上 下
115 / 178

115

しおりを挟む
 店の奥にある部屋に連れていかれた。
 部屋に入るなりすぐに座るよう勧められたのでイスに座ると、フィアは隣に。
 ラルフィナさんの店の奥に入るのは初めてだな。


「今、飲み物をもってくるわね~」

「ラルフィナさん、俺が出すので」

「ありがと~」


 部屋を出て行こうとするラルフィナさんに言うと、俺の正面に座りお礼を言ってくる。


「お酒?」


 フィアが期待した表情で聞いてくる。
 ラルフィナさんの方を見ればフィアと同じように期待した表情だ。
 期待されても話が終わらないと出さないよ。


「いや、お茶」


 出さないことを告げると2人は残念そうにする。
 酒をだしたらフィアとラルフィナさんの2人は飲み始めて話をすることはではなくなってしまう。
 フィアが酒って言ったから、酒を出すと思ったのかな。
 綺麗な2人が残念そうにしているの何とも言えない。


「ラルフィナさんに聞きたい事が終わったら出すよ」


 その言葉を聞いた2人は笑顔になる。
 俺も甘いと思うが、2人には笑顔でいて欲しい。
 聞きたい事を聞いて期待している酒を早く出してあげるか。


「物を冷やす魔道具ってあります?」

「私の所では扱ってないわ~。首都にあるような大きな所なら可能性はあるかもしれないけど~。物を冷やす魔道具の事を私は聞いたことは無いわね~」

「そうですか」

 
 ラルフィナさんは頬に手を当てながら答えてくれる。
 冷蔵庫みたいなものがあればと思ったが無いようだ。
 あれば飲み物を冷やしたり、料理に使ったり便利だと思ったんだが。
 ラルフィナさんが聞いた事が無いのなら無いかもしれないな。
 魔道具を扱っているから、それに関する内容が噂程度でも多少は入ってくるだろうし。


「ヒロは何か冷やしたいものでもあったのかしら?」


 フィアが不思議そうに聞いて来たので頷く。
 何か物を冷やす事って無いのだろうか?
 俺はアイテムボックスがあるから気にしなかったが、 普段は食材をどのように保管してるんだろう気になる。


「出来るわよ」

「えっ?」

「物を冷やしたいのでしょう。寒い空間を作ればいいのなら、結界と属性魔法を併用して張った結界の中の温度を下げれば出来るわよ」


 フィアにそんな事が出来るとは思わないよ。
 まさか、結界と魔法で冷蔵庫を作り出すとは。
 そんな事出来るのは間違いなくフィアだけだよなぁ。


「大きさとか場所とか自由にすることは?」

「簡単よ」

「どれだけ維持できる?」

「そうねぇ、結界から遠く離れなければヒロが満足するまで維持できると思うわよ」


 フィアは少し思案して答える。
 俺が満足するまでとはありがたい。
 ためしに何か冷やしてみるか。
 酒しかないけど。


「ラルフィナさん少し場所を借りても良いですか?」

「いいわよ~」


 簡単に許可をくれたのは何をするのか興味があるからだろう。
 とりあえず部屋の隅に結界を張ってもらおう。


「これが冷えるくらいの大きさの結界を頼めるか」


 試しという事で買い置きしておいたワインと日本酒を数本ずつ出して部屋の隅に置く。


「ヒロ、それを冷やすのかしら?」

「そうだけど」


 フィアは置いたワインと日本酒を見つめている。
 ラルフィナさんを見ればフィアと同じように視線の先はワインと日本酒だ。


「私は、飲みたいのだけど」

「飲む分は別に出すから、凍らせないように冷やしてくれ」


 冷凍ではなく冷蔵だからな。
 冷やすのが目的だから凍ったら困る。


「わかったわ」


 そう言ってフィアが結界魔法を使ってくれる。
 ワインと日本酒を中心に魔法陣が現れ淡く発光する。
 俺が結界を張ってもらったときもこんな感じだったな。


「手を入れても大丈夫か?」

「結界の中に手を入れても凍ることは無いわよ。言ってくれれば結界内の温度は調整するわ」


 結界の中に手を入れるとひんやりとする。
 もう少し温度を下げてもいいかもな。


「もう少し下げられるか?」

「このくらいかしら」


 結果の中に手を入れたままだから温度が下がるのがわかる。
 結果内の温度は俺の感覚だけどこんなものだろう、今回は試しの部分もある。
 あとで温度計を購入しておこう。


