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第3話
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大将さんとおばあちゃんに案内されたのは…なんと。
大きな屋敷でした。
[ここ、店じゃなくてお屋敷…]
『メイの作ったアイテムは絶対に売れるから大きい店舗の方がいいぞ。それにここの屋敷の中にある家具や本はこの土地を買った人のものとなるからいいと思うぞ?』
『そうさ。それにここは今なら10万ガルドだからね。』
…いや、それはない。かなり高いはず。それか訳あり物件。
[隠し事はいいので、ここにはナニがあるのですか。]
『い、いやっ。な、何もないぜ?!』
『そうじゃ!何もない!ちょっと中を見て来てごらん?』
[大将さんたちは入らないのですか?]
『俺らはここの持ち主と話してくるからっ。』
『そうじゃな!そうしよう!』
…そうですか。幽霊的なものが出るのですか。
まあ、探索はしますが。
[わかりました。少し見て来ます。]
そう書いたものを地面に置き扉をあけて中に入る。
んー。改造が必要だよね…いや…入ってすぐに階段。左右に廊下と部屋が3つずつ。上も同じかな?
下2つ上2つに分けて装備やアイテムを売るのはいいかもな。
例えば、階段に向かって一階の左側が調薬、右側が料理。二階の左側が鍛治、右側が裁縫。うんうん。いい感じ。でも、こんなお屋敷なら料理をする設備も整ってそうだ。
探してみよう。と一階を探索。
……ちょうど良く、右側にキッチンがあった。3つの部屋を突き抜けさせて1つの部屋にしようかな。ちなみに、階段の両脇に扉があり、それぞれトイレ付きの客間だった。
とここまでで不思議に思ったこと。
幽霊が出てこない。
ここは、うらめしやーって出て来てほしいというのに。
寒気もしないし、普通の屋敷だ。
次は二階に行ってみよう。
ふと窓の外を見上げた。
赤い液体がついている。
………。
『……階段の軋みが聞こえたのですが、誰もいない?』
いますよ。体が透けている若い男の幽霊さん。
この幽霊は目に見えるのですよね。
びっくりさせてくれたお返しをします。
[こんにちは、あなたはここの家主?]
と書いて赤い液体のついた窓に貼り付ける。
『え。………。』
あれ、幽霊さんが固まりました。
『…スーハースーハー。コホン。誰ですか。かか隠れてないで出て来なさいっ。』
深く深呼吸を繰り返し始めたと思ったら何とも迫力のない様子で幽霊さんはおびえながら問いかけてきた。
こわがりですか。
[すみません、出て行くことは不可能です。透明人間なもので。]
『……。……どこに立ってますか?』
……ここはどう答えよう。
ちょっとふざけて…
[あなたの後ろ…]
『…っ!』
バッと後ろを振り返りますがそこにはいません笑
[ではなく前にいますよ。]
『からかわないでください!本当に!!』
[ふふ、赤い液体つけておどかして来たお返しです。]
『うぐ。…本当にいるのですか?』
[はい、います。でも、これ以上証明する余地がないのですみません。]
『……。あなたは、透明なだけなのでしょう?ものには触れるのですよね?』
[はい。]
『なら、布とか被ってみたら…』
[無理です。]
[私に触れたものは瞬時に透明化するので…]
[まあ、消える瞬間見ればいるとわかるかもしれませんが…]
『………あなたも苦労してますね。私も苦労しているのです。ここのハウスキーパーだというのに、主人には怖がられ、不審者を脅かす程度しかできない幻覚とかしか見せられないし…』
[…ハウスキーパーですか?執事みたいなものですか?]
『そうですね。そういう言い方もあります。どんな事があっても、たとえ、死んでしまっても主人のことを守りたかったのですが…余計なことをしてしまったようです。』
すごいです!
[かっこいいです!]
[あのですね!この屋敷は売りに出されています。ご存知ですか?]
[もし、もしよかったらですが!私がここを買い取った暁には私の留守中守っていただけませんか?]
[と言っても…帰って来たとかわかりやすくできたらいいのですが…]
『……そうでしたか。売りに…って、私がかっこいい?!ど、どこがですか!…ちょっと待ってください?あなたはえっと、性別は?』
[女ですよ。]
『…』
あれ、幽霊なのに赤面した。
生きてるみたいな顔色になりましたよ?
