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本編
タネ明かし
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「あの……」
美紅を呼び止める声があった。
何気なく振り向く。
そこにはさっきまで一緒に大道芸に挑戦していた、小柄な女性挑戦者の姿があった。
意外な相手に美紅も珍しく面食らう。
「あら、貴女……。何かしら? 私にご用?」
美紅はそう言って首を傾げる。
「あ、いえ。用と言うかちょっと気になったので」
包帯で顔中ぐるぐる巻きと言う怪しい風貌意外、どこにでも居る普通の女の子と言う印象を受ける。
「何かしら?」
美紅が聞いた。
大体聞きたい事は解っている。
「あの……、凄いですね。さっきの見破る奴のアレ」
まあ、そうだろう。
普通にやって見破れる奴はそうそう居まい。
「貴女も凄かったじゃない。全問正解だなんて」
美紅は微笑みながらとぼけてみた。
「いえ、私はその……、ちょっとズルしたと言うか、何て言えば良いのか……」
美紅もその辺には少し興味があった。
あれは一体どういう言語なのか。
「ふふ。良いんじゃない? あんなの向こうだって一般人から巻き上げる気マンマンなんだから、気にする事ないわよ」
美紅はそう言って彼女に笑いかけた。
彼女も美紅がそう言ってくれた事で、気分が楽になった。
「そうですよね。イカサマだって怒られたらどうしようかと」
彼女はイタズラっぽく笑った。
こうして話していると本当に普通の女の子でしか無い。
「私も少し気になった事があるんだけど、聞いても良いかしら?」
美紅が先に尋ねた。
彼女は、はいと答えた。
「貴女あの時、何か唄っているように聞こえたのだけれど、一体何て言っていたのかしら」
美紅がズバリ尋ねた。
彼女は驚いた。
目しか見えないが、その目は大きく見開かれ、ビックリしている事は誰にでも解った。
「どうしてそれを……、聞こえていたんですか?」
「まあね。聞こえていたんだけれど、何て言っているのか解らなくて。それが貴女が問題を外さなかった理由ね」
彼女は本当に驚いた。
ほぼ声に出さずに口の中だけで唄っていた筈なのに。
しかも包帯越しに聞こえていたなんて。
流石ににわかには信じられなかった。
この人の秘密はこの辺りにある。
彼女は美紅を見てそう思った。
美人だ。
あまり見ないタイプの美人かも知れない。
黒髪で黒目で明らかに純粋な日本人だと解る。
長い髪。すらりとした身長。肌の露出は少ないのに性を意識させるスタイルと服装。
何より女性らしくありながらも、溢れ出る自信。
見た事の無い服装も気になる。
一体何処で手に入るのだろう。
ピッタリとフィットしていて体のラインが視覚的に良く解る。
細身のジーンズにブーツと言う姿だったが、この時代にはそんな物は無い。
同性の彼女から見ても、美紅は女性らしさを強調した存在に思えた。
目的を忘れて美紅に見とれる。
「ふふ。どうしたの? 何か付いてるかしら」
美紅は自分を見つめる彼女の表情を想像して笑った。
彼女は慌てて素に戻る。
「あ、あれは古代語です。正確には古代語にオーヌ語を掛け合わせた神霊語ですけど……」
美紅にみつめられて、何故か声が小さくなる。
「神霊語?」
美紅が首を傾げる。聞き慣れない単語だ。
古代語と言うのは合っているのだろう。
例のアフリカのコイサン緒語と何か関係が有るのは、美紅にも予想できた。
「神霊語は万物に宿る全ての意思と会話する言葉です」
彼女はそう言った。
「私はまだまだ未熟で道半ばですけど」
「万物に宿る全ての意思と会話する?」
美紅にはさっぱり意味が解らなかった。
物と会話するって事? 物質と?
それって動物とも話せるのかしら?
