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本編
リターンマッチ
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唯桜はリッチへと歩み寄る。
流石の唯桜にも緊張が見てとれた。
唯桜たち改造人間でさえ、首をもがれてそれでも無事と言う事は有り得ない。
不老不死の面目躍如である。
リッチは唯桜を注視した。
「お前が最も危険だったか……」
低い声でリッチが言った。
唯桜は鼻で笑う。
「てめえが勝手に見誤ったんだろうが。知るかよ」
そう言うと唯桜は両の掌を、何度も閉じたり開いたりして拳を握り直した。
「リッチってのは何でも知ってるんだってな。俺達の事も知ってるんだろう?」
リッチは何も言わなかった。
「俺は旦那とは違うぜ。必ずてめえに吐かせてやらあ」
そう言って唯桜は脇へと唾を吐き捨てた。
望んだ訳では無いが、第二ラウンドの開始だ。
「……大神唯桜。爆狼魔人。元指定暴力団幹部。後にヤゴスの最高幹部となり、行動隊長を務める。一対多数を可能とする能力を持ち、部隊殲滅等を得意とする。全身に内蔵火器を搭載するが格闘戦を好む傾向にある」
リッチがまたしても唯桜に関するデータを口にした。
しかし唯桜はもう驚かなかった。
それがどうしたと言わんばかりである。
その間に新たに煙草を取り出すと、くわえて火まで着けた。
「データでは、牛嶋五郎次の方が個人戦闘能力に於てお前を上回っている。何故お前が私を傷付けられたのか不可解だ」
リッチがそう言った。
唯桜はそれを聞きながら煙草の煙を吐き出した。
立ち上る煙に目を細める。
「へっ。そりゃあ俺が意外性の男だからだろ。期待を裏切って悪かったなあ」
そう言って唯桜が笑う。
「実物はデータを上回るか。ならばもっと見せてみよ。データが欲しい」
リッチが唯桜に向かって言った。
挑発では無さそうである。
「ちっ……。てめえも中々嫌な性格してやがるな」
唯桜は煙草を踏み潰して火を消した。
しかし、内心はどうしようかと考えあぐねていた。
変身したところで、リッチに対して出来る事は多く無い。
打撃や斬撃の様な物理的な攻撃は効果あるまい。
例の魔法障壁は未だ健在なのだ。
エネルギー弾はどうだろうか。
実体は無いが破壊エネルギーを通しはしないだろう。
他に一体何が効くと言うのか。
まずは本体に当てなければならない。
その次に本体に対して効果ある攻撃だ。
直接脛椎を粉砕しても蘇る様な奴に有効な手段は、唯桜の頭には思い付かなかった。
「……高校くれえ真面目に出ておくべきだったかな」
唯桜は、へっと笑って一人ごちる。
お見合いしてても始まらねえ。
取り敢えずぶん殴る。
唯桜はそう思ってもう一度殴りかかった。
「思考まで振り出しに戻ったか」
リッチが冷やかに言い放つ。
やはり唯桜のパンチは通用しない。
美紅はもう一度解析を試みようとした。
しかし、ジャミングの様な物を掛けられていて、やはり何も機能しなかった。
「私、何の役にも立てない……!」
美紅は怒りと悔しさが混ざって声を詰まらせた。
少女が美紅の側で手を握った。
「私が視ます。何を視るか言って下さい!」
少女はそう言って美紅の顔を見た。
美紅も少女の顔を見た。
真っ直ぐな眼差しに、何故か救われる気がした。
「リッチには生体反応が無いのよ」
「生体反応……?」
美紅の言葉に少女は首をかしげた。
「命を感じないと言えば良いのかしら。ここに、存在を感じないわ」
言い直した美紅の言葉は、今度は少女にも理解出来た。
「でも、そんな筈は無いわ。実際に動いて喋っている。見えない壁だって使うからには何処からかエネルギーを供給しなければならない筈」
つまり魔力にも供給源が必要と言う事か。
少女は論理的な美紅の思考に感心した。
そんな考え方があるのか。
リッチだから、魔法だからと、無条件には納得しない。
必ず理屈を追い求める考え方。
少女には新鮮であった。
「それが何処なのか。何処からか来ているのか。それが解れば」
「そこを叩く訳ですね」
少女は美紅の思考を引き継いだ。
美紅は少女に対して微笑んだ。
