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来訪者②
しおりを挟む利晴様とは校長室の前の廊下で別れたが、どんなお話をされるのだろう。
彼のことが気になって落ち着かない午前中を過ごし、お昼は若田先生に誘われて、外でお弁当を食べることにした。
「文子さん、今日来られた新しい商議員候補の方って、文子さんと婚約していらした方なんですってね」
先生も、もうそこまでご存じなの!
「ごめんなさいね、興味津々で」
若田先生はバツが悪そうだ。
「いいえ。そんなことは」
「かなり長い時間、理事長先生や校長先生、それに藤崎先生とお話しされてたみたい」
藤崎先生は頼子さんのお父様で、私を学校に紹介して下さった先生だ。
四月からは、大学に移られるご予定である。
若田先生は、お弁当の包みの結び目を解いたり結んだりしている。
「あのね」
先生は言いにくそうに口を開いた。
「午後か、明日にでも理事長先生に呼び出されるかもしれないから、あなたにお伝えしないと、と思って」
若田先生の言葉に私は緊張する。
「私ね、お茶の替えをお出しに行ったの。お客様らしき方の『生徒さんたちに示しがつかないのではないですか?』って仰る声がして、藤崎先生が『それは言いがかりでは』と答えて。お二人とも興奮したような大声で、廊下まで丸聞こえだった。私はしばらく会話を立ち聞きしてしまったの、はしたないことだけど」
私は戸惑っていた。利晴様が仰った『示しがつかない』って、私に関係すること?
「元婚約者の方が運営に携わるようになったら、文子さんに何らかの影響もありそうよね」
言われてみればそうだ。
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