『わ、私はかっこいいという存在ではないのです!ですから!除霊師でも呼んで追い出してくれてもっ。』
[嫌です。幽霊なのに感情豊かで、主人のことを思い続けているそんな優しい人は絶対に追い出したりしません。]
『……。』
涙が…幽霊さんが泣いてる。幽霊さんに触れたらいいのですが。
そっと手を伸ばして涙を拭うように…
『?!え…!!』
え。触れた?
というか、目を見開いて“私を”見ている?
『…貴女が透明人間ですか?』
あ、返事を書くため手を離さないと…
手が離れた瞬間、顔色を変える幽霊さん。
[見えたのですか?]
『はい、もう一度私に触れてください。』
…今度は肩に手をおく。
『やはり、触れていれば見えているようです。』
でも、大将さん達には触れても当たった感じしかしてない…はず。
[幽霊さん限定みたいです。他の方はダメでしたし…]
『……私だけ。』
[どうかしましたか?]
『……あの。ここの持ち主になるという件ですが、お願いします。私を貴女の下で雇ってください。給料は貴女といる時間でいいです。話し相手になってくれればそれで…』
[ありがとうございます。では早速、家主さんにお伝えして来ます!]
『っ!待ってください!私の名前はアルベルトと言います!アルとお呼びください!それとっ!』
へ?アルさん?に抱きしめられてる?!
『俺以外の男と仲良くしないでください。それと、声は出せれるのでしょう?私とだけの時は声を出して話してください。』
……ヤンデレ男が釣れたのですが…
は、返事を書かなくてはと一度離れてもらい、紙に書き込もうとしたら、手があるところを予測していたのか、そこに手を伸ばされ抑えられる。
『声…聞きたいです。紙はダメです。』
手をギュッとさせられた。
書けない。
詰みました!
「…わかりましたから。」
『自己紹介はまだでしたね。貴女のお名前は?』
「トーメイです。メイと呼ばれてます。」
『…さて、屋敷の説明に入ろうと思うのですが、お時間いいですか?』
「いや、あの、ここの家主が来ちゃうから先に買い取ってくるからだから待って…」
『………そうですね。邪魔が入るのは困ります。終わったら階段脇左側の部屋に来てください。いいですね?』
「は、はいっ。」
『いい子です。それと、私の名前は?』
「え。アルさ……アル!アルです!」
手を緩めて解放してくれ始めたのにまたギュッとしないで!
『いい子ですね。メイ、待ってますからね?』
「はいっ。」
ようやく解放される。
『ふふふ。行ってらっしゃい。』
「…いってきます。」
脱出に成功した。大将さん達が、女の人?と話している。鈴で知らせる。
『え!何!鈴の音?!』
『落ち着け、今話したメイだ。メイどうだった?』
[このお屋敷買いたいです。ですが本当に10万ガルドでいいのですか?]
『ほ、本当に透明なのね…。この屋敷は取り憑かれてるのよ?そっちこそ本当にいいの?!』
[アルさんはいい人ですよ?]
『…え。アル?』
[?もしかして知らなかったのですか?あそこに住み着いているのはアルさんです。貴女を死んでも守りたいと思い続け幽霊としてあそこに住み着いているのです。]
『…い、嫌。余計にいらないわ!は!あなたは女よね?貴女は大丈夫?!』
[え。]
『あの男は、病みすぎてヤバイのよ!本当に大丈夫?!』
あ、察し。
もう手遅れです。
『メイ…遅い。早くお金渡しておいで。…なんだ、居たのですか。元主人。』
『ヒッ。』
『『……。』』
おばあちゃん気絶なう。
それを支える大将さん引きつった顔で耐える。
元主人さん大将さんの後ろに隠れる。
アル、私の後ろにに立って元主人さん睨みつける。
カオス。
『メイ、お金出してください。地面に置いとけば勝手に回収します。ほら、行きますよ。』
[わかった。待って。]
『……。』
無言のプレッシャーぱない。2人っきりじゃないから声出せないよ?!
10万ガルドを地面において、アルの手を取る。
『消えた?!』
あ、やっぱりアルも透明化したことになるのか。
[大将さん、おばあちゃん、また明日顔出します。]
というメッセージつけてアルに手を引かれるまま屋敷に入る。
左側の部屋に入って、アルがズンズンと鏡の中にまで入ろうとする。
「っ?!ちょっと私通り抜けできな……あれ?」
抜けられた?
『あの鏡は私の魔法でゲートの役割をしているのです。行きたいところにすぐに行けます。メイ様も使えるようにしておきましたから存分に使ってください。さて、』
魔法…そういえばココゲームの中…
『まず、先ほどはすみません。私に怯えない人間は久々なもので。興奮してました。』
「あ、いや。うん。びっくりしたけど。大丈夫。」
『えっと、とりあえず、ここはメイ様のお屋敷になったのですが。改装しますか?どのように使用されたいので?』
「えっと、無人店舗にしたいの。私がいてもいなくても見えないから無人店舗となるのだけど。アルには、警備をお願いしたいかな。私はこの世界あまり詳しくないのだけど。他の異世界人が不正にアイテムを入手して来るかもしれないからそれを見つけたら追い出してほしい。」
『ふむ、それは構いませんが。私はものにさわれませんよ?』
「幻覚でおどかしていいよ。」
『それだけではさすがに…魔法の許可をしていただければ助かりますかね。』
「…魔法は使えるの?…もちろん許可するよ。ものは壊しちゃダメだよ?それと、改装というか、各階の部屋を1つにして各スキルで作ったアイテムを売れるようにしたいんだ。」
『ふむ、改装は任せてください。私がやっておきます。メイ様はどのようなスキルをお持ちで?』
「鍛治、裁縫、料理、調薬だよ。」
『それで4部屋ですね。それぞれ雰囲気あったお部屋にしておきましょう。それで…』
その後どこをどのスキルの店にするかを決めたり、鏡の使い方とか色々説明受けて、今いるこの部屋は鏡の中の部屋なので、私の部屋として使えばいいと言われた。ログアウトもここでできるようだ。
「この世界の中で、初めて目を見てお話しして楽しかった。ありがとう。アル。」
『っ!』
みんなやんわりな場所しか見ないからな。とても新鮮だ。
『……メイ様。いっそのこと守護霊なっていいですか?』
「ん?守護霊?なにそれ?」
『いつでもお側にいることができます。外に行く時も、戦う時も。私も魔法なら使えますから…』
いつでもお側に…ガーディアン=ストーカーだよね。
でも魔法使えるのか。
「何の魔法が使えるの?」
『基本属性は使えますよ。火、水、風、土、闇、光ですね。』
…え?
「最強じゃん。」
『いえいえ、魔法は最近使わないのでコントロールが危ういと思います。』
「私、魔法使えないから羨ましい。」
『…メイ様は戦闘スキルなにをお持ちで?』
「ん?剣。」
『他には?』
「持ってないよ。強いていうなら軽業?」
『……レベルは幾つですか?』
「9。」
『熟練度は…』
「9。」
『……。』
沈黙。
「…って何でそんな呆れ顔?」
『ありえないからです。異界人なら魔法1つぐらい持ちたがるでしょう。』
「生産スキル持ってないと詰むと思ったんだもん。透明人間だから。それに、呪文覚えきれないし。」
『…イメージすればいいだけですよ。』
「え。じゃあ、火の玉出すのも長い詠唱なんてないの?」
『ないです。』
「……とればよかった。」
『…ですが、そのおかげで、私は役立てそうです。守護霊認定してください。』
「えっと。」
ーーーゴースト・アルベルトが守護霊になりたそうにこちらを見ている!仲間にしてあげます?イエス・ノー ーーー
なにかな。この悪意ある表示。
イエスを押す。
ーーーゴースト・アルベルトが守護霊として認定されました。戦闘に参加できます。ーーー
『ありがとうございます。ですが、今日はお疲れでしょう。そろそろお休みになられては?明日までには改装は終了させておきますので。』
「え。無理しないでね。」
『~っ!はい。』
「じゃ、お休み。アル。」
『はい。』
ログアウトして、機械の電源を切り、携帯を開くと、着信がかなりきている。うざい。
また電話が来た。
「…はあ。何?雄二」
“やっと出た!今までプレイしてたのか!?ていうか、俺が案内するって言ったのに何で待ってくれてないの!!名前は?容姿は?どんなのにしたか教えて!”
