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第七章 それぞれの過ごす日々

マリアの1日(4)

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 マリアは上に戻ってくると再び依頼を見始めた。

「う~ん、良いのないな~」

 Bランク依頼を見ながら文句を言う姿に突っ込みが入った。

「マリアちゃんぐらい実力があればそれぐらい簡単にこなせるだろ?」
「いや、そうなんですけど面白そうなのがなくて……」
「依頼を選ぶ基準が面白いかどうかなのかよ……」
「え、でもつまらないよりは楽しい方が良いですよ?」
「……言いたいのはそこじゃねぇぞ」

 声をかけたギルガルドは呆れた目でマリアを見た。

「面白そうなのって、全部Aランク以上なんですよね。私一人じゃまだ受けられないし……」
「ちょっと待てよ……普通にスルーしていたが一体いつの間にCランクになったんだ?」
「えっと、この前ウルフをちょっと多めに倒した時……」
「……あの時か。……って、千単位はちょっととは言わねぇって、この前言っただろうが!?」

 マリアの価値観は未だに治っていなかった。

「あれ?そうでしたっけ?」

 その頃になってようやく先ほどの男は意識を取り戻し、上に戻ってきた。他の者たちはマリアと一緒に戻ってきており、演習場に男だけが1人放置されていた。
 別に酷い扱いというわけではない。負けた相手は放置、それが普通だった。むしろ今回の治療まで施してくれたことの方が破格だと言える。
 男はギルガルドと話しているマリアを見つけ、ギョッとした顔をした後、コソコソとギルドから出ていこうとした。

「あん?どこに行こうとしてんだ!?出ていきたいなら払うもん払って行け!……マリアちゃんにな」

 人数は少ないとはいえ、ギルドの入口を塞げるくらいは人がいた。そして冒険者たちにとって分け隔てなく会話してくれるマリアは可愛い娘のようなものだった。……ただし一部の素行の悪いものにとっては恐怖の象徴だが。
 男はその威圧感に後退ったが──。

「あれ?おじさんどこに行くの?約束は守ってもらうよ?」

 いつの間にか後ろには笑顔を浮かべてはいるが、まったく目が笑っていないマリアが立っていた。

「ヒッ!?」

 男は必死に逃げ場を探した。
 前は冒険者たちに囲まれ、後ろはマリアが控えている。左右に逃げようにもギルドは広いといっても所詮は建物。時期に捕まるのが目に見えていた。
 男は観念してお金の入った袋を取り出した。

「こ、これで手持ちは全部だ!」

 マリアが中を確認すれば大銀貨数枚分しか入っていなかった。

「本当にこれだけ?いやに少ないんだけど……」
「ほ、本当だ!信じてくれ!」
「ふぅん。まぁ良いけど」

 マリアは興味がなさそうに袋をアイテムポーチにしまった。そしてついでとばかりに追い打ちをかける。

「私に負けるぐらいだったら冒険者なんて辞めちゃえば?私の実力は大したことがないんでしょう?……それに私、近接戦闘はあまり得意じゃないんだよね」

 あれで得意じゃないのかと、その場にいた者全員が思った。
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