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第十章
商業ギルド(1)
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それはエーデル王国の王女の来訪が、2日後であると正式に通達がされた日のことだった。エルドラント王国、その王都の街並みを物珍しそうに眺めながら、弾むような足取りで小さな人影が歩いていた。すぐ後ろには小柄な人物が付き従っている。
「ふふふ~」
「楽しそうですね、お嬢様」
「初めて来る場所はいつだって楽しいもの。見慣れない景色ってワクワクするの」
蒼い瞳を輝かせてエーアリアスは振り返った。
「メアリーはそう思わないの?」
「そう……ですね」
曖昧に微笑むメアリーに、エーアリアスは訝し気な目を向けた。
「私は純粋に愉しむというのはできませんね。流石に異国まで来ますと、不安も大きいですから。距離もそうですけど、文化の違いもありますし……」
「メアリーは考え過ぎなの。そんなに身構えないで、もっと気楽にした方が良いの」
エーアリアスは微笑むと白いスカートを翻らせた。
「……そうですね」
2人の近くには護衛らしき者はおらず、そこまで治安が悪いというわけでもないが、一国の王女が出歩くには無用心と言わざるえない。だが2人にそのことを気にする様子はない。
「せっかくお父様とお兄様に無理を言って来させてもらったんだもの。束の間の休暇だと思って、メアリーものんびりしたら良いの。どうせ明後日まで私はここにいないことになっているんだもの」
2人がそのまま真っ直ぐ目指したのは王城──ではなく、数々の商会が並ぶ商業区域にある商業ギルドだった。
中に入るなりエーアリアスは慣れた様子で正面のカウンターに向かった。
「すいません。登録・更新の受付ってここであっていますか?」
「ええ。新規のご登録でよろしいですか?」
柔和な男性が一応とでもいうように尋ねた。
「いえ、更新の方です」
その返答に一瞬意外そうな顔をするが、すぐにもとの微笑みに戻った。
「そうでしたか。ギルドカードのご提示をお願いできますか?」
エーアリアスの代わりにメアリーが、カードを2枚カウンターに並べる。
「お二人とも、ですか。今、処理の方をいたしますね。少しお時間がかかりますので、そちらに座ってお待ち下さい。終わり次第お声をかけさせていただきます」
指し示された方の一角には、ゆったりした座り心地の良さそうな椅子とテーブルがいくつか並んでいた。
「わかりました」
エーアリアスはふわりと微笑むと、興味津々といった様子で待ち構えている商人たちの姿に小さく息を吐いた。
「面倒くさいの」
「……先程まで楽しそうになさっていた方の言葉とは思えませんね」
「それとこれとでは話が違うの」
エーアリアスの足取りは先程までと正反対に、ひどく重いものだった。
「ふふふ~」
「楽しそうですね、お嬢様」
「初めて来る場所はいつだって楽しいもの。見慣れない景色ってワクワクするの」
蒼い瞳を輝かせてエーアリアスは振り返った。
「メアリーはそう思わないの?」
「そう……ですね」
曖昧に微笑むメアリーに、エーアリアスは訝し気な目を向けた。
「私は純粋に愉しむというのはできませんね。流石に異国まで来ますと、不安も大きいですから。距離もそうですけど、文化の違いもありますし……」
「メアリーは考え過ぎなの。そんなに身構えないで、もっと気楽にした方が良いの」
エーアリアスは微笑むと白いスカートを翻らせた。
「……そうですね」
2人の近くには護衛らしき者はおらず、そこまで治安が悪いというわけでもないが、一国の王女が出歩くには無用心と言わざるえない。だが2人にそのことを気にする様子はない。
「せっかくお父様とお兄様に無理を言って来させてもらったんだもの。束の間の休暇だと思って、メアリーものんびりしたら良いの。どうせ明後日まで私はここにいないことになっているんだもの」
2人がそのまま真っ直ぐ目指したのは王城──ではなく、数々の商会が並ぶ商業区域にある商業ギルドだった。
中に入るなりエーアリアスは慣れた様子で正面のカウンターに向かった。
「すいません。登録・更新の受付ってここであっていますか?」
「ええ。新規のご登録でよろしいですか?」
柔和な男性が一応とでもいうように尋ねた。
「いえ、更新の方です」
その返答に一瞬意外そうな顔をするが、すぐにもとの微笑みに戻った。
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