見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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八一三

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「王よ!残念ながらアンタでは世界は救えない!」

 王が力に任せてパンチを奮った。

 ぶうん!

 その腕を巻き取り、放り投げる。

 アームホイップ。

「まずアームホイップ」

 王が楽々と受け身を取る。

「何!?」

 オオムカデンダル直伝のプロレス技だぞ。
そんなに簡単に反応できるのか。
王は更に間髪入れずに襲い掛かる。

「はっはっはあ!」

 王は笑いながらパンチを繰り出した。
俺はパンチを搔い潜り、王の背後を取る。

「そしてバックドロップ」

 王がまるで先読みするかの如く、そう言った。

「何!?」

 俺は王の腰に両腕を回し、そのまま王を背後に投げた。

 ぶうん!

 バックドロップだ。

 俺は勢い良く王を後頭部から地面に打ち付ける。
その筈だった。

 しかし。

「今度は上手くやって見せよう」

 王が笑みを浮かべてそう言った。

 クラッチを切ると素早く反転する。
俺の背後を取って逆に俺を投げ返した。

 マジか!
思ったがもう遅い。
瞬間、体が宙に浮く。

「うお!?」

 どかっ!

「ぐっ!」

 俺はしたたかに後頭部を地面に打ち付けられた。

「ははは。今度は上手く行ったな」

 何だと。
どう言う事だ。
まるでこの技を熟知しているかのような動きでバックドロップを返して来た。

「レオ!もうやめてくれ!」

 ケンが叫んだ。
こんな状況でもまだ王国に忠誠を誓うのか。
やられているのは俺なんだが。

「ははははは!絶対に負けはせん!」

 王は高らかにそう言った。

「まだあるのだろう。もっと見せてみよ。それだけ余は強くなる」

 この筋肉国王が。

 だったら本気で決着を付けてやる。
死んでも文句を言うなよ。

「とおっ!」

 俺は高く跳ぶと王の頂点を取った。

「サフィリナックスカタラクトだったか」

 王が言った。
なに!

 俺は頂点で宙返りをする。
同時に触手を数本同時に伸ばした。

 がしっ!
がしっ!
がしっ!
がしっ!

 触手は王を囲むように地面に打ち込まれる。

 ばいん!

 背中と肩の装甲が開いた。
そこから勢い良く炎が噴射する。

 ゴオッ!

 触手を引き寄せつつ噴射する炎に押されて、俺は高速で地面に落下した。

「サフィリナックスカタラクト!」

 両足を揃えて王を踏みつける。
さすがにこれには耐えられまい。

「一度見れば十分だ」

 王は冷静にそう言って、ギリギリでキックをかわす。

 ドオンッ!

 俺の切り札は見事に見切られた。
王は紙一重でかわしたのだ。

 王の前髪をかすめて俺は地面に着地した。
微調整する隙も与えない。
本当にギリギリでかわしたのだ。

 初見でこの見切り方。
まるで見た事があるかのような完璧なかわし方だった。

「……信じられん」

 俺は振り返って王を見た。

「ははははは!まだだ!まだ続きがあるだろう!」

 そんな馬鹿な。
俺は呆気にとられる。

 プロレス技はかわされ、サフィリナックスカタラクトもかわされた。
そんな事があり得るのか。

「貴様は確かに強い。余の会った中でも最強格だ。だがそれでも余が勝つ!」

「おお、さすがは我等が王!」

 宰相が絶賛する。

 くそ!
そんな馬鹿な事があってたまるか!
俺は夢中で攻撃を繰り出す。

「はははは。そんな普通の攻撃では余には通用せんぞ。ほら、もっと見せるが良い!」

 ふざけやがって。

「スクリューシェイブクロウ!」

 俺は高速回転する手首を王の体に撃ち込む。
どうだ!

「これだな?」

 王は狙い澄ましたようにスクリューシェイブクロウをかわして、脇に抱え込んだ。

 これも読まれていたのか。
俺はそのまま地面に押さえ込まれた。

「くそ!」

 俺は覿面に狼狽した。
どうすれば良い。
何も通用しない。
かつてこんな事は無かった。
レベル三〇〇とはこんなにも次元が違うのか。

「敵に付き合っては駄目よ」

 突然ウロコフネタマイトが口を開いた。

「何かは判らないけどタネが有るのは確かね。とにかく自分の得意なフィールドで戦いなさい。相手に付き合っては駄目よ」

 やはり、何かタネが有るのか。
ウロコフネタマイトでさえ、そのタネは不明だと言う。
それでもこの助言は今の俺には十分に心強かった。
折れかけた心を繋ぎ止めてくれる。

「うおお!」

 俺は気合で立ち上がると、王に抵抗した。

「まだやるか!」

 王が叫ぶ。

「なめるなよ!」

 負けじと俺も叫び返す。

 得意なフィールド。
やはりオオムカデンダル直伝のプロレス技だ。

 俺は王の腕を取り返した。

「む!?」

 そのままモンキーフリップ。
俺は両足で王の体を跳ね退けた。
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