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合原家からのお申し出

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「中田さんが仰るには、うちのお商売は、約束通り合原家が引き継いでくださるそうです。それ相応のお金をきちんと払います、今後我が家が暮らし向きに困ることがないように致します、と。但し、それには条件があって」

 母は一旦言葉を切った。それから声を震わせて言う。
「利晴様がご結婚されるまで、文子は結婚しないこと。今回の破談はうちからではなく、合原家からのお申し出によるもの、とはっきり書面に残すこと。そう仰ったわ」

 みんな、黙り込んでしまった。
 私は頭が真っ白だった。

「利晴様が結婚するまで、ということは、もう次のお嫁さんの当てがあるのかしら?」
 律子の問いに、母は首を傾げる。

「さあ? 中田さんが話している間、私は黙って頭を下げていただけだから、それ以上は何もわからないわ。でも、お返事は保留にしておきました。少し考えさせてください、って。さすがに理不尽すぎませんか? って言ったら、中田さんは驚いていらしたけど」

「奥様、ご本家に間に立っていただいて、きちんとお返事していただきましょう。文子お嬢様がしたことが気に入らないにしても、これはあまりに非道ひどすぎますよ」

 怒りが伝わってくるような婆やの口調に、私はハッと顔を上げた。
 この条件は、私に仕返しする目的だと気がついたのだ。

「ええ。もちろんよ。うちが女だけだからって、合原様は舐めてます」
 母は憤懣やる方ない、といった様子で、話すうちにどんどん怒りが増幅してきたようだった。

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