408 / 464
第九章 夏季休業
秘密は人より多く
しおりを挟む
「……今のは?」
ベルを抱え上げながらマリアがそう尋ねると、エーアリアスは顔を青ざめさせた。
「あっ、あれは……」
「あれは?」
「ひ、人に教えては駄目なやつなの。それどころか、人前で使ったことがバレたら怒られるの」
だから内緒にしておいてと、エーアリアスは涙目で頼む。
「えっ……」
泣くほどのことかと、マリアは困惑する。
「お父様は怒るととっても怖いの。お、お父様のお説教だけは絶対に嫌なの」
なおも震え声で言葉を続けるエーアリアスに、マリアは安心させるように微笑んだ。
「大丈夫だよ、言わないから。それに……何も知らない人間が、国王様に訊かれるようなことじゃないでしょう?」
その言葉にエーアリアスはハッとしたように顔を上げた。
「誰だって人には言えない秘密の1つや2つはあるんだよ? ……まあ私の場合はそれが5つも6つもあるんだけど……」
「6つって……多すぎなの」
「これでも昔は秘密なんてなかったんだけどね……」
いつからこんなに増えたんだろうと、マリアは苦笑いした。
「今さら秘密の1つや2つ、増えたところで何も変わらないよ」
だから気にするなと言外に告げた。
「……ありがとうなの」
エーアリアスにはそれが自分に気を使わせないための嘘なのか、それとも事実なのか判断がつかなかった。それでもマリアの気遣いが嬉しく、思わず笑みを溢した。
「良かった。やっと笑った」
「えっ?」
「さっきから全然笑っていなかったから……私と話すのは楽しくないのかなって、ちょっと心配だったんだ」
「そ、そんなことないの。暗い話題が多かったせいなの」
エーアリアスは必死に言葉を続ける。
「それに、歳の近い子となんの気兼ねもなく話すのは久しぶりだったからどう反応していいのかよくわからなかったの。お忍びで街に来ても誰も話しかけてはくれなかったから」
何が悪かったのかと、悲し気に呟いた。
「リアは……師匠ととてもよく似てる」
「師匠?」
「うん。私に自分1人でも生きられる力を与えてくれた師匠に、ローザさんに。ローザさんはリアみたいに、人に自分の気持ちを見せるのが苦手な人なんだよ。人にキツい言葉をついつい言っちゃうの」
でもとても優しい人なのだとマリアは笑った。
「リアも、もう少し自分に素直になってみたら? それだけでもだいぶ違うと思うよ。……急に変えようと思っても、そう簡単に変えられるようなものじゃないとは思うけど」
ベルを抱え上げながらマリアがそう尋ねると、エーアリアスは顔を青ざめさせた。
「あっ、あれは……」
「あれは?」
「ひ、人に教えては駄目なやつなの。それどころか、人前で使ったことがバレたら怒られるの」
だから内緒にしておいてと、エーアリアスは涙目で頼む。
「えっ……」
泣くほどのことかと、マリアは困惑する。
「お父様は怒るととっても怖いの。お、お父様のお説教だけは絶対に嫌なの」
なおも震え声で言葉を続けるエーアリアスに、マリアは安心させるように微笑んだ。
「大丈夫だよ、言わないから。それに……何も知らない人間が、国王様に訊かれるようなことじゃないでしょう?」
その言葉にエーアリアスはハッとしたように顔を上げた。
「誰だって人には言えない秘密の1つや2つはあるんだよ? ……まあ私の場合はそれが5つも6つもあるんだけど……」
「6つって……多すぎなの」
「これでも昔は秘密なんてなかったんだけどね……」
いつからこんなに増えたんだろうと、マリアは苦笑いした。
「今さら秘密の1つや2つ、増えたところで何も変わらないよ」
だから気にするなと言外に告げた。
「……ありがとうなの」
エーアリアスにはそれが自分に気を使わせないための嘘なのか、それとも事実なのか判断がつかなかった。それでもマリアの気遣いが嬉しく、思わず笑みを溢した。
「良かった。やっと笑った」
「えっ?」
「さっきから全然笑っていなかったから……私と話すのは楽しくないのかなって、ちょっと心配だったんだ」
「そ、そんなことないの。暗い話題が多かったせいなの」
エーアリアスは必死に言葉を続ける。
「それに、歳の近い子となんの気兼ねもなく話すのは久しぶりだったからどう反応していいのかよくわからなかったの。お忍びで街に来ても誰も話しかけてはくれなかったから」
何が悪かったのかと、悲し気に呟いた。
「リアは……師匠ととてもよく似てる」
「師匠?」
「うん。私に自分1人でも生きられる力を与えてくれた師匠に、ローザさんに。ローザさんはリアみたいに、人に自分の気持ちを見せるのが苦手な人なんだよ。人にキツい言葉をついつい言っちゃうの」
でもとても優しい人なのだとマリアは笑った。
「リアも、もう少し自分に素直になってみたら? それだけでもだいぶ違うと思うよ。……急に変えようと思っても、そう簡単に変えられるようなものじゃないとは思うけど」
0
お気に入りに追加
857
あなたにおすすめの小説
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
『伯爵令嬢 爆死する』
三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。
その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。
カクヨムでも公開しています。
前回は断頭台で首を落とされましたが、今回はお父様と協力して貴方達を断頭台に招待します。
夢見 歩
ファンタジー
長年、義母と義弟に虐げられた末に無実の罪で断頭台に立たされたステラ。
陛下は父親に「同じ子を持つ親としての最後の温情だ」と断頭台の刃を落とす合図を出すように命令を下した。
「お父様!助けてください!
私は決してネヴィルの名に恥じるような事はしておりません!
お父様ッ!!!!!」
ステラが断頭台の上でいくら泣き叫び、手を必死で伸ばしながら助けを求めても父親がステラを見ることは無かった。
ステラは断頭台の窪みに首を押さえつけられ、ステラの父親の上げた手が勢いよく振り下ろされると同時に頭上から鋭い刃によって首がはねられた。
しかし死んだはずのステラが目を開けると十歳まで時間が巻き戻っていて…?
娘と父親による人生のやり直しという名の復讐劇が今ここに始まる。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
全力で執筆中です!お気に入り登録して頂けるとやる気に繋がりますのでぜひよろしくお願いします( * ॑꒳ ॑*)
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
〖完結〗私が死ねばいいのですね。
藍川みいな
恋愛
侯爵令嬢に生まれた、クレア・コール。
両親が亡くなり、叔父の養子になった。叔父のカーターは、クレアを使用人のように使い、気に入らないと殴りつける。
それでも懸命に生きていたが、ある日濡れ衣を着せられ連行される。
冤罪で地下牢に入れられたクレアを、この国を影で牛耳るデリード公爵が訪ねて来て愛人になれと言って来た。
クレアは愛するホルス王子をずっと待っていた。彼以外のものになる気はない。愛人にはならないと断ったが、デリード公爵は諦めるつもりはなかった。処刑される前日にまた来ると言い残し、デリード公爵は去って行く。
そのことを知ったカーターは、クレアに毒を渡し、死んでくれと頼んで来た。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全21話で完結になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる