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来訪者①
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そんなことがあって後、公威さんから何度かご連絡があり、私と律子は彼に連れられ活動寫眞を観に行ったり、銀ブラを楽しんだりした。
一方で、私は相変わらず慣れない仕事にあたふたする毎日だったが、季節はそんな私を待ってはくれず、そろそろ弥生の終わり頃。
その日の朝も、私は学校の前に植えられている桜の蕾が膨らんでいないか、探しながら歩いていた。
風は少し暖かで、すれ違う人たちも桜の木を見上げている。
背広姿で学校の正門前に立つ人を見つけた私は、息が止まりそうになった。
「利晴様!」
「やあ、文子さん」
棒立ちになる私に、
「ご無沙汰しています。お元気そうで何より」
利晴様は笑顔で言うが、目は笑っていない気がした。
「その節は失礼いたしました。あの。申し訳ございませんでした」
頭を下げる私に、利晴様は声を張り上げる。
「今更謝られては困ります。もう終わったことだ、お顔を上げて下さい」
職員の方が次々に出勤して来られ、私はその都度挨拶するが、内心は身の置きどころがない思いで、早くここから立ち去りたかった。
「利晴様、今日は何の御用でいらしたのですか?」
「ご安心下さい。文子さんにじゃなくて、学校に用事があるんですよ」
「学校に?」
「学校は、たくさんの人が運営に関わっていますよね」
「はい」
何を仰るつもりだろう。
「今年の春から、私は商議員の仲間入りをすることになりました」
ということは、学校の経営に携わるということ?
「私のような若輩者に勤まるかどうか、今日とりあえず、理事長先生と校長先生にお会いするために来たのです」
「そうでしたか。それでは」
早くこの場を離れたい。私は急ぐ振りをした。
「待って下さい。どうせなら職員室まで案内して下さい」
利晴様の言葉に、私は自分の気の利かなさが恥ずかしくなる。
「そうですわね、失礼いたしました」
利晴様は鷹揚にうなずいて、私の後からついて来るが、私は何とも言えない居心地の悪さを感じた。
一方で、私は相変わらず慣れない仕事にあたふたする毎日だったが、季節はそんな私を待ってはくれず、そろそろ弥生の終わり頃。
その日の朝も、私は学校の前に植えられている桜の蕾が膨らんでいないか、探しながら歩いていた。
風は少し暖かで、すれ違う人たちも桜の木を見上げている。
背広姿で学校の正門前に立つ人を見つけた私は、息が止まりそうになった。
「利晴様!」
「やあ、文子さん」
棒立ちになる私に、
「ご無沙汰しています。お元気そうで何より」
利晴様は笑顔で言うが、目は笑っていない気がした。
「その節は失礼いたしました。あの。申し訳ございませんでした」
頭を下げる私に、利晴様は声を張り上げる。
「今更謝られては困ります。もう終わったことだ、お顔を上げて下さい」
職員の方が次々に出勤して来られ、私はその都度挨拶するが、内心は身の置きどころがない思いで、早くここから立ち去りたかった。
「利晴様、今日は何の御用でいらしたのですか?」
「ご安心下さい。文子さんにじゃなくて、学校に用事があるんですよ」
「学校に?」
「学校は、たくさんの人が運営に関わっていますよね」
「はい」
何を仰るつもりだろう。
「今年の春から、私は商議員の仲間入りをすることになりました」
ということは、学校の経営に携わるということ?
「私のような若輩者に勤まるかどうか、今日とりあえず、理事長先生と校長先生にお会いするために来たのです」
「そうでしたか。それでは」
早くこの場を離れたい。私は急ぐ振りをした。
「待って下さい。どうせなら職員室まで案内して下さい」
利晴様の言葉に、私は自分の気の利かなさが恥ずかしくなる。
「そうですわね、失礼いたしました」
利晴様は鷹揚にうなずいて、私の後からついて来るが、私は何とも言えない居心地の悪さを感じた。
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