301 / 464
第七章 それぞれの過ごす日々
本探し
しおりを挟む
「『魔術の特殊属性』、これかな?」
マリアは首を傾げつつその本を取ろうとした。
「あっ、届かない……」
だがいかんせん背が足りず、必死に跳ねても手が届かない。
「……むぅ……ベル、取って」
仕方なく今日もさり気なく頭に乗っているベルに頼んだ。
「イヤッ!」
だが返ってきたのは拒否の言葉だった。
「えっ?なんでそんなこと言うの?」
「……ワタシ、コノフク、イヤ。フツウ、イイ」
本日のベルの服装はマリアが半分悪乗りして作ったメイド服(ロングスカート、要所要所に花の刺繍入り)だった。どうも本人(?)はお気に召していないらしい。
「え~、可愛いのに」
「……」
ベルは無言でその小さな手でポカポカとマリアの頭を叩いた。終いには足でゲシゲシと蹴りつけ始める。
「わかった。わかったから止めて」
蔓が飛んでくる直前でようやくマリアが白旗を上げた。
「……でもそんなに嫌だったの?」
「イヤッ」
「……」
間髪入れずに断言され、マリアは少なからず精神的ダメージを受けた。
「……」
ベルもかける言葉が見つからず、黙って言われた本を取った。
「……ベル、ありがとう」
少し疲れたような表情で本を受け取ると、黙ってページを繰った。
「……『特殊属性、それはすなわち古より生きし龍らが操りし魔術属性である』……ってことはこれは外れかな?」
何となく内容は気になったのでさらに読み進めていく。雷や空間といった、何かに特化したものから神成や神霊といった名前からは詳細がよくわからないものまで様々な名が並んでいる。その中にひと際物騒な名が書かれていた。
∽†∽
『死属性』
特殊属性は強力な属性が数多く存在するが、その中でも特筆すべきはかつて存在したという至極色の龍が操ったという死属性であろう。この龍はもはや長命な龍たちの中でも昔話で語り継がれているだけである。それによれば今まで1頭しか存在していないのだという。
死属性、それはその名の通り死を運ぶ魔術属性である。その魔術のどれもが瞬時に生きとし生けるものの生を奪ったことから付いた名だ。死属性の龍が1頭しか存在しないということは、すなわちその親は他の普通龍ということになる。それは新たな死属性を持つ龍が生まれる可能性を示唆する。かつてこの龍は温厚で、その力を他のためにしか振るわなかったというが、第二、第三の死属性の龍が生まれた時その力が我々に向かわないとは限らない。願わくはその力を持つ者が生まれんことを。
∽†∽
「……何これ、怖い」
読み終わったところで思わずそう呟いた。
「……関係なさそうだし、次の本を探そうか?」
それ以上は読む気になれずベルに頼んで元の位置に戻してもらった。
ベルはマリアから普通の服を作ってもらう約束を取りつけご機嫌だった。
若干顔を青ざめさせたマリアと上機嫌なベル。傍から見ればベルがマリアに脅しをかけたようにしか見えなかった。
マリアは首を傾げつつその本を取ろうとした。
「あっ、届かない……」
だがいかんせん背が足りず、必死に跳ねても手が届かない。
「……むぅ……ベル、取って」
仕方なく今日もさり気なく頭に乗っているベルに頼んだ。
「イヤッ!」
だが返ってきたのは拒否の言葉だった。
「えっ?なんでそんなこと言うの?」
「……ワタシ、コノフク、イヤ。フツウ、イイ」
本日のベルの服装はマリアが半分悪乗りして作ったメイド服(ロングスカート、要所要所に花の刺繍入り)だった。どうも本人(?)はお気に召していないらしい。
「え~、可愛いのに」
「……」
ベルは無言でその小さな手でポカポカとマリアの頭を叩いた。終いには足でゲシゲシと蹴りつけ始める。
「わかった。わかったから止めて」
蔓が飛んでくる直前でようやくマリアが白旗を上げた。
「……でもそんなに嫌だったの?」
「イヤッ」
「……」
間髪入れずに断言され、マリアは少なからず精神的ダメージを受けた。
「……」
ベルもかける言葉が見つからず、黙って言われた本を取った。
「……ベル、ありがとう」
少し疲れたような表情で本を受け取ると、黙ってページを繰った。
「……『特殊属性、それはすなわち古より生きし龍らが操りし魔術属性である』……ってことはこれは外れかな?」
何となく内容は気になったのでさらに読み進めていく。雷や空間といった、何かに特化したものから神成や神霊といった名前からは詳細がよくわからないものまで様々な名が並んでいる。その中にひと際物騒な名が書かれていた。
∽†∽
『死属性』
特殊属性は強力な属性が数多く存在するが、その中でも特筆すべきはかつて存在したという至極色の龍が操ったという死属性であろう。この龍はもはや長命な龍たちの中でも昔話で語り継がれているだけである。それによれば今まで1頭しか存在していないのだという。
死属性、それはその名の通り死を運ぶ魔術属性である。その魔術のどれもが瞬時に生きとし生けるものの生を奪ったことから付いた名だ。死属性の龍が1頭しか存在しないということは、すなわちその親は他の普通龍ということになる。それは新たな死属性を持つ龍が生まれる可能性を示唆する。かつてこの龍は温厚で、その力を他のためにしか振るわなかったというが、第二、第三の死属性の龍が生まれた時その力が我々に向かわないとは限らない。願わくはその力を持つ者が生まれんことを。
∽†∽
「……何これ、怖い」
読み終わったところで思わずそう呟いた。
「……関係なさそうだし、次の本を探そうか?」
それ以上は読む気になれずベルに頼んで元の位置に戻してもらった。
ベルはマリアから普通の服を作ってもらう約束を取りつけご機嫌だった。
若干顔を青ざめさせたマリアと上機嫌なベル。傍から見ればベルがマリアに脅しをかけたようにしか見えなかった。
0
お気に入りに追加
856
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたので、論破して旅に出させて頂きます!
桜アリス
ファンタジー
婚約破棄された公爵令嬢。
令嬢の名はローザリン・ダリア・フォールトア。
婚約破棄をした男は、この国の第一王子である、アレクサンドル・ピアニー・サラティア。
なんでも好きな人ができ、その人を私がいじめたのだという。
はぁ?何をふざけたことをおっしゃられますの?
たたき潰してさしあげますわ!
そして、その後は冒険者になっていろんな国へ旅に出させて頂きます!
※恋愛要素、ざまぁ?、冒険要素あります。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
文章力が、無いのでくどくて、おかしいところが多いかもしれません( ̄▽ ̄;)
ご注意ください。m(_ _)m
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】徒花の王妃
つくも茄子
ファンタジー
その日、王妃は王都を去った。
何故か勝手についてきた宰相と共に。今は亡き、王国の最後の王女。そして今また滅びゆく国の最後の王妃となった彼女の胸の内は誰にも分からない。亡命した先で名前と身分を変えたテレジア王女。テレサとなった彼女を知る数少ない宰相。国のために生きた王妃の物語が今始まる。
「婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?」の王妃の物語。単体で読めます。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
私のお父様とパパ様
棗
ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。
婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。
大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。
※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。
追記(2021/10/7)
お茶会の後を追加します。
更に追記(2022/3/9)
連載として再開します。
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
転生調理令嬢は諦めることを知らない
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。
追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。
2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。
リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる