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第七章 それぞれの過ごす日々

マリアの1日(6)

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 それからおよそ1時間後、マリアは幻想の森の入口にいた。

「ここが幻想の森か。……なんか普通の森だね」

 それがマリアが幻想の森を見て最初に言った言葉だった。

「ブルル《それは人間がつけただけで、普通の森だっておじじが言ってたよ》」
「……そうなんだ」

 ちょっとがっかりしながらも、雪風に礼を言って送還した。

「……とりあえずアルラウネを探すか」

 気を取り直して森に再び向き直る。

「ん~、使えるかな?『汝は地であり、空である。何人も汝を阻むことは叶わず。我に彼の者らの場所を指し示せ、《レーダー》』」

 マリアから魔力が放射状に放出される。ただその濃度はとても均等とは言えず、それでは正確な距離まではわからない。

「……まだ難しいか」

 それでも距離はともかく方角はわかった。

「あっちに丁度それっぽいのが10体いるね。正解だと良いんだけど……」

 マリアは慎重に歩を進めた。

 歩くこと10分ちょっと、その途中でもC、Dランクの魔物が襲い掛かってきたが難なく撃退し、とりあえずそのままアイテムポーチに突っ込んでいた。

「多分この辺だと思うんだけど……」

 いくら正確な距離がわからないとは言っても、ある程度予想はつく。

「あっ、あれかな?」

 森の中の少し開けた場所、そこには通常よりも一回り以上大きな花の蕾が10個ほど並んでいた。
 アルラウネ自体の戦闘能力自体はそこまで高くない。だがBランクという高ランクに属するのはひとえにその擬態の巧妙さにあった。

「……こうして見るとホント、少し大きな花の蕾にしか見えない」

 マリアも、この辺りにいるのがわかっていなければ素通りしていたかもしれない。

「……とりあえず先手必勝ってことで、『火よ、汝は紅蓮の炎の渦、全てを燃やし尽くせ、《ファイアー・トルネード》』」

 普段から料理に魔術を多用するマリア。中でも一番使用頻度が高い火属性は今ではマリアの得意技になっていた。他の属性で安定して使用できるのが精々初級、どうにか使えるかもしれないレベルの中級までなのに対し、火属性は中級は安定して使え、上級も完璧とまでは行かずとも、5割以上の確率で実践に耐えうるレベルで使用できると言えばわかりやすいかもしれない。
 そんなマリアが使った火属性の中級魔術は見事なまでのコントロールがされ、周りの木々に一切燃え移らせることがなくアルラウネだけを襲った。

グギャァァッ!

 苦悶の声を上げながらアルラウネは燃え上がった。

「消火はちゃんとしなくちゃね。『《ウォーターボール》』」

 森に燃え移る前に火を消す。流石にマリアにも延焼は防げない。

 完全に火が消えると、そこには焼け焦げ動かないアルラウネが残されていた。

「ん~、ちょっと火力が強かったかな?」

 マリアは反省しながらアルラウネに近づいていった。
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