕の中にある。一緒に死んだっていいんだぜ」
英人は麻衣を立たせて壁側で可愛い唇を指で摘み、後ろからキスをするように顔を近づけてコップを少し傾け、麻衣は目前にコップの水が揺れて愛する人が豹変した事に唖然として震えている。
「しかし、なぜ毒を仕込んだ事がバレた?完璧な仕事をした筈だが?」
「お手伝いさんがリビングで僕に飲み物をこぼし、お手洗いに行っている隙にお前が道具箱の容器に毒を混入した」
洋介のシャツとズボンにはその時のコーヒーの染みが残っている。由香里と望美は洋介の指示でお手伝いさんを問い詰めて白状させ、隣の部屋に証人として待機させてあった。
「しかし、リビングに花は無かった。道具箱に花びらを仕込んだのか?」
「まさか?簡単なトラップですよ。蓋を開けたら分かるように、全部の容器に目印をつけておきました。花の観客に聞いたというのはジョークです」
「なるほど。すべて花で見通せるかと驚いたぞ。それじゃ、お嬢様と立ち去るまで大人しくしてろよ」
「いえ、ダメです。だってソレ、飲ませてもいいんだもん」
洋介の笑みに英人は怒りを感じ、麻衣だけに水を飲ませ、萎れて枯れたマドンナリリーをソファの上に寝かせてコップを床に投げ捨てた。
由香里と望美、星川鈴美もそれを見て愕然としたが、洋介はジャケットのポケットからもう一つの白い粉の入った硝子容器を取り出して、英人に見せつけるように指で摘んで振っている。
「見た限りでは占い師が毒を盛り、殺害して自分も自殺を図った。しかしそれが芝居だったとしても、私には関係ない。麻衣さん、僕と一緒にこんな家から去りましょう」
そう言って手を差し出したが、洋介がそれを制して麻衣の瞳を見つめ、マドンナリリーの目を覚ます最後の作戦を開始した。
「毒はこのテーブルの上にある。そして白いユリの花びらを汚す毒を用意して、お母様を殺させようとしたのはその男です。パートナーを装い、最初から遺産目当てでお嬢様と結婚する計画だった」
洋介は白い粉の硝子容器を手にしてそう言うと、蓋を開けて銀のスプーンで大盛りに掬ってコップの中に入れた。
「僕は実際には黄色の粉しか入れてない。白い粉が毒だというのはそこの花の観客の意見だったから、冷や汗もんだったけどね」
左の手のひらでペンダントのカメラのレンズを遮り、指に摘んでいた黄色の粉を白い花びらの裏側に注いで、あたかも白い粉も入れた様に見せかけてガラス棒でかき混ぜた。
「今度はしっかり、白い粉を盛りました。貴方が犯人でないと言うなら、この水を飲んでみろ」
そう言って洋介が白い粉の泡立つコップを城田英人に差し出した。すると意外にも火の錬金術師は微笑みながらそれを手にした。
「いいですよ。それなら私にも考えがありますので」
城田英人がコップの水を飲むのかと思わせたが、それはトリックプレーだった。テーブルを飛び越えてソファの後ろに回り込み、背後から麻衣を捕まえてその口にコップを押し付けた。
「動くな。変な真似をするとお嬢様が毒を飲む事になるぜ」
「英人。娘を離しなさい。貴方の負けよ。信じてなかったけど、洋介さんの推理が全部的中した。まったく私ったら、バカ丸出しだわ」
「どうかな?マドンナリリーはまだ私の腕の中にある。一緒に死んだっていいんだぜ」
英人は麻衣を立たせて壁側で可愛い唇を指で摘み、後ろからキスをするように顔を近づけてコップを少し傾け、麻衣は目前にコップの水が揺れて愛する人が豹変した事に唖然として震えている。
「しかし、なぜ毒を仕込んだ事がバレた?完璧な仕事をした筈だが?」
「お手伝いさんがリビングで僕に飲み物をこぼし、お手洗いに行っている隙にお前が道具箱の容器に毒を混入した」
洋介のシャツとズボンにはその時のコーヒーの染みが残っている。由香里と望美は洋介の指示でお手伝いさんを問い詰めて白状させ、隣の部屋に証人として待機させてあった。
「しかし、リビングに花は無かった。道具箱に花びらを仕込んだのか?」
「まさか?簡単なトラップですよ。蓋を開けたら分かるように、全部の容器に目印をつけておきました。花の観客に聞いたというのはジョークです」
「なるほど。すべて花で見通せるかと驚いたぞ。それじゃ、お嬢様と立ち去るまで大人しくしてろよ」
「いえ、ダメです。だってソレ、飲ませてもいいんだもん」
洋介の笑みに英人は怒りを感じ、麻衣だけに水を飲ませ、萎れて枯れたマドンナリリーをソファの上に寝かせてコップを床に投げ捨てた。
由香里と望美、星川鈴美もそれを見て愕然としたが、洋介はジャケットのポケットからもう一つの白い粉の入った硝子容器を取り出して、英人に見せつけるように指で摘んで振っている。
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