232 / 464
第七章 それぞれの過ごす日々
決めること
しおりを挟む
ギルドから学園への道で不意にマリアが尋ねた。
「帰ってきたのは良いけど、今更だけどグレンはどうする?」
「?どうするって、何がだ?」
グレンは心底不思議そうに首を傾げた。
「えっ、だってリオは学園に入ることは決まってるでしょ?グレンはどうするのかなって」
マリアは当然のことのように言った。
「……いまさらだけど、学園ってそう簡単に入れるの?」
グレンではなくリオナが心配そうに呟いた。
「大丈夫!国王様の推薦をもらってくるから、アルが……」
どこまでも他人の力頼みのマリアだった。
「……アルも大変だね。あれ?それじゃあアリアさんだっけ?はどうするの?」
「王妃様の推薦もらってきます。……アルが」
「……そうだと思ったよ」
リオナは疲れたように言った。
この学園の推薦システム、貴族なら親に推薦してもらえば良いと思うかもしれないが、一定の財力がある者は利用できない。一応下級貴族の中の一部のものなら利用できるが、貴族としての面子からそのようなことをする者はいない。
「本当はエリザの両親とかでも十分なんだけどね。……上級貴族が何か言ってきそうな気がするから念のため、ね」
「ちゃんと理由があったんだね……」
「ちょっとリオ!私をなんだと思っているのよ!?」
じゃれあう2人を楽し気に眺める年長者3人と、いつの間にか話から弾き出され呆然とするグレンだった。
「……僕のこと忘れるなよ」
そんなグレンの肩をアーティスは優しく叩いた。
「気にするな。気にしちゃ駄目だ。僕なんて最初から忘れられていることが多いんだぞ。それに比べたら君はマシじゃないか」
慰めているアーティスの方が目が潤んでいた。
「……お前も苦労してるんだな」
グレンはアーティスに心から同情した。そして皆が忘れていても自分が気にしておこうと決めた。
「学園に来るんだったら別に入学しなければならないわけじゃないぞ」
「?どういうことだ?」
「学園の寮には1人1人ずつ身のまわりのことをする使用人を連れていけるんだよ。僕は四男だし、そういうのは面倒くさいから連れてきてないんだけどね。もしグレンが良ければだけどどうだ?」
アーティスは期待を込めた目でグレンを見た。
「……そうだな。それが一番かもしれないな。勉強なんて今更だしな」
「……今更って、そんなこと言うもんじゃないよ」
「いや、だって勉強は里にいた頃に長老たちに200年ぐらい教わったし……」
自然と出てきた数字にアーティスは耳を疑った。
「200年って、グレン君歳はいくつだい?」
「う~んと、1000歳ちょっとだな」
その数字にアーティスは固まった。
そばでは未だにマリアとリオナがじゃれていた。
結局グレンの扱いはどうするかはグレンとアーティスの希望通りになった。
「……今回の依頼は長期間かかったし、明日からしばらく休みにしない?リオも学園に慣れるのが大変だろうし」
「そうね。思い切って1月ぐらいどう?勿論その間個人で依頼を受けるのは自由で」
「それが良いかもな。だれか反対意見はあるか?」
皆黙って首を横に振った。
「……最後に1つだけ。冒険者の方が休みとはいえ、学園の授業はあるからな。以上、解散」
気づけば学園の門の前まできていた。アルフォードは城の方に、アーティスは男子寮の方に、グレンもアーティスにくっついていった。
「リオは今日は私たちのどっちかの部屋に泊まることになるんだけど、どっちが良い?」
「う~ん、どっちかっていうとマリアかな?」
3人は仲良く連れ立って歩き出した。
「帰ってきたのは良いけど、今更だけどグレンはどうする?」
「?どうするって、何がだ?」
グレンは心底不思議そうに首を傾げた。
「えっ、だってリオは学園に入ることは決まってるでしょ?グレンはどうするのかなって」
マリアは当然のことのように言った。
「……いまさらだけど、学園ってそう簡単に入れるの?」
グレンではなくリオナが心配そうに呟いた。
「大丈夫!国王様の推薦をもらってくるから、アルが……」
どこまでも他人の力頼みのマリアだった。
「……アルも大変だね。あれ?それじゃあアリアさんだっけ?はどうするの?」
「王妃様の推薦もらってきます。……アルが」
「……そうだと思ったよ」
リオナは疲れたように言った。
この学園の推薦システム、貴族なら親に推薦してもらえば良いと思うかもしれないが、一定の財力がある者は利用できない。一応下級貴族の中の一部のものなら利用できるが、貴族としての面子からそのようなことをする者はいない。
「本当はエリザの両親とかでも十分なんだけどね。……上級貴族が何か言ってきそうな気がするから念のため、ね」
「ちゃんと理由があったんだね……」
「ちょっとリオ!私をなんだと思っているのよ!?」
じゃれあう2人を楽し気に眺める年長者3人と、いつの間にか話から弾き出され呆然とするグレンだった。
「……僕のこと忘れるなよ」
そんなグレンの肩をアーティスは優しく叩いた。
「気にするな。気にしちゃ駄目だ。僕なんて最初から忘れられていることが多いんだぞ。それに比べたら君はマシじゃないか」