「その通りよ。貴女になら出来るわ。きっと」
美紅の言葉を受けて少女は、はいっと返事をした。
流石の唯桜にも緊張が見てとれた。
唯桜たち改造人間でさえ、首をもがれてそれでも無事と言う事は有り得ない。
不老不死の面目躍如である。
リッチは唯桜を注視した。
「お前が最も危険だったか……」
低い声でリッチが言った。
唯桜は鼻で笑う。
「てめえが勝手に見誤ったんだろうが。知るかよ」
そう言うと唯桜は両の掌を、何度も閉じたり開いたりして拳を握り直した。
「リッチってのは何でも知ってるんだってな。俺達の事も知ってるんだろう?」
リッチは何も言わなかった。
「俺は旦那とは違うぜ。必ずてめえに吐かせてやらあ」
そう言って唯桜は脇へと唾を吐き捨てた。
望んだ訳では無いが、第二ラウンドの開始だ。
「……大神唯桜。爆狼魔人。元指定暴力団幹部。後にヤゴスの最高幹部となり、行動隊長を務める。一対多数を可能とする能力を持ち、部隊殲滅等を得意とする。全身に内蔵火器を搭載するが格闘戦を好む傾向にある」
リッチがまたしても唯桜に関するデータを口にした。
しかし唯桜はもう驚かなかった。
それがどうしたと言わんばかりである。
その間に新たに煙草を取り出すと、くわえて火まで着けた。
「データでは、牛嶋五郎次の方が個人戦闘能力に於てお前を上回っている。何故お前が私を傷付けられたのか不可解だ」
リッチがそう言った。
唯桜はそれを聞きながら煙草の煙を吐き出した。
立ち上る煙に目を細める。
「へっ。そりゃあ俺が意外性の男だからだろ。期待を裏切って悪かったなあ」
そう言って唯桜が笑う。
「実物はデータを上回るか。ならばもっと見せてみよ。データが欲しい」
リッチが唯桜に向かって言った。
挑発では無さそうである。
「ちっ……。てめえも中々嫌な性格してやがるな」
唯桜は煙草を踏み潰して火を消した。
しかし、内心はどうしようかと考えあぐねていた。
変身したところで、リッチに対して出来る事は多く無い。
打撃や斬撃の様な物理的な攻撃は効果あるまい。
例の魔法障壁は未だ健在なのだ。
エネルギー弾はどうだろうか。
実体は無いが破壊エネルギーを通しはしないだろう。
他に一体何が効くと言うのか。
まずは本体に当てなければならない。
その次に本体に対して効果ある攻撃だ。
直接脛椎を粉砕しても蘇る様な奴に有効な手段は、唯桜の頭には思い付かなかった。
「……高校くれえ真面目に出ておくべきだったかな」
唯桜は、へっと笑って一人ごちる。
お見合いしてても始まらねえ。
取り敢えずぶん殴る。
唯桜はそう思ってもう一度殴りかかった。
「思考まで振り出しに戻ったか」
リッチが冷やかに言い放つ。
やはり唯桜のパンチは通用しない。
美紅はもう一度解析を試みようとした。
しかし、ジャミングの様な物を掛けられていて、やはり何も機能しなかった。
「私、何の役にも立てない……!」
美紅は怒りと悔しさが混ざって声を詰まらせた。
少女が美紅の側で手を握った。
「私が視ます。何を視るか言って下さい!」
少女はそう言って美紅の顔を見た。
美紅も少女の顔を見た。
真っ直ぐな眼差しに、何故か救われる気がした。
「リッチには生体反応が無いのよ」
「生体反応……?」
美紅の言葉に少女は首をかしげた。
「命を感じないと言えば良いのかしら。ここに、存在を感じないわ」
言い直した美紅の言葉は、今度は少女にも理解出来た。
「でも、そんな筈は無いわ。実際に動いて喋っている。見えない壁だって使うからには何処からかエネルギーを供給しなければならない筈」
つまり魔力にも供給源が必要と言う事か。
少女は論理的な美紅の思考に感心した。
そんな考え方があるのか。
リッチだから、魔法だからと、無条件には納得しない。
必ず理屈を追い求める考え方。
少女には新鮮であった。
「それが何処なのか。何処からか来ているのか。それが解れば」
「そこを叩く訳ですね」
少女は美紅の思考を引き継いだ。
美紅は少女に対して微笑んだ。
「その通りよ。貴女になら出来るわ。きっと」
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