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冬のお別れ⑥
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「では。これで」
俯いて立ち上がった公威さんの態度が、些かそっけなく感じて、私は悲しくなった。
一体、この半年の不安感や、もやもやといったものは何だったのか。もちろん、心配したのは私の勝手と言われたらそれまで。
玄関で靴を履き、私たちのほうを振り返った公威さんは、無表情で何を考えているのか窺い知れない。
「実家の商売が続く限りは、ずっと細々とでも、ご縁はあると思います。今後ともよろしくお願いします」
お辞儀する公威さんに、母は何度も何度も頷いて、「こちらこそ、宜しくお願い申し上げます」と言った。
「では、文子さん。お元気で」
そう言って出て行こうとする公威さんを、私は思わず引き止める。
「あっ、待ってください。そこまでお送りします」
「いいえ、外はもう寒いですよ。ここで」
きっぱり言われた。
ピシャと玄関の引き戸が閉められ、私は呆けたように三和土に立っていた。
「お姉様、何してるの。早く追いかけて!」
律子の言葉で、は、と私は家から飛び出す。
ぼんやりしている場合じゃなかった。こんなお別れではいけない。
「公威様!」
ゆっくり歩いている公威さんの背中に叫んだところ、彼は立ち止まり振り向いた。引き留めてはみたものの、私は何を言えばいいのだろう。
「あの、公威様」
「文子さん、本当に申し訳ない。どれだけお詫びしても許されないでしょうね」
「いいえ、お詫びしてほしいんじゃないんです。私は、ずうっと公威さんをお待ちしますから」
「え?」
公威さんは戸惑っているが、今は構っていられない。
「私はまだ十八歳ですのよ。いくらでも待てます、今からだって学校に通えます、仕事も見つけます。ですから、待たせてください。公威さんは気になさらず、文子の好きなようにさせてください」
「驚いたな。文子さんがそんなに饒舌だとは」
公威さんは、やっと明るく笑ってくれた。
俯いて立ち上がった公威さんの態度が、些かそっけなく感じて、私は悲しくなった。
一体、この半年の不安感や、もやもやといったものは何だったのか。もちろん、心配したのは私の勝手と言われたらそれまで。
玄関で靴を履き、私たちのほうを振り返った公威さんは、無表情で何を考えているのか窺い知れない。
「実家の商売が続く限りは、ずっと細々とでも、ご縁はあると思います。今後ともよろしくお願いします」
お辞儀する公威さんに、母は何度も何度も頷いて、「こちらこそ、宜しくお願い申し上げます」と言った。
「では、文子さん。お元気で」
そう言って出て行こうとする公威さんを、私は思わず引き止める。
「あっ、待ってください。そこまでお送りします」
「いいえ、外はもう寒いですよ。ここで」
きっぱり言われた。
ピシャと玄関の引き戸が閉められ、私は呆けたように三和土に立っていた。
「お姉様、何してるの。早く追いかけて!」
律子の言葉で、は、と私は家から飛び出す。
ぼんやりしている場合じゃなかった。こんなお別れではいけない。
「公威様!」
ゆっくり歩いている公威さんの背中に叫んだところ、彼は立ち止まり振り向いた。引き留めてはみたものの、私は何を言えばいいのだろう。
「あの、公威様」
「文子さん、本当に申し訳ない。どれだけお詫びしても許されないでしょうね」
「いいえ、お詫びしてほしいんじゃないんです。私は、ずうっと公威さんをお待ちしますから」
「え?」
公威さんは戸惑っているが、今は構っていられない。
「私はまだ十八歳ですのよ。いくらでも待てます、今からだって学校に通えます、仕事も見つけます。ですから、待たせてください。公威さんは気になさらず、文子の好きなようにさせてください」
「驚いたな。文子さんがそんなに饒舌だとは」
公威さんは、やっと明るく笑ってくれた。
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