見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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八一〇

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「むん!」

 王が剣を振った。
藍眼鉱の剣だ。

 ガキイン!

 片腕で受け止めたが衝撃が凄い。
ウロコフネタマイトの硬さが無ければ、装甲が削れてしまう。
とりあえず一撃は凌げたが。

「ほう、余の一撃を受け止めるか」

 どことなく王が嬉しそうに言った。

「本気で構わん。様子見など必要ない」

「その言葉、後悔するなよ?」

「レオ!」

 王の言葉にケンが焦る。

「問題ない。任せろ」

 俺はケンの言葉を遮って国王に言った。

「王よ」

「何だ?」

「俺が制裁を乗り切ったら、ケンの話を聞いてやれ。ケンへの咎めも無しだ」

「それはならんな」

 ケンの表情がこわばる。

「なに?」

「狼藉は狼藉だ。無罪放免では示しがつかぬ。責任は取ってもらう」

「分からず屋国王め!」

「抜かせ!」

 国王が再び剣を振り上げる。

「サフィリナックスブレード!」

 前腕が光刃と化す。

 キン!

 藍眼鉱のグレートソードが真っ二つに折れる。

「なに!?」

 流石にそう何発も斬られては装甲がダメージを受ける。
国王の剣撃にはそれだけの威力があった。

 クラゲ怪人の俺にはそこまでの防御力は無い。
ウロコフネタマイトなら受けきるだろうが。

「……余のグレートソードが切断されるとは」

 王が自らの剣を眺めた。

「まだやるか?」

 俺は国王に尋ねた。

「くどい!剣が無くともこの鉄拳が残っている限り!」

 王は自らの拳で向かって来た。
ここまでやるか。
俺は咄嗟にガードした。

 バチィン!
ズザザザザザザザザー!

 受け止めたが、体ごと吹き飛ばされる。
何というパンチ力。
本当に人間か。
俺は国王の顔を見た。
さすがは、レベル三〇〇。
人間などとうに辞めたパンチ力だ。

 これが『英雄』レベルか。
俺は内心驚いていた。
改造人間にならなくとも、ここまで強くなれるとは。
帝国の将軍たちと戦った時にも思った事だが、それよりも更に上を行くとは。

 これが王。
王の重責か。

「ほう。これも受けきるか」

 国王が更に嬉しそうな声を上げた。
俺的には受け切れてはいない。
体ごと持って行かれたのだ。

 だが、国王は粉砕できなかった事を悔しがった。
お互いが負けたと思っていたのだ。

「尚更そちを叩き伏せてみたくなったわ」

 これだから肉体派は苦手だ。
何故、そう言う方向へ行くのか。

「死ぬまで戦う気か」

「ふふ、それも悪くないな」

 悪いだろ。
さては、退屈な毎日に飽いていたな。
まあ、この王なら死にはしまい。

「サフィリナックスヒューイット!」

 俺は触手を、伸ばして牽制した。

「む?むぅん!」

 触手を一目見て、王は全身をこわばらせた。

 なに!
受けきるつもりか!
猛毒だ。
流石に、死んでしまう。

 バチィ!

 ヒューイットが王の体を打つ。
しかし。

 触手の微細な刺胞は、王の体に刺さる事無く弾かれた。
そんな馬鹿な!

 俺はこれほど驚いた事は無かった。
筋肉を張って刺胞を受け付けないだと。
皮膚にさえ入れば確実即死なのに、それさえも弾くのか。
そんな真似が可能なのか。

 レベル三〇〇だからか。
国王だからなのか。
それともこれがスキルなのか。

 俺は訳が判らなかった。
刺胞を弾く為のスキルなど、そんな他に使い道の無いスキルなんてある筈が無かった。

 全く非常識だ。
これだから肉体派は苦手なんだ。

「あら、凄いわね。もう結構なお歳なのに」

 ウロコフネタマイトがそれを見て呟いた。
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