見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

文字の大きさ
上 下
811 / 826

八一〇

しおりを挟む
「むん!」

 王が剣を振った。
藍眼鉱の剣だ。

 ガキイン!

 片腕で受け止めたが衝撃が凄い。
ウロコフネタマイトの硬さが無ければ、装甲が削れてしまう。
とりあえず一撃は凌げたが。

「ほう、余の一撃を受け止めるか」

 どことなく王が嬉しそうに言った。

「本気で構わん。様子見など必要ない」

「その言葉、後悔するなよ?」

「レオ!」

 王の言葉にケンが焦る。

「問題ない。任せろ」

 俺はケンの言葉を遮って国王に言った。

「王よ」

「何だ?」

「俺が制裁を乗り切ったら、ケンの話を聞いてやれ。ケンへの咎めも無しだ」

「それはならんな」

 ケンの表情がこわばる。

「なに?」

「狼藉は狼藉だ。無罪放免では示しがつかぬ。責任は取ってもらう」

「分からず屋国王め!」

「抜かせ!」

 国王が再び剣を振り上げる。

「サフィリナックスブレード!」

 前腕が光刃と化す。

 キン!

 藍眼鉱のグレートソードが真っ二つに折れる。

「なに!?」

 流石にそう何発も斬られては装甲がダメージを受ける。
国王の剣撃にはそれだけの威力があった。

 クラゲ怪人の俺にはそこまでの防御力は無い。
ウロコフネタマイトなら受けきるだろうが。

「……余のグレートソードが切断されるとは」

 王が自らの剣を眺めた。

「まだやるか?」

 俺は国王に尋ねた。

「くどい!剣が無くともこの鉄拳が残っている限り!」

 王は自らの拳で向かって来た。
ここまでやるか。
俺は咄嗟にガードした。

 バチィン!
ズザザザザザザザザー!

 受け止めたが、体ごと吹き飛ばされる。
何というパンチ力。
本当に人間か。
俺は国王の顔を見た。
さすがは、レベル三〇〇。
人間などとうに辞めたパンチ力だ。

 これが『英雄』レベルか。
俺は内心驚いていた。
改造人間にならなくとも、ここまで強くなれるとは。
帝国の将軍たちと戦った時にも思った事だが、それよりも更に上を行くとは。

 これが王。
王の重責か。

「ほう。これも受けきるか」

 国王が更に嬉しそうな声を上げた。
俺的には受け切れてはいない。
体ごと持って行かれたのだ。

 だが、国王は粉砕できなかった事を悔しがった。
お互いが負けたと思っていたのだ。

「尚更そちを叩き伏せてみたくなったわ」

 これだから肉体派は苦手だ。
何故、そう言う方向へ行くのか。

「死ぬまで戦う気か」

「ふふ、それも悪くないな」

 悪いだろ。
さては、退屈な毎日に飽いていたな。
まあ、この王なら死にはしまい。

「サフィリナックスヒューイット!」

 俺は触手を、伸ばして牽制した。

「む?むぅん!」

 触手を一目見て、王は全身をこわばらせた。

 なに!
受けきるつもりか!
猛毒だ。
流石に、死んでしまう。

 バチィ!

 ヒューイットが王の体を打つ。
しかし。

 触手の微細な刺胞は、王の体に刺さる事無く弾かれた。
そんな馬鹿な!

 俺はこれほど驚いた事は無かった。
筋肉を張って刺胞を受け付けないだと。
皮膚にさえ入れば確実即死なのに、それさえも弾くのか。
そんな真似が可能なのか。

 レベル三〇〇だからか。
国王だからなのか。
それともこれがスキルなのか。

 俺は訳が判らなかった。
刺胞を弾く為のスキルなど、そんな他に使い道の無いスキルなんてある筈が無かった。

 全く非常識だ。
これだから肉体派は苦手なんだ。

「あら、凄いわね。もう結構なお歳なのに」

 ウロコフネタマイトがそれを見て呟いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~

山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」 母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。 愛人宅に住み屋敷に帰らない父。 生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。 私には母の言葉が理解出来なかった。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

処理中です...