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第七章 それぞれの過ごす日々

グランファルト子爵家の改革(5)

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「なっ、何を!?ぐわっ!」
「ご乱し……がはっ!」
「きゃあっ!」

 空を人が舞っていた。

「『風よ、吹っ飛ばしちゃえ《暴風》』」

 先ほどからその原因を作っている人物はノリノリだった。

「兄貴、こぇ~」
「あっ、コントロール誤っちゃった。ごめんね」

 思わず本音が出たアーノルドまで使用人と一緒にガルティスの風に吹っ飛ばされていた。

「……仲間割れは程々にしておけよ」

 ギルゲルムは止めるでもなく静観を決め込んでいた。ガルティスが吹っ飛ばしていった使用人を次から次へと縛り上げていく。

 結局10分もかからずに邸内にいた使用人は全員3人に捕まった。

「よし、これで大丈夫だ」

 縛った使用人を一室に集めると、ギルゲルムは満足気に頷いた。

「後は手はず通りに頼むぞ」
「「了解」」

 3人は計画通りにそれぞれの行動に移した。長男ギルゲルムは王城へ、次男ガルティスは王都内のとある家へ、そして三男アーノルドは馬を駆って王都の外へと。

「……ここか」

 ガルティスの目の前にはみすぼらしい、それこそ小屋、それも廃屋と言っても良いぐらいの家が建っていた。今にも壊れそうで、ガルティスはドアをノックすることすら躊躇した。

「すいませ~ん!」

 結局大声で中にいるであろう人物に呼びかけた。

「何じゃい!?うるさいじゃないか!?おちおち寝てもおれん」

 怒りながら出てきたのは初老の男性だった。

「……ガルティ坊か?」

 老人はガルティスの姿を見とめると、信じられないものを見たように呟いた。

「はい。お久しぶりです」

 22になっても坊と呼ばれたことに苦笑しながらガルティスは微笑んだ。

「……今さらこのような老いぼれに何の用じゃ?」

 老人の瞳の奥にはほんの少しの警戒とガルティスに再び会えたことに対する喜びがあった。

「……少し父上のことでお話が」

 ガルティスが柔和な笑みを浮かべると、老人の警戒は強まった。

「……あの愚か者が今さら儂に何の用じゃ?」

 今やその目は警戒で満ちていた。

「……誤解しないでいただきたい。レーリル、あなたに用があるのは父上ではなく私たち兄弟なのだから。寧ろ父上は私がここにいることすら知らない」
「……あのようなことがあった後で今さらその言葉を信用しろというのか?」

 その言葉には一抹の悲しみが滲み出ていた。

「それは……」

 ガルティスは老人──レーリルがここまで頑ななのは予想外だった。それでもここで引き下がるわけにはいかなかった。

「それはあのことは私もこちらに全て非があると思っています」

 だからこそ非を全面的に受け入れた。

「……ほぅ。それで謝罪してそれで終了じゃろう?お前たちが使いそうな手じゃ。謝罪をするならばせめてあやつ本人を連れてこい」

 レーリルは嘲るように笑った。それがガルティスには昔のレーリルと中身が変わってしまったようで、否、過去の自分たちの行いを思い知らされるようで悲しかった。あの何にも知らなかった幼き日のことを。

「……父上、いえ、あいつに復讐、したくありませんか?」

 ガルティスはレーリルへの切り札を1枚切った。
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