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新しい時代の仕事③

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 翌週、千代を連れて、藤崎先生と待ち合わせしている銀座の劇場に赴いた。そこは主に、活動寫眞映画を上映する劇場みたいだ。
 白い前掛けエプロンを付けた若い女の子たちが、入り口に立つ私たちの前を通り過ぎて行く。

「あの人たちが案内係ね、制服があるみたい」
 劇場の奥の方へ、赤い絨毯の上を笑いさざめきながら急ぎ足で行く彼女たち。
 見送る千代の顔には、自然と笑みが浮かんでいる。

 藤崎先生と私たちは劇場支配人に面会し、千代の採用は即決であった。
 夕方の短時間であるが、出来れば毎日来てほしい、と支配人さんから言われて、千代は私の顔を見る。

「千代の好きにしていいのよ。家のほうはなんとかなるし」
「いいんですか? ありがとうございます。頑張ります」

 千代の弾む声を聞くと、本当に外で働きたかったのだなあ、と微笑ましく思った。
 早速、その場で労働契約書も渡され、藤崎先生が保証人となって下さることも決まった。

「千代さんは、どうしてそんなに外で働きたいのですか?」
 藤崎先生に尋ねられた千代は、恥ずかしそうに答える。
「お金が欲しいんです」

 初耳だ。
「お金?」
「私に自由になるお金があれば、弟を上級学校にやれるかもしれないので」

 そういえば、以前もそんなことを言っていた。
「千代の弟さんは、とても頭の良いお子さんって言ってたわね」
「はい、弟は勉強が大好きなんです。だから、勉強させてやりたいなって」

 藤崎先生が目を細めて仰った。
「私に何かお手伝いできることがあれば、お手伝い致しましょう。未来のある若者は、色々な事を学んで、お国の為に働いてほしいものです」
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