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 響き渡った獣の声にリュイル達は周囲を見渡している。
 アイシェラも視線を周囲に向けている事から、声の主がどの方向にいるかわからないようだ。
 となると、索敵範囲外からの声か。
 そんな中フィアはある方向に視線を向けている。


「フィア、聞こえた声ってワイヴァーンか?」

「たぶん、そうじゃないかしらね」

「たぶん?」

「ワイヴァーンの叫び声なんて覚えていないわよ。叫び声を上げた魔物かわからないけれど、飛んでいる魔物ならいるわね」


 それで視線を空に向けているのか。
 飛んでいる魔物ならたぶんワイヴァーンだと思うが、決めつけるのはよくないよな。


「飛んでいる魔物はどこに向かっているんだ?」

「こっちに向かってきてるわね」

「目的は俺達か?」

「違うわね。向かってきているとは言っても、方向が少しズレているわよ」


 どうしたものか。
 リュイル、リリィ、アイシェラに視線を向ける。


「フィアさんが、飛んでいる魔物を確認をしているならワイヴァーンで間違いないと思うわ」

「そうですわね。ワイヴァーン以外の飛ぶ魔物がいるのでしたら、ギルドマスターからそれらの話があるはずですし、ワイヴァーンの飛行領域内に空飛ぶ魔物いるのでしたら、たぶん食料になっているはすですよ」

「この草原には、あんな叫び声をあげるような魔物か獣はいなかったはず」


 なら、飛んでいる魔物はワイヴァーンとして対処したほうが良さそうだな。
 俺からフィアに頼んだほうが良いか。
 飛んでいる魔物がワイヴァーンじゃない可能性もあるし。


「フィア、飛んでいる魔物はこの辺りに来るまでどのくらいかかる?」

「そんなにかからないわね」

「時間も無いか。すまないが、飛んでくる魔物をフィアに頼んで良いか?」

「かまわないわ」

「ありがとな」


 立ち上がるフィアにお礼を言う。


「良いのよ、行ってくるわ」

「気をつけてな」

「ええ」


 フィアが草原を走って行く。
 草原をかなりの速さで走って行くフィアの姿は、草の背丈もあってか直ぐに見えなくなった。
 あれだけの速度で草原を走れるんだから凄いと思っていると魔物の叫び声が。
 先ほどより声が大きく聞こえるって事は近いな、この叫び声はフィアを見つけた事で上げたものか。
 しかし、こんな叫び声を上げるような魔物や獣と戦いたいとは絶対に思わんな。
 フィアの走って行った方を眺めていると、空から地上に向う大きな魔物。


「なぁ、あれがワイヴァーンか?」


 フィアを見つけ地上に向かっていく魔物の事を訪ねる。


「たぶん、そうだと思う」

「たぶん?」


 曖昧だな。
 もしかして知識として知ってはいるけどってやつか。


「リュイル達はワイヴァーンを実際に見た事ある?」


 リュイル達は首を横に振っている。


「でも、話を聞いた事があるわ」

「そうですね。確かあんな姿をしているという、お話だった気がしますね」

「冒険者ギルドでワイヴァーンの絵を見たことがある。似てる気がする」


 となると、やっぱりワイヴァーンでいいのかね。
 まぁ、フィアが仕留めたら聞くか鑑定することにしよう。
 あんなものに襲われて逃げ切れる自信は俺には無いよ。
 よく件の冒険者は逃げられてものだと感心するわ。
 ワイヴァーンを眺めていると地上に頭から降下していったと思ったら頭が真上に跳ね上がった。


「ワイヴァーンってあんな動きするんだ」

「いや、流石にあの動きはおかしいわよ」

「ありえない動きですよ。普通ならこんな感じで空に上がるはずです」


 ワイヴァーンの動きを見て呟いた俺の言葉に、リュイルが指摘しリリィが手の動きで補足してくる。
 異世界だし魔法もあるから出来る動きかと思ったがそうではないようだ。
 見れば体も上がってるようだし、フィアに叩きあげられたんだろうなと思ったら、今度は頭から真下に落下した。
 ワイヴァーンの動きにリュイル達は驚愕していたが、フィアの仕業だと俺は納得。

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