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第七章 それぞれの過ごす日々

本探し

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「『魔術の特殊属性』、これかな?」

 マリアは首を傾げつつその本を取ろうとした。

「あっ、届かない……」

 だがいかんせん背が足りず、必死に跳ねても手が届かない。

「……むぅ……ベル、取って」

 仕方なく今日もさり気なく頭に乗っているベルに頼んだ。

「イヤッ!」

 だが返ってきたのは拒否の言葉だった。

「えっ?なんでそんなこと言うの?」
「……ワタシ、コノフク、イヤ。フツウ、イイ」

 本日のベルの服装はマリアが半分悪乗りして作ったメイド服(ロングスカート、要所要所に花の刺繍入り)だった。どうも本人(?)はお気に召していないらしい。

「え~、可愛いのに」
「……」

 ベルは無言でその小さな手でポカポカとマリアの頭を叩いた。終いには足でゲシゲシと蹴りつけ始める。

「わかった。わかったから止めて」

 蔓が飛んでくる直前でようやくマリアが白旗を上げた。

「……でもそんなに嫌だったの?」
「イヤッ」
「……」

 間髪入れずに断言され、マリアは少なからず精神的ダメージを受けた。

「……」

 ベルもかける言葉が見つからず、黙って言われた本を取った。

「……ベル、ありがとう」

 少し疲れたような表情で本を受け取ると、黙ってページを繰った。

「……『特殊属性、それはすなわちいにしえより生きし龍らが操りし魔術属性である』……ってことはこれは外れかな?」

 何となく内容は気になったのでさらに読み進めていく。雷や空間といった、何かに特化したものから神成や神霊といった名前からは詳細がよくわからないものまで様々な名が並んでいる。その中にひと際物騒な名が書かれていた。

∽†∽

『死属性』
 特殊属性は強力な属性が数多く存在するが、その中でも特筆すべきはかつて存在したという至極色の龍が操ったという死属性であろう。この龍はもはや長命な龍たちの中でも昔話で語り継がれているだけである。それによれば今まで1頭しか存在していないのだという。
 死属性、それはその名の通り死を運ぶ魔術属性である。その魔術のどれもが瞬時に生きとし生けるものの生を奪ったことから付いた名だ。死属性の龍が1頭しか存在しないということは、すなわちその親は他の普通龍ということになる。それは新たな死属性を持つ龍が生まれる可能性を示唆する。かつてこの龍は温厚で、その力を他のためにしか振るわなかったというが、第二、第三の死属性の龍が生まれた時その力が我々に向かわないとは限らない。願わくはその力を持つ者が生まれんことを。

∽†∽

「……何これ、怖い」

 読み終わったところで思わずそう呟いた。

「……関係なさそうだし、次の本を探そうか?」

 それ以上は読む気になれずベルに頼んで元の位置に戻してもらった。
 ベルはマリアから普通の服を作ってもらう約束を取りつけご機嫌だった。
 若干顔を青ざめさせたマリアと上機嫌なベル。傍から見ればベルがマリアに脅しをかけたようにしか見えなかった。
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