「いやだ。」
“は?!なんで!!”
「だって、雄二とやっても楽しくない。」
もう、いい加減やめてほしい。おせっかいは。
“っ!1人でやるよりは楽しいに決まって…”
「…雄二が知らずのうちに私の楽しみを邪魔してるのいい加減気づいたら?」
“え?”
「だって、私、雄二に誘われたゲーム。一度も、自分の力でクリアしてないんだけど。わかってる?全部先にネタバレを雄二がして、全然達成感なんて感じられてない!私は、雄二のおもちゃじゃない!!」
“……。”
「…もう切る。じゃあね。」
“待った!…悪かった。本当に…頼むから。一緒にゲームやろ?VRなら、ネタバレなんかないし…スキルも自分で決めたものだろ?口出しもしない。だから…な?”
……口出しなんかしたら縁をきる。
「……わかった。でも、いい?私という存在は目立ちたくない。明日、一緒にゲームしてもいいけど、私についての情報を掲示板に書いたりしたら絶交だからね!」
“…わかった!わかったから!名前と、容姿を教えてくれ…”
「……容姿は明日会えばわかる。それと、縛りで話すことを縛ってからやってる。意思疎通は紙でやる。名前は…NPCからメイって呼ばれてる。守護霊目印に探して。ゴーストだから。」
“え?!縛りありなのか。それに、もう、守護霊契約したの?!しかもゴースト?!見たことない…。わかった。俺は金髪のツンツン頭で緑の目。アバター名はユウ…それじゃ広場で待ってる。”
「じゃ。」
プツ。
……嫌だなぁ…ソロ志望なのに騒がれると面倒だし…でも第一陣らしいからお客さんとしては利用してくれてもいいかも。宣伝はOKにしようかな。
とにかく、アルにお願いしてみないと。
大きな屋敷でした。
[ここ、店じゃなくてお屋敷…]
『メイの作ったアイテムは絶対に売れるから大きい店舗の方がいいぞ。それにここの屋敷の中にある家具や本はこの土地を買った人のものとなるからいいと思うぞ?』
『そうさ。それにここは今なら10万ガルドだからね。』
…いや、それはない。かなり高いはず。それか訳あり物件。
[隠し事はいいので、ここにはナニがあるのですか。]
『い、いやっ。な、何もないぜ?!』
『そうじゃ!何もない!ちょっと中を見て来てごらん?』
[大将さんたちは入らないのですか?]
『俺らはここの持ち主と話してくるからっ。』
『そうじゃな!そうしよう!』
…そうですか。幽霊的なものが出るのですか。
まあ、探索はしますが。
[わかりました。少し見て来ます。]
そう書いたものを地面に置き扉をあけて中に入る。
んー。改造が必要だよね…いや…入ってすぐに階段。左右に廊下と部屋が3つずつ。上も同じかな?
下2つ上2つに分けて装備やアイテムを売るのはいいかもな。
例えば、階段に向かって一階の左側が調薬、右側が料理。二階の左側が鍛治、右側が裁縫。うんうん。いい感じ。でも、こんなお屋敷なら料理をする設備も整ってそうだ。
探してみよう。と一階を探索。
……ちょうど良く、右側にキッチンがあった。3つの部屋を突き抜けさせて1つの部屋にしようかな。ちなみに、階段の両脇に扉があり、それぞれトイレ付きの客間だった。
とここまでで不思議に思ったこと。
幽霊が出てこない。
ここは、うらめしやーって出て来てほしいというのに。
寒気もしないし、普通の屋敷だ。
次は二階に行ってみよう。
ふと窓の外を見上げた。
赤い液体がついている。
………。
『……階段の軋みが聞こえたのですが、誰もいない?』
いますよ。体が透けている若い男の幽霊さん。
この幽霊は目に見えるのですよね。
びっくりさせてくれたお返しをします。
[こんにちは、あなたはここの家主?]
と書いて赤い液体のついた窓に貼り付ける。
『え。………。』
あれ、幽霊さんが固まりました。
『…スーハースーハー。コホン。誰ですか。かか隠れてないで出て来なさいっ。』
深く深呼吸を繰り返し始めたと思ったら何とも迫力のない様子で幽霊さんはおびえながら問いかけてきた。
こわがりですか。
[すみません、出て行くことは不可能です。透明人間なもので。]
『……。……どこに立ってますか?』
……ここはどう答えよう。
ちょっとふざけて…
[あなたの後ろ…]
『…っ!』
バッと後ろを振り返りますがそこにはいません笑
[ではなく前にいますよ。]
『からかわないでください!本当に!!』
[ふふ、赤い液体つけておどかして来たお返しです。]
『うぐ。…本当にいるのですか?』
[はい、います。でも、これ以上証明する余地がないのですみません。]
『……。あなたは、透明なだけなのでしょう?ものには触れるのですよね?』
[はい。]
『なら、布とか被ってみたら…』
[無理です。]
[私に触れたものは瞬時に透明化するので…]
[まあ、消える瞬間見ればいるとわかるかもしれませんが…]
『………あなたも苦労してますね。私も苦労しているのです。ここのハウスキーパーだというのに、主人には怖がられ、不審者を脅かす程度しかできない幻覚とかしか見せられないし…』
[…ハウスキーパーですか?執事みたいなものですか?]
『そうですね。そういう言い方もあります。どんな事があっても、たとえ、死んでしまっても主人のことを守りたかったのですが…余計なことをしてしまったようです。』
すごいです!
[かっこいいです!]
[あのですね!この屋敷は売りに出されています。ご存知ですか?]
[もし、もしよかったらですが!私がここを買い取った暁には私の留守中守っていただけませんか?]
[と言っても…帰って来たとかわかりやすくできたらいいのですが…]
『……そうでしたか。売りに…って、私がかっこいい?!ど、どこがですか!…ちょっと待ってください?あなたはえっと、性別は?』
[女ですよ。]
『…』
あれ、幽霊なのに赤面した。
生きてるみたいな顔色になりましたよ?
『わ、私はかっこいいという存在ではないのです!ですから!除霊師でも呼んで追い出してくれてもっ。』
[嫌です。幽霊なのに感情豊かで、主人のことを思い続けているそんな優しい人は絶対に追い出したりしません。]
『……。』
涙が…幽霊さんが泣いてる。幽霊さんに触れたらいいのですが。
そっと手を伸ばして涙を拭うように…
『?!え…!!』
え。触れた?
というか、目を見開いて“私を”見ている?
『…貴女が透明人間ですか?』
あ、返事を書くため手を離さないと…
手が離れた瞬間、顔色を変える幽霊さん。
[見えたのですか?]
『はい、もう一度私に触れてください。』
…今度は肩に手をおく。
『やはり、触れていれば見えているようです。』
でも、大将さん達には触れても当たった感じしかしてない…はず。
[幽霊さん限定みたいです。他の方はダメでしたし…]
『……私だけ。』
[どうかしましたか?]
『……あの。ここの持ち主になるという件ですが、お願いします。私を貴女の下で雇ってください。給料は貴女といる時間でいいです。話し相手になってくれればそれで…』
[ありがとうございます。では早速、家主さんにお伝えして来ます!]
『っ!待ってください!私の名前はアルベルトと言います!アルとお呼びください!それとっ!』
へ?アルさん?に抱きしめられてる?!
『俺以外の男と仲良くしないでください。それと、声は出せれるのでしょう?私とだけの時は声を出して話してください。』
……ヤンデレ男が釣れたのですが…
は、返事を書かなくてはと一度離れてもらい、紙に書き込もうとしたら、手があるところを予測していたのか、そこに手を伸ばされ抑えられる。
『声…聞きたいです。紙はダメです。』
手をギュッとさせられた。
書けない。
詰みました!
「…わかりましたから。」
『自己紹介はまだでしたね。貴女のお名前は?』
「トーメイです。メイと呼ばれてます。」
『…さて、屋敷の説明に入ろうと思うのですが、お時間いいですか?』
「いや、あの、ここの家主が来ちゃうから先に買い取ってくるからだから待って…」
『………そうですね。邪魔が入るのは困ります。終わったら階段脇左側の部屋に来てください。いいですね?』
「は、はいっ。」
『いい子です。それと、私の名前は?』
「え。アルさ……アル!アルです!」
手を緩めて解放してくれ始めたのにまたギュッとしないで!