美紅はそう考えてちょっと萌えた。
猫や兎と話してみたいのは、女子なら当然と言えたかも知れない。
「話せない事も無いですけど、あまり向かないですね。動物の皮やら毛やら血やら別の物の声が聞こえてきて解らなくなると思います」
彼女は美紅の意外な質問に、手で口元を抑えてコロコロと笑った。
「なんだ。残念ね」
美紅はそう言って、本当に残念がった。
「でも、別の言語なら可能な言葉もあると思います。私は専門外なんですけど」
「え? 可能なの?」
「可能と思います。たぶん魂と意思を疎通させる精霊語か、会話せずに心を読み解く精神感応術の応用なら可能性はあると思います。……試した事はありませんが」
彼女はそう言って頭を掻いた。
美紅はこの手の話を信じるタイプでは無かった。
しかし、この時代に来てからと言うもの、ワーウルフの様な化け物や、さっき彼女が見せた様な不思議を見ると、固定観念は捨てないと却って危険だと思う様になっていた。
美紅は、ふうんと言って頷いた。
「それで……あの、貴女はどうやって見破っていたのかと」
彼女が最初に聞きたかった事にようやく辿り着いた。
美紅を呼び止める声があった。
何気なく振り向く。
そこにはさっきまで一緒に大道芸に挑戦していた、小柄な女性挑戦者の姿があった。
意外な相手に美紅も珍しく面食らう。
「あら、貴女……。何かしら? 私にご用?」
美紅はそう言って首を傾げる。
「あ、いえ。用と言うかちょっと気になったので」
包帯で顔中ぐるぐる巻きと言う怪しい風貌意外、どこにでも居る普通の女の子と言う印象を受ける。
「何かしら?」
美紅が聞いた。
大体聞きたい事は解っている。
「あの……、凄いですね。さっきの見破る奴のアレ」
まあ、そうだろう。
普通にやって見破れる奴はそうそう居まい。
「貴女も凄かったじゃない。全問正解だなんて」
美紅は微笑みながらとぼけてみた。
「いえ、私はその……、ちょっとズルしたと言うか、何て言えば良いのか……」
美紅もその辺には少し興味があった。
あれは一体どういう言語なのか。
「ふふ。良いんじゃない? あんなの向こうだって一般人から巻き上げる気マンマンなんだから、気にする事ないわよ」
美紅はそう言って彼女に笑いかけた。
彼女も美紅がそう言ってくれた事で、気分が楽になった。
「そうですよね。イカサマだって怒られたらどうしようかと」
彼女はイタズラっぽく笑った。
こうして話していると本当に普通の女の子でしか無い。
「私も少し気になった事があるんだけど、聞いても良いかしら?」
美紅が先に尋ねた。
彼女は、はいと答えた。
「貴女あの時、何か唄っているように聞こえたのだけれど、一体何て言っていたのかしら」
美紅がズバリ尋ねた。
彼女は驚いた。
目しか見えないが、その目は大きく見開かれ、ビックリしている事は誰にでも解った。
「どうしてそれを……、聞こえていたんですか?」
「まあね。聞こえていたんだけれど、何て言っているのか解らなくて。それが貴女が問題を外さなかった理由ね」
彼女は本当に驚いた。
ほぼ声に出さずに口の中だけで唄っていた筈なのに。
しかも包帯越しに聞こえていたなんて。
流石ににわかには信じられなかった。
この人の秘密はこの辺りにある。
彼女は美紅を見てそう思った。
美人だ。
あまり見ないタイプの美人かも知れない。
黒髪で黒目で明らかに純粋な日本人だと解る。
長い髪。すらりとした身長。肌の露出は少ないのに性を意識させるスタイルと服装。
何より女性らしくありながらも、溢れ出る自信。
見た事の無い服装も気になる。
一体何処で手に入るのだろう。
ピッタリとフィットしていて体のラインが視覚的に良く解る。
細身のジーンズにブーツと言う姿だったが、この時代にはそんな物は無い。
同性の彼女から見ても、美紅は女性らしさを強調した存在に思えた。
目的を忘れて美紅に見とれる。
「ふふ。どうしたの? 何か付いてるかしら」
美紅は自分を見つめる彼女の表情を想像して笑った。
彼女は慌てて素に戻る。
「あ、あれは古代語です。正確には古代語にオーヌ語を掛け合わせた神霊語ですけど……」
美紅にみつめられて、何故か声が小さくなる。
「神霊語?」
美紅が首を傾げる。聞き慣れない単語だ。
古代語と言うのは合っているのだろう。
例のアフリカのコイサン緒語と何か関係が有るのは、美紅にも予想できた。
「神霊語は万物に宿る全ての意思と会話する言葉です」
彼女はそう言った。
「私はまだまだ未熟で道半ばですけど」
「万物に宿る全ての意思と会話する?」
美紅にはさっぱり意味が解らなかった。
物と会話するって事? 物質と?
それって動物とも話せるのかしら?
美紅はそう考えてちょっと萌えた。
猫や兎と話してみたいのは、女子なら当然と言えたかも知れない。
「話せない事も無いですけど、あまり向かないですね。動物の皮やら毛やら血やら別の物の声が聞こえてきて解らなくなると思います」
彼女は美紅の意外な質問に、手で口元を抑えてコロコロと笑った。
「なんだ。残念ね」
美紅はそう言って、本当に残念がった。
「でも、別の言語なら可能な言葉もあると思います。私は専門外なんですけど」
「え? 可能なの?」
「可能と思います。たぶん魂と意思を疎通させる精霊語か、会話せずに心を読み解く精神感応術の応用なら可能性はあると思います。……試した事はありませんが」
彼女はそう言って頭を掻いた。
美紅はこの手の話を信じるタイプでは無かった。
しかし、この時代に来てからと言うもの、ワーウルフの様な化け物や、さっき彼女が見せた様な不思議を見ると、固定観念は捨てないと却って危険だと思う様になっていた。
美紅は、ふうんと言って頷いた。
「それで……あの、貴女はどうやって見破っていたのかと」
彼女が最初に聞きたかった事にようやく辿り着いた。
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