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邪悪な継母

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 そんな姫の姿は、北の方に突如として悪心あくしんを起こさせた。
 彼女は、備中守と二人きりになった際、このような『物の怪』が高貴な姫として、当たり前のように下にも置かぬような扱いなのはおかしいのではないか? と直言してみた。

 しかし、備中守にとっては異形といえど我が娘である。彼はむにゃむにゃと言葉を濁し、その場では取り合わなかった。
 それでも北の方が、姫の悪口を毎日飽きずに言い募っているうちに、彼は最初の頃と違って、彼女の言い分に少しずつ耳を傾けるようになってきた。

 丁度その頃、北の方は懐妊した。
 備中守の喜びようは、先の奥方が姫を身ごもった時ほどではなかったが、この腕に再び我が子を抱けると思うと、嬉しさは日毎に増してくるものであった。

 鉢かぶり姫も嬉しかった。
 北の方は未だ一度も、姫と口をきいてくれたことはなかった。それどころか、「あのような禍々しいまがまがしいを見せないでおくれ」と、使用人たちに命じていらっしゃる、と聞いた。

 でも、それでも、生まれてくる御子は、私にとっては『血の繋がったきょうだい』なのだから……と姫は嬉しく思っていたのである。
 やがて誕生したのは、女の赤ちゃんであった。

 備中守は、とても喜んだ。産後の北の方の見舞いに訪れ、嬉しげに赤子の顔を見た途端、彼は(おや?)という顔をした。
 備中守は鉢かぶり姫しか知らないので、生まれたての赤子とはこんな顔をしておったか? と素直に思っただけである。

 しかし、捻れたひねくれた性根の人間は何でも悪いように取るものだ。
 北の方は、
(この反応は! 私の娘を可愛くない、と残念に思ったに違いない。そしてそれは、あの異形の姫と比較して思ったのだわ)
 そう受け取ったのだ。

 北の方は決意した。
 自分の娘のため、ひいては自分たち親子のため、私こそが館のとして認められるよう、なんとしても鉢かぶり姫を排除しなくてはならない、と。

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