『いい子ですね。メイ、待ってますからね?』
「はいっ。」
ようやく解放される。
『ふふふ。行ってらっしゃい。』
「…いってきます。」
脱出に成功した。大将さん達が、女の人?と話している。鈴で知らせる。
『え!何!鈴の音?!』
『落ち着け、今話したメイだ。メイどうだった?』
[このお屋敷買いたいです。ですが本当に10万ガルドでいいのですか?]
『ほ、本当に透明なのね…。この屋敷は取り憑かれてるのよ?そっちこそ本当にいいの?!』
[アルさんはいい人ですよ?]
『…え。アル?』
[?もしかして知らなかったのですか?あそこに住み着いているのはアルさんです。貴女を死んでも守りたいと思い続け幽霊としてあそこに住み着いているのです。]
『…い、嫌。余計にいらないわ!は!あなたは女よね?貴女は大丈夫?!』
[え。]
『あの男は、病みすぎてヤバイのよ!本当に大丈夫?!』
あ、察し。
もう手遅れです。
『メイ…遅い。早くお金渡しておいで。…なんだ、居たのですか。元主人。』
『ヒッ。』
『『……。』』
おばあちゃん気絶なう。
それを支える大将さん引きつった顔で耐える。
元主人さん大将さんの後ろに隠れる。
アル、私の後ろにに立って元主人さん睨みつける。
カオス。
『メイ、お金出してください。地面に置いとけば勝手に回収します。ほら、行きますよ。』
[わかった。待って。]
『……。』
無言のプレッシャーぱない。2人っきりじゃないから声出せないよ?!
10万ガルドを地面において、アルの手を取る。
『消えた?!』
あ、やっぱりアルも透明化したことになるのか。
[大将さん、おばあちゃん、また明日顔出します。]
というメッセージつけてアルに手を引かれるまま屋敷に入る。
左側の部屋に入って、アルがズンズンと鏡の中にまで入ろうとする。
「っ?!ちょっと私通り抜けできな……あれ?」
抜けられた?
『あの鏡は私の魔法でゲートの役割をしているのです。行きたいところにすぐに行けます。メイ様も使えるようにしておきましたから存分に使ってください。さて、』
魔法…そういえばココゲームの中…
『まず、先ほどはすみません。私に怯えない人間は久々なもので。興奮してました。』
「あ、いや。うん。びっくりしたけど。大丈夫。」
『えっと、とりあえず、ここはメイ様のお屋敷になったのですが。改装しますか?どのように使用されたいので?』
「えっと、無人店舗にしたいの。私がいてもいなくても見えないから無人店舗となるのだけど。アルには、警備をお願いしたいかな。私はこの世界あまり詳しくないのだけど。他の異世界人が不正にアイテムを入手して来るかもしれないからそれを見つけたら追い出してほしい。」
『ふむ、それは構いませんが。私はものにさわれませんよ?』
「幻覚でおどかしていいよ。」
『それだけではさすがに…魔法の許可をしていただければ助かりますかね。』
「…魔法は使えるの?…もちろん許可するよ。ものは壊しちゃダメだよ?それと、改装というか、各階の部屋を1つにして各スキルで作ったアイテムを売れるようにしたいんだ。」
『ふむ、改装は任せてください。私がやっておきます。メイ様はどのようなスキルをお持ちで?』
「鍛治、裁縫、料理、調薬だよ。」
『それで4部屋ですね。それぞれ雰囲気あったお部屋にしておきましょう。それで…』
その後どこをどのスキルの店にするかを決めたり、鏡の使い方とか色々説明受けて、今いるこの部屋は鏡の中の部屋なので、私の部屋として使えばいいと言われた。ログアウトもここでできるようだ。
「この世界の中で、初めて目を見てお話しして楽しかった。ありがとう。アル。」
『っ!』
みんなやんわりな場所しか見ないからな。とても新鮮だ。
『……メイ様。いっそのこと守護霊なっていいですか?』
「ん?守護霊?なにそれ?」
『いつでもお側にいることができます。外に行く時も、戦う時も。私も魔法なら使えますから…』
いつでもお側に…ガーディアン=ストーカーだよね。
でも魔法使えるのか。
「何の魔法が使えるの?」
『基本属性は使えますよ。火、水、風、土、闇、光ですね。』
…え?
