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春告鳥③

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 元旦は、母が心を込めて作ってくれたお雑煮をいただく。それは毎年のこと。
 父がいて、従業員の方がたくさん働いていてくれた頃から、ずっと変わらない。

 正月一日は、午後からは、本家にお年賀の挨拶に行くのも慣わしだった。
 今年も本家に挨拶に行き、帰ってきた時はもうすっかり暗くなっていた。

「お帰りなさいませ。お疲れでしょう、夕餉のお支度は済んでおりますからね。早速、ご用意いたしましょう」
 お留守番の婆やが出迎えてくれる。

 手伝うと言うと、
「いいえ、ゆっくりなさいませ。ご本家の皆様は、お変わりありませんでしたか?」
 などと答える婆やと玄関で話していると、「郵便です」と、表で声がする。
 郵便配達の人が、私宛の年賀状を届けてくれたのだ。

「どなたから?」
「藤崎頼子様からだわ!」
「いつもお世話になっている藤崎先生のお嬢様よね」
「ええ」

 口の中で「何かしら」と呟いて、早速お手紙を開いてみる。

「千代はご実家に帰ったかしら?」 
「はい。そりゃもう、嬉しそうに帰って行きました。三ヶ日は実家で過ごすそうで。お嬢様、居間でゆっくりお読みになられたらどうですか?」
「ほんとよ、文子さん、ここは寒いから早くお部屋に行きましょ」

 婆やと母に言われるが、手紙の中身が気になって。
「え? ああ、そうですわね。でも、お手紙を早く読みたくって」

「おひとりにしてさしあげましょうよ。お姉様、お先に」
「りっちゃん、そういえば、今西さんからのお手紙、おば様が預かってらしたわね?」

「ああ、おば様の検閲済みよ。お正月明けに、銀座千疋屋フルーツパーラーに行きませんか? っていうお誘い。お手紙を開く前に、おば様から教えられました」
「まあ! おば様ったら。ひどいわね」

 母と律子、婆やの三人の、笑いさざめく声を聞きながら、頼子さんからの手紙を読む。
 几帳面で流麗な文字で書かれた手紙は、ご自身の帰国と、近況を伝えてくれたものだった。
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