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第一章 入学と第二王子
第二王子(2)
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マリアたちがいつものように授業を受けているといきなり教室のドアが開いた。
「えっ?」
「マリアとかいう平民はどいつだ?」
いきなり現れた青年は教室を見回すとそう聞いた。
勿論この青年は第二王子、ランフォードである。
ただ、誰もその質問に答えず、教室は静寂に包まれた。
「聞こえなかったのか? マリアはどいつだ」
機嫌が更に悪くなったのか苛立たし気に繰り返した。
「そ、そいつです」
クラスメートの一人が声を震わせながらマリアを指した。
「お前がマリアか。一体どんな手を使った!」
ランフォードはマリアの前まで来るとそう言ったが、マリアは突然のことに唖然としており、固まっていた。
「答えろ! どんな手を使ったのかと聞いているのだ!」
教室内の人間はその様子をある者は面白そうに、ある者は顔を真っ青にして見守っていた。
再度怒鳴られたことでマリアはようやく復帰した。
「ど、どんな手って一体何のことですか?」
「とぼけるんじゃない!」
「そ、そんなことを言われても本当に何のことかわからないです」
マリアは涙目になっていた。
マリアが何のことかわからないのは本当のことだ。ランフォードは気づいていないようだが、マリアには名乗っていない。無論、平民であるマリアが第二王子の顔を知っているわけがないのだ。マリアは大体正体が想像できたが、確信できるほどではなかった。
そもそもの前提条件として、この件の黒幕が第二王子だと知っていなければならないということもある。平民のマリアが知りえるはずがないのだが、そのことにも気づいていない。
「そもそもあなたはどなたです?」
マリアに聞かれてやっと自分が名乗っていないことに気がついたようだ。
「私はこの国の第二王子、ランフォード・エルドラントだ」
自分の名前と顔を知らないのが可笑しいと言わんばかりのドヤ顔だ。
「それで、その第二王子様が高々一庶民である私に一体何の用です? 先ほど質問された内容に心当たりはおろか、第二王子様が尋ねて来ることが思い当たらないのですが……」
第二王子と言われたことで少し動揺したが、それだけだった。
「そ、それは……」
ようやく前提条件が当てはまらないことに気づいたランフォードは言葉に詰まった。
「用がないのでしたら教室から出て行って貰えますか? 授業中ですので」
成行きを見守っていたパトリオットに言われ、ランフォードは舌打ちをすると教室から出て行った。
「うちの王子がすみません」
ランフォードの執事であろう初老の男性が頭を下げるとランフォードを追いかけて行った。その時にアルフォードを見て僅かだが驚いた顔をしていたがそのことに気づいたのはアルフォードとマリアだけだった。
ランフォードが去ると、何事もなかったように授業は再開された。
☆★☆★☆
次回更新は9月上旬以降になると思います。
「えっ?」
「マリアとかいう平民はどいつだ?」
いきなり現れた青年は教室を見回すとそう聞いた。
勿論この青年は第二王子、ランフォードである。
ただ、誰もその質問に答えず、教室は静寂に包まれた。
「聞こえなかったのか? マリアはどいつだ」
機嫌が更に悪くなったのか苛立たし気に繰り返した。
「そ、そいつです」
クラスメートの一人が声を震わせながらマリアを指した。
「お前がマリアか。一体どんな手を使った!」
ランフォードはマリアの前まで来るとそう言ったが、マリアは突然のことに唖然としており、固まっていた。
「答えろ! どんな手を使ったのかと聞いているのだ!」
教室内の人間はその様子をある者は面白そうに、ある者は顔を真っ青にして見守っていた。
再度怒鳴られたことでマリアはようやく復帰した。
「ど、どんな手って一体何のことですか?」
「とぼけるんじゃない!」
「そ、そんなことを言われても本当に何のことかわからないです」
マリアは涙目になっていた。
マリアが何のことかわからないのは本当のことだ。ランフォードは気づいていないようだが、マリアには名乗っていない。無論、平民であるマリアが第二王子の顔を知っているわけがないのだ。マリアは大体正体が想像できたが、確信できるほどではなかった。
そもそもの前提条件として、この件の黒幕が第二王子だと知っていなければならないということもある。平民のマリアが知りえるはずがないのだが、そのことにも気づいていない。
「そもそもあなたはどなたです?」
マリアに聞かれてやっと自分が名乗っていないことに気がついたようだ。
「私はこの国の第二王子、ランフォード・エルドラントだ」
自分の名前と顔を知らないのが可笑しいと言わんばかりのドヤ顔だ。
「それで、その第二王子様が高々一庶民である私に一体何の用です? 先ほど質問された内容に心当たりはおろか、第二王子様が尋ねて来ることが思い当たらないのですが……」
第二王子と言われたことで少し動揺したが、それだけだった。
「そ、それは……」
ようやく前提条件が当てはまらないことに気づいたランフォードは言葉に詰まった。
「用がないのでしたら教室から出て行って貰えますか? 授業中ですので」
成行きを見守っていたパトリオットに言われ、ランフォードは舌打ちをすると教室から出て行った。
「うちの王子がすみません」
ランフォードの執事であろう初老の男性が頭を下げるとランフォードを追いかけて行った。その時にアルフォードを見て僅かだが驚いた顔をしていたがそのことに気づいたのはアルフォードとマリアだけだった。
ランフォードが去ると、何事もなかったように授業は再開された。
☆★☆★☆
次回更新は9月上旬以降になると思います。
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