見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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八一四

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 どおん!

 王は投げ捨てられて背中を付いた。

「!?」

 おかしい。
いくら初めて食らうにしても、あれだけ様々な技を初見で切り返した王がモンキーフリップを返せないとは。

 自分で言うのもおかしな話だが、モンキーフリップ自体は相手を後方に投げ捨てるだけの技だ。
避けられないまでも、受け身くらいは王の実力なら取れる筈。
にもかかわらず、まるで不意を突かれたかの如くモンキーフリップをまともに食らうとは。

「ほう。モンキーフリップと言うのか」

 王が起き上がりながら呟く。
レベル三〇〇ならばこの程度の技でそれほどのダメージはあるまい。
起きて当然だ。

 だっ

 俺は素早く駆け寄る。
今度は王の頭を掴まえて逆さに持ち上げた。

「おお!?」

 王が意外な声を上げた。
返せないのか?

 そのまま頭を抱えて後ろに倒れ込む。
同時に王の頭を地面に直接打ち付けた。

「うぐっ!」

 鈍い悲鳴が漏れる。

 DDTだ。

 綺麗に決まった。
何故返して来ない。
俺は不思議に思いながらも更に攻撃に移る。

 王は同時に立ち上がった。
王が先手を取らせまいと先に走った。
来る。

 俺は姿勢を低く待ち構える。
太ももの間に腕を入れ、首を支点に王の体を後方へ捻って投げる。
そのままプレスだ。

 パワースラム。

「ぐふ!」

 王が衝撃に耐えた。
まただ。
また返して来ない。
最初の技は全て完璧に返して来たのに。

 サフィリナックスカタラクト。
スクリューシェイブクロウ。
必殺技とも言えるこれらの技をいとも容易く返したかと思えば、この手のプロレス技は食らっている。

 何なんだ。
この違和感は。

「実に面白い。良く考えられているな。だが、決定打に欠ける。もっと必殺技らしいのを見せてみよ。すぐに余の物になる」

 王は起き上がってそう言った。
必殺技を催促している。
一度見た技は完全に覚えて自分の物にするのか。
その才能自体は素晴らしい能力だ。
しかし、それを差し引いてもこの落差は何なんだ。

「打撃技は避けて関節技が良いわ。ただし殺さないように手加減して継続的なダメージを狙いなさい」

 ウロコフネタマイトが口を挟む。
掴まえて逃がすなと言う事か。
俺はアドバイスを受け入れた。

「ふん!」

 王の攻撃をかわして、背後を取る。
後ろから組み付いて両腕をクラッチする。

「うぐ!」

 コブラツイスト。

 見た目に不思議な技だが、これが実に痛い。
腕や肩に目が行くが、実は極まっているのは腰だ。

 俺はギリギリと王の体を締め上げる。

「ぐああ!」

 あの王が悲鳴を上げた。
効いている。
やはり返せないのか。
どうして返せないのか判らないが、とにかく効いていた。

「うおおお!」

 王は強引にコブラツイストを脱出した。
改造人間を押し返して技から脱出するこの力。
さすがだ。

 俺は改めて王の力に感嘆した。
しかし。

「くうう……」

 王は苦悶の表情を見せる。
抜けたは良いが、ダメージは相当な物な筈。
こんな強引な抜け方。
ダメージを甘受してまでの強引な脱出方法。
明らかに今までと違った。

 とにかくこの戦法は有効だ。
俺は更に攻め手を緩めず、王に迫る。

「く……!」

 それを見て、王は警戒心を露わにした。
間合いを取って後ろへ下がる。
逃がすか。
俺は更に迫った。
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