「最強じゃん。」
『いえいえ、魔法は最近使わないのでコントロールが危ういと思います。』
「私、魔法使えないから羨ましい。」
『…メイ様は戦闘スキルなにをお持ちで?』
「ん?剣。」
『他には?』
「持ってないよ。強いていうなら軽業?」
『……レベルは幾つですか?』
「9。」
『熟練度は…』
「9。」
『……。』
沈黙。
「…って何でそんな呆れ顔?」
『ありえないからです。異界人なら魔法1つぐらい持ちたがるでしょう。』
「生産スキル持ってないと詰むと思ったんだもん。透明人間だから。それに、呪文覚えきれないし。」
『…イメージすればいいだけですよ。』
「え。じゃあ、火の玉出すのも長い詠唱なんてないの?」
『ないです。』
「……とればよかった。」
『…ですが、そのおかげで、私は役立てそうです。守護霊認定してください。』
「えっと。」
ーーーゴースト・アルベルトが守護霊になりたそうにこちらを見ている!仲間にしてあげます?イエス・ノー ーーー
なにかな。この悪意ある表示。
イエスを押す。
ーーーゴースト・アルベルトが守護霊として認定されました。戦闘に参加できます。ーーー
『ありがとうございます。ですが、今日はお疲れでしょう。そろそろお休みになられては?明日までには改装は終了させておきますので。』
「え。無理しないでね。」
『~っ!はい。』
「じゃ、お休み。アル。」
『はい。』
ログアウトして、機械の電源を切り、携帯を開くと、着信がかなりきている。うざい。
また電話が来た。
「…はあ。何?雄二」
“やっと出た!今までプレイしてたのか!?ていうか、俺が案内するって言ったのに何で待ってくれてないの!!名前は?容姿は?どんなのにしたか教えて!”
「いやだ。」
“は?!なんで!!”
「だって、雄二とやっても楽しくない。」
もう、いい加減やめてほしい。おせっかいは。
“っ!1人でやるよりは楽しいに決まって…”
「…雄二が知らずのうちに私の楽しみを邪魔してるのいい加減気づいたら?」
“え?”
「だって、私、雄二に誘われたゲーム。一度も、自分の力でクリアしてないんだけど。わかってる?全部先にネタバレを雄二がして、全然達成感なんて感じられてない!私は、雄二のおもちゃじゃない!!」
“……。”
「…もう切る。じゃあね。」
“待った!…悪かった。本当に…頼むから。一緒にゲームやろ?VRなら、ネタバレなんかないし…スキルも自分で決めたものだろ?口出しもしない。だから…な?”
……口出しなんかしたら縁をきる。
「……わかった。でも、いい?私という存在は目立ちたくない。明日、一緒にゲームしてもいいけど、私についての情報を掲示板に書いたりしたら絶交だからね!」
“…わかった!わかったから!名前と、容姿を教えてくれ…”
「……容姿は明日会えばわかる。それと、縛りで話すことを縛ってからやってる。意思疎通は紙でやる。名前は…NPCからメイって呼ばれてる。守護霊目印に探して。ゴーストだから。」
“え?!縛りありなのか。それに、もう、守護霊契約したの?!しかもゴースト?!見たことない…。わかった。俺は金髪のツンツン頭で緑の目。アバター名はユウ…それじゃ広場で待ってる。”
「じゃ。」
プツ。
……嫌だなぁ…ソロ志望なのに騒がれると面倒だし…でも第一陣らしいからお客さんとしては利用してくれてもいいかも。宣伝はOKにしようかな。
とにかく、アルにお願いしてみないと。
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その能力に振り回されながらも孤児院が魔獣の到来によってなくなり、同じ孤児院育ちで幼馴染であるミクと共に旅に出ることにした。
魔法、スキルなんでもあるこの世界で今、孤児院で育った彼が個性豊かな仲間と共に最強へと成りあがる物語が今、幕を開ける。
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※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております
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