「しばらくそのままで頼む」

「わかったわ。ヒロの目的は終わりよね」

「そうだな」


 フィアに頼りきりの方法だが物を冷やす事が出来るようになったから良いか。
 それに俺の事を期待して見てるようだし、聞きたい事が終わったらって約束だしな。


「ワインと日本酒どっちを飲むんだ?」

「日本酒がいいわ」


 笑顔で答えるフィアは嬉しそうだ。


「ラルフィナさんも日本酒で良いですか?」

「いいわよ~」


 笑顔で嬉しそうに返事をするラルフィナさん。
 アイテムボックスから日本酒の一升瓶を2本とグラスを2個テーブルに出す所を2人は見ている。
 日本酒とグラスをフィアとラルフィナさんに差し出すと笑顔で受け取り飲み始める。
 フィアは昼食の時から飲みたがっていたし、なにより笑顔で嬉しそうだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

異世界隠密冒険記

リュース
ファンタジー
ごく普通の人間だと自認している高校生の少年、御影黒斗。 人と違うところといえばほんの少し影が薄いことと、頭の回転が少し速いことくらい。 ある日、唐突に真っ白な空間に飛ばされる。そこにいた老人の管理者が言うには、この空間は世界の狭間であり、元の世界に戻るための路は、すでに閉じているとのこと。 黒斗は老人から色々説明を受けた後、現在開いている路から続いている世界へ旅立つことを決める。 その世界はステータスというものが存在しており、黒斗は自らのステータスを確認するのだが、そこには、とんでもない隠密系の才能が表示されており・・・。 冷静沈着で中性的な容姿を持つ主人公の、バトルあり、恋愛ありの、気ままな異世界隠密生活が、今、始まる。 現在、1日に2回は投稿します。それ以外の投稿は適当に。 改稿を始めました。 以前より読みやすくなっているはずです。 第一部完結しました。第二部完結しました。

俺のスキルが無だった件

しょうわな人
ファンタジー
 会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。  攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。  気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。  偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。  若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。  いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。 【お知らせ】 カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。

始めのダンジョンをループし続けた俺が、いずれ世界最強へと至るまで~固有スキル「次元転移」のせいでレベルアップのインフレが止まらない~

Rough ranch
ファンタジー
 人生のどん底にいたこの物語の主人公こと清原祥佑。  しかしある日、突然ステータスやスキルの存在するファンタスティックな異世界に召喚されてしまう。  清原は固有スキル「次元転移」というスキルを手に入れ、文字通り世界の何処へでも行ける様になった!  始めに挑んだダンジョンで、地球でのクラスメートに殺されかけたことで、清原は地球での自分の生き方との決別を誓う!  空間を転移して仲間の元へ、世界をループして過去の自分にメッセージを、別の世界線の自分と協力してどんどん最強に!  勇者として召喚された地球のいじめっ子、自分を召喚して洗脳こようとする国王や宰相、世界を統べる管理者達と戦え! 「待ってろよ、世界の何処にお前が居たって、俺が必ず飛んで行くからな!」

のぞまぬ転生 暴国のパンドラ

夏カボチャ
ファンタジー
逆恨みから1000回目の転生に繋がる異世界転生、全ての世界の経験が1人の元少女を強くする!

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

親友に彼女を寝取られて死のうとしてたら、異世界の森に飛ばされました。~集団転移からはぐれたけど、最高のエルフ嫁が出来たので平気です~

くろの
ファンタジー
毎日更新! 葛西鷗外(かさい おうがい)20歳。 職業 : 引きこもりニート。 親友に彼女を寝取られ、絶賛死に場所探し中の彼は突然深い森の中で目覚める。 異常な状況過ぎて、なんだ夢かと意気揚々とサバイバルを満喫する主人公。 しかもそこは魔法のある異世界で、更に大興奮で魔法を使いまくる。 だが、段々と本当に異世界に来てしまった事を自覚し青ざめる。 そんな時、突然全裸エルフの美少女と出会い―― 果たして死にたがりの彼は救われるのか。森に転移してしまったのは彼だけなのか。 サバイバル、魔法無双、復讐、甘々のヒロインと、要素だけはてんこ盛りの作品です。

嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜

𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。 だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。 「もっと早く癒せよ! このグズが!」 「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」 「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」 また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、 「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」 「チッ。あの能無しのせいで……」 頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。 もう我慢ならない! 聖女さんは、とうとう怒った。

処理中です...