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 食事も終わり一息ついた所で明日の予定をリュイル主導で話し合う。
 フィアはワインを飲みながらだが、リュイル達は明日の行動に差し支えないためにワインを各自1本に抑えたようだ。
 約束通りフィアにはワインを3本渡してある。
 ワインを飲み終わったリュイル達は羨ましそうに、ワインを飲んでいるフィアを眺めていたよ。
 ワイヴァーンの群れを討伐して帰る時には、次の日を気にせず飲みたいとリュイル達から迫られ、その迫力に圧され頷くしかなかった。
 久しぶりの依頼で、終わった後に騒ぎたいのか、フィアが羨ましかったのか。
 たぶん、羨ましかったんだろうなぁ。


「明日の行動予定なんだけど、アイシェラ何か考えてる?」

「一応考えているのが、ブラッドガウルの群れがいた所までの道のりをたどる予定」

「前回の私達が歩いた道をたどるのね」

「同じ道のりですと、出会わない可能性があるのではないですか?」


 ブラッドガウルの群れに行くまでの道のりで出会った、ブラッドガウルのはぐれは仕留めたから、リリィの指摘もわかる。
 ワイヴァーンが食料にしていると考えているブラッドガウルがいないんだからな。
 ただ、相手も生き物だから、戻ってこないとも言い切れないんだけど。


「それは、わかってる。ギルドマスターの所に上がってきた話では群れのいた場所の方向に行ったと。なら、そこを目指していって、群れのいた場所ついたら、そこから探したほうが良いと考えた」

「群れのいた場所に近づけばそれだけ襲われる可能性も上がるわよ」

「わかってる。可能な限り注意深く周囲の索敵はしていくけど、高度の方は厳しい。だからみんなには上の方を見て欲しい」

「わかったわ。みんなは、いつもより注意を上に向けるようにして、幸いここは草原だから飛んでる、飛び上がるは目視できる可能性があるから、ある程度はアイシェラの索敵をカバーできるはずよ」

「こちらから見えるという事は、向こうからも見えるという事になりますよね」

「そうなのよね、しかもワイヴァーンは飛んでいて視界が広いだろから、向こうが先に私達をみつける可能性が高いわね」


 自分達で出来る事は、フィアに頼らないようにと色々と考えているのだろう。
 俺は戦闘をしたいとは思わないし、索敵なんで無理だから最初からフィアに頼るけどね。
 そもそも、この依頼はリュイル達でどうにかなるような物ではないはずなんだが。

「最低でも奇襲を受けるようなことだけは避けない様にしないといけませんね」

「そうね、出来るだけ注意してブラッドガウルの群れのいた場所まで行く方向で。ブラッドガウルの時と違って探しながらではないから時間も掛からないはずよ。途中で、ワイヴァーンを見かけたときにはその場所で待機よ」


 リュイルはワインを飲んでいるフィアに視線を向ける。


「私達で対処はは無理だから。フィアさん、お願いしても良いですか?」

「ええ、依頼を受けると言ったのは私だから、ワイヴァーンは任せてもらって良いわよ」

「おねがいします」

「その間、ヒロの事は頼んだわよ」

「任せてください」


 リュイルの言葉に、他の4人も頷く。


「明日はそんな感じの予定ね。それで、今日の見張りの順番なんだけど希望ある?」

「それなんだが、リュイル。今回の依頼の間は野営中の見張りは無くても良いと思うんだが」

「「「「「 ! 」」」」」


 リュイル達が驚きの表情でこちらを向く。
 そんなに驚かなくても。
 見張りが必要なことなのは理解はしているけどさ。
 まぁ、フィアの結界があっての提案だけど。


「フィアさんの結界があるから、ヒロは提案したんだと思うけどね」

「そうですね、フィアさんの結界ですから何も問題は無いと思います。それに、営中に見張りをしないとなると、フィアさんにだけ負担させる事になってしまいます」

「結界の事なら気にしなくていいわよ。負担と感じるほどでもないし、私の結界はワイヴァーンごときじゃかすり傷ひとつつかないわよ。それよりもヒロの相手をしてあげて、野営で小屋を使うのが嬉しいみたいよ」


 フィアの言葉にリュイル達は小屋を見た後、俺の方をみて頷いている。
 確かに小屋を使うことが嬉しいのは間違いないよ。
 新しいものを箱から出したよう感じはあるから、微笑んでいるリュイル達に納得されても仕方がないのか。


「初めての小屋だし、どうせならみんな一緒が良いと思ったんだよ」

「わかったわ。フィアさんからヒロの事を頼まれたしね」

「何より、ヒロさんからお願いされたら断れませんよね」

「ヒロには沢山の恩がある」

「そうよねぇ、色々としてもらっているしね」

「もっと、お願いしてもいいんですよ」

「よかったわね、ヒロ。小屋でみんなと一緒に寝ることが出来るわね」


 みんなと一緒に寝ることが出来るのは嬉しいけど。
 それをリュイル達に言わなくても。
 リュイル達が笑顔で俺を見てるじゃないか。


「それなら言ってくれれば良いのに」

「そうですよ、言ってくれれば良かったんですよ」

「うん、遠慮し無くて良い」

「そうよね、遠慮しないでほしいわね」

「言ってくれれば大抵の事はしてあげられるからね」


 リュイル達は積極的だな、酔っていないと思うんだが。
 でも、せっかくだし膝枕を頼んでみようかな。
 明日の予定の話が終われば、みんなで談笑して過ごし、ある程度の時間になれば見張り以外は寝ることになるのだが、今回は見張りはしない。
 フィアがワインを飲み終えたらみんな小屋の中へ。
 リュイル達は小屋の中に入ると防具を外し服を脱いでいく。


「なんで、脱いでるの?」

「小屋の中で寝るのには邪魔でしょう?」

「防具はわかるけど、服まで?」


 リュイルと話しているうちに俺とフィア以外は下着姿に。


「街では寝るときはいつもこの格好でしょ」

「街じゃないんだが」

「ヒロさん、ワイヴァーンでも傷がつけられない、フィアさんの結界の中なんですから街以上に安全な場所なんですよ」


 言われれば確かにそうだな。
 下着姿で寝ても問題ないのか。


「ヒロは気にしすぎ」

「私たちも安全じゃなければこんな格好はしないわよ」

「そうですよ、ヒロさん心配しすぎですよ」


 それだけ、フィアの結界を信頼してくれてるんだな。
 しかし、街で一緒に生活するようになってリュイル達の下着姿は毎日のように見ているけど、一緒の部屋で寝るっているのは今回が初めてだな。

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