慰めているアーティスの方が目が潤んでいた。
「……お前も苦労してるんだな」
グレンはアーティスに心から同情した。そして皆が忘れていても自分が気にしておこうと決めた。
「学園に来るんだったら別に入学しなければならないわけじゃないぞ」
「?どういうことだ?」
「学園の寮には1人1人ずつ身のまわりのことをする使用人を連れていけるんだよ。僕は四男だし、そういうのは面倒くさいから連れてきてないんだけどね。もしグレンが良ければだけどどうだ?」
アーティスは期待を込めた目でグレンを見た。
「……そうだな。それが一番かもしれないな。勉強なんて今更だしな」
「……今更って、そんなこと言うもんじゃないよ」
「いや、だって勉強は里にいた頃に長老たちに200年ぐらい教わったし……」
自然と出てきた数字にアーティスは耳を疑った。
「200年って、グレン君歳はいくつだい?」
「う~んと、1000歳ちょっとだな」
その数字にアーティスは固まった。
そばでは未だにマリアとリオナがじゃれていた。
結局グレンの扱いはどうするかはグレンとアーティスの希望通りになった。
「……今回の依頼は長期間かかったし、明日からしばらく休みにしない?リオも学園に慣れるのが大変だろうし」
「そうね。思い切って1月ぐらいどう?勿論その間個人で依頼を受けるのは自由で」
「それが良いかもな。だれか反対意見はあるか?」
皆黙って首を横に振った。
「……最後に1つだけ。冒険者の方が休みとはいえ、学園の授業はあるからな。以上、解散」
気づけば学園の門の前まできていた。アルフォードは城の方に、アーティスは男子寮の方に、グレンもアーティスにくっついていった。
「リオは今日は私たちのどっちかの部屋に泊まることになるんだけど、どっちが良い?」
「う~ん、どっちかっていうとマリアかな?」
3人は仲良く連れ立って歩き出した。
0
お気に入りに追加
856
あなたにおすすめの小説
前世の記憶さん。こんにちは。
満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。
周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。
主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。
恋愛は当分先に入れる予定です。
主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです!
小説になろう様にも掲載しています。
婚約破棄されたので、論破して旅に出させて頂きます!
桜アリス
ファンタジー
婚約破棄された公爵令嬢。
令嬢の名はローザリン・ダリア・フォールトア。
婚約破棄をした男は、この国の第一王子である、アレクサンドル・ピアニー・サラティア。
なんでも好きな人ができ、その人を私がいじめたのだという。
はぁ?何をふざけたことをおっしゃられますの?
たたき潰してさしあげますわ!
そして、その後は冒険者になっていろんな国へ旅に出させて頂きます!
※恋愛要素、ざまぁ?、冒険要素あります。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
文章力が、無いのでくどくて、おかしいところが多いかもしれません( ̄▽ ̄;)
ご注意ください。m(_ _)m
ダブル魔眼の最強術師 ~前世は散々でしたが、せっかく転生したので今度は最高の人生を目指します!~
雪華慧太
ファンタジー
理不尽なイジメが原因で引きこもっていた俺は、よりにもよって自分の誕生日にあっけなく人生を終えた。魂になった俺は、そこで助けた少女の力で不思議な瞳と前世の記憶を持って異世界に転生する。聖女で超絶美人の母親とエルフの魔法教師! アニメ顔負けの世界の中で今度こそ気楽な学園ライフを送れるかと思いきや、傲慢貴族の息子と戦うことになって……。
【完結】徒花の王妃
つくも茄子
ファンタジー
その日、王妃は王都を去った。
何故か勝手についてきた宰相と共に。今は亡き、王国の最後の王女。そして今また滅びゆく国の最後の王妃となった彼女の胸の内は誰にも分からない。亡命した先で名前と身分を変えたテレジア王女。テレサとなった彼女を知る数少ない宰相。国のために生きた王妃の物語が今始まる。
「婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?」の王妃の物語。単体で読めます。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
転生調理令嬢は諦めることを知らない
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。
追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。
2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる