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本編
錯綜
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少女の指差した先を美紅は見つめた。
あそこか。あるいはその地下か。
美紅はそこにリッチ攻略の鍵があると睨んだ。
自分の考えが正しければ、そこにはきっとある筈だ。
美紅はよろめきながらも立ち上がった。
早くしなければ、牛嶋も唯桜ももたない。
ガッチェ像と石碑まで美紅は走った。
リッチがそれに気付いたのはすぐだった。
美紅を阻止しようと動きを見せる。
美紅はそれを見逃さなかった。
明らかにリッチはここを意識している。
間違いない。ここだ。
美紅はフラつく頭を振って、変身シークエンスに入った。
キイイイイイイイイイイイイイン……ッ!
ジェネレーターが美紅の中で高速回転する。両目が真っ赤に光った。
クルリと素早くターンした。
美紅の姿は禍々しい蛇を連想させた。
誘蛇魔人へと変貌した美紅が立っていた。
少女は覚悟していた。薄々感ずいていた。
万が一の時には自分が責任を取る。
しかし、今はこっち側へ賭けたのだ。
「おっと待ちやがれ、勝手に何処へ行こうってんだ。ちゃんと席に座ってろよ」
唯桜はそう言うとリッチをロックオンした。
「行くぜッ! 後は頼んだ、旦那あッ!」
叫んだ唯桜の全身から、エネルギー弾の集中砲火が始まった。
リッチは釘付けになる。
魔法障壁を最大にしなければ流石にこれは防げない。
リッチの周りで爆発が連続的に起きた。
夕立の様に降り注ぐエネルギー弾を、リッチは全力で受け止めた。
全力射撃は百秒が限界だ。
「クッ……。旦那、そろそろ弾切れだ。後は頼んだ……」
唯桜がそう言った直後、射撃は止んだ。
全身の銃口から煙をたてて、唯桜はその場に膝から崩れ落ちた。
両膝を付いて見守る唯桜の目に、牛嶋がリッチへと駆けていく後ろ姿が映った。
リッチはギョッとした。
今、魔法障壁は無い。
唯桜の全力射撃と、リッチの全力防御はほぼ同等の力を持っていた。
唯桜が撃ち尽くした時、リッチもまた魔法障壁の耐久力は尽きる。
唯一の違いは唯桜はその直後、自ら動く事が出来ないほどのエネルギー切れに陥ると言う点だ。
リッチは自身が動けなくなる様な事は無い。
時間が経てば、また魔法障壁を張る事も可能だ。
その時間は唯桜の再チャージ時間よりも短い。
最大のチャンスに唯桜が動けないと言う欠点を牛嶋が補う。
これが一度目の全力射撃で唯桜が見付けた攻略法だった。
牛嶋が戻ってきてこそ可能な唯一の方法。
牛嶋は猛牛の如く走った。
逃れようとするリッチの背後に角から突っ込む。
すくい上げるように、下から上へと頭を振った。
リッチはサッカーボールの様に高く舞い上がる。
ローブは千切れ、ボロボロになって風に舞った。
あり得ない角度に体が曲がっていた。
脊椎が折れたのは明らかだ。
牛嶋はリッチの真下で天を仰ぎ両腕を広げた。
「おおっ!」
牛嶋が短く叫ぶと同時に、角から電撃が上空へと走った。
落雷の逆である。
昇雷とでも言うべきか。
夜空に向かって伸びる稲妻に雷鳴が轟く。
ガガアアアアアアアアアアンッ!
空中でリッチの体を稲妻が捉え、そのまま天へと消えていった。
唯桜はそれを見届けた。
そして、そのまま地面に突っ伏した。
ドサアッ!
牛嶋の背後にリッチが落ちてきた。
ローブが燃えている。
リッチ自身も黒焦げになっていた。
これでは流石に死んだであろう。
牛嶋は確信した。
しかし。
立ち去ろうとする牛嶋の目に、信じられない光景が映った。
燃えるローブの中から、リッチが起き上がろうとしている。
もがく様にも見えた。だが、確実に動いていた。
「なんと……!」
牛嶋は目を見張った。
流石にこれでは倒す術が見つからない。
唯桜ももう動けない今、どうすればこの化け物を葬り去る事が出来るのか。
牛嶋は戦慄した。
あそこか。あるいはその地下か。
美紅はそこにリッチ攻略の鍵があると睨んだ。
自分の考えが正しければ、そこにはきっとある筈だ。
美紅はよろめきながらも立ち上がった。
早くしなければ、牛嶋も唯桜ももたない。
ガッチェ像と石碑まで美紅は走った。
リッチがそれに気付いたのはすぐだった。
美紅を阻止しようと動きを見せる。
美紅はそれを見逃さなかった。
明らかにリッチはここを意識している。
間違いない。ここだ。
美紅はフラつく頭を振って、変身シークエンスに入った。
キイイイイイイイイイイイイイン……ッ!
ジェネレーターが美紅の中で高速回転する。両目が真っ赤に光った。
クルリと素早くターンした。
美紅の姿は禍々しい蛇を連想させた。
誘蛇魔人へと変貌した美紅が立っていた。
少女は覚悟していた。薄々感ずいていた。
万が一の時には自分が責任を取る。
しかし、今はこっち側へ賭けたのだ。
「おっと待ちやがれ、勝手に何処へ行こうってんだ。ちゃんと席に座ってろよ」
唯桜はそう言うとリッチをロックオンした。
「行くぜッ! 後は頼んだ、旦那あッ!」
叫んだ唯桜の全身から、エネルギー弾の集中砲火が始まった。
リッチは釘付けになる。
魔法障壁を最大にしなければ流石にこれは防げない。
リッチの周りで爆発が連続的に起きた。
夕立の様に降り注ぐエネルギー弾を、リッチは全力で受け止めた。
全力射撃は百秒が限界だ。
「クッ……。旦那、そろそろ弾切れだ。後は頼んだ……」
唯桜がそう言った直後、射撃は止んだ。
全身の銃口から煙をたてて、唯桜はその場に膝から崩れ落ちた。
両膝を付いて見守る唯桜の目に、牛嶋がリッチへと駆けていく後ろ姿が映った。
リッチはギョッとした。
今、魔法障壁は無い。
唯桜の全力射撃と、リッチの全力防御はほぼ同等の力を持っていた。
唯桜が撃ち尽くした時、リッチもまた魔法障壁の耐久力は尽きる。
唯一の違いは唯桜はその直後、自ら動く事が出来ないほどのエネルギー切れに陥ると言う点だ。
リッチは自身が動けなくなる様な事は無い。
時間が経てば、また魔法障壁を張る事も可能だ。
その時間は唯桜の再チャージ時間よりも短い。
最大のチャンスに唯桜が動けないと言う欠点を牛嶋が補う。
これが一度目の全力射撃で唯桜が見付けた攻略法だった。
牛嶋が戻ってきてこそ可能な唯一の方法。
牛嶋は猛牛の如く走った。
逃れようとするリッチの背後に角から突っ込む。
すくい上げるように、下から上へと頭を振った。
リッチはサッカーボールの様に高く舞い上がる。
ローブは千切れ、ボロボロになって風に舞った。
あり得ない角度に体が曲がっていた。
脊椎が折れたのは明らかだ。
牛嶋はリッチの真下で天を仰ぎ両腕を広げた。
「おおっ!」
牛嶋が短く叫ぶと同時に、角から電撃が上空へと走った。
落雷の逆である。
昇雷とでも言うべきか。
夜空に向かって伸びる稲妻に雷鳴が轟く。
ガガアアアアアアアアアアンッ!
空中でリッチの体を稲妻が捉え、そのまま天へと消えていった。
唯桜はそれを見届けた。
そして、そのまま地面に突っ伏した。
ドサアッ!
牛嶋の背後にリッチが落ちてきた。
ローブが燃えている。
リッチ自身も黒焦げになっていた。
これでは流石に死んだであろう。
牛嶋は確信した。
しかし。
立ち去ろうとする牛嶋の目に、信じられない光景が映った。
燃えるローブの中から、リッチが起き上がろうとしている。
もがく様にも見えた。だが、確実に動いていた。
「なんと……!」
牛嶋は目を見張った。
流石にこれでは倒す術が見つからない。
唯桜ももう動けない今、どうすればこの化け物を葬り去る事が出来るのか。
牛嶋は戦慄した。
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