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自由戀愛と結婚②

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「理事長先生、こんな記事を寄稿されてるのね……」
 理事長先生は敬虔なクリスチャンであり、女子教育に情熱を燃やす女性である。自由戀愛と自由結婚反対派だと若田先生は仰っていたが、本当だった。

「でも、何が何でも反対ってわけでもないようよ。親の管理下での戀愛なら問題ない、ってことだったわ。だから、お姉様と公威様の戀愛は問題なし! 今夜これを読んで、理事長先生に反論する準備をしておいたらどう?」

 “私と公威様の戀愛” という律子の言葉に、少しどきっとした。

「わかった、そうするわ。ありがとう。でも、りっちゃんが、この雑誌読んでるなんて珍しいわね。谷崎の小説でも載ってるの?」

「これはね、千代に特集記事を見せたくて買ったの。千代は外で働きたいの、何でもいいから外で仕事したいのよ。お姉様が女子職業学校で働き始めてから、そう思うようになったのよ。ね? 千代」

 律子に同意を求められた千代は、困ったように笑っている。
 雑誌の表紙には『婦人職業案内ごう』とあった。目次ペェジには、『私が現在の職業を得る迄』という太文字が印刷されている。

「千代は頭も良いし、何でも出来るじゃない? 今まで通りうちに居てもらって、少しの時間でも外で働いたらどうかしら?」

 律子が母のほうを向いて言うと、母は「うーん。そうね」と言ったきり黙ってしまった。

 その夜、母の部屋で床を延べる手伝いをしながら、私は母に尋ねてみた。
「お母様は、千代が外で働くことに反対なの?」
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