見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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七八七

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「お前……これはどう言う事なんだ……!」

 ケンが男の胸ぐらを掴まえて吊し上げる。

「ぐ……!それはこっちのセリフだ。なんでアンタがこんな所に居るんだ」

 男は恨みがましくケンを見た。

「なんだと……!」

「アンタはこの件に関わる筈では無かった筈なのに。なんでこんな所にッ!」

 男はそう言うとケンの手を払いのける。

「このエリアに侵入者を感知した時、愕然としましたよ。アンタの顔を見てね。こんな事は騎士団の仕事では無い筈だ」

「騎士団が麻薬の密売を追っている事は一部の団員しか知らないからな。王国内部に手引きしている者が居る事は判っている。そいつらに知られない為にも大っぴらには出来ない。けど、まさか第一騎士団の隊長が黒とは……」

 ケンは明らかに狼狽していた。
こいつの性格ならそうだろうな。
人懐こくて仲間を信じる性格だろう。
こんな裏切りは想定していなかった筈だ。

 俺はケンに変わって男を掴まえた。

「そんな事はどうでも良い。洗いざらい吐け。吐かなくても吐かせるがな。
口を割らないなんてのは不可能だと思え」

 俺が顔を近付けて男に言い聞かせる。

「き、貴様……本当に何者だ。王国内では見ない顔だな。バーロック総隊長とはどう言う仲なんだ?」

 俺は更に男を締め上げる。

「お前が質問するのは許可しない。子供たちはどこだ。黒幕は誰だ」

 男は横を向いてあからさまに回答を拒否した。
なるほど。
良い度胸だ。

 がしっ

 俺は男の指から指輪を抜き取る。

「な、やめろ!何をする!」

「知れた事を。貴様にこんな物を使わせておけるか」

「やめろおお!それは、大事な……!」

 男が必死に抵抗する。
そんなに大事か。

「誰にもらったんだ?ホラ言えよ。無くしたらどうなるんだ?殺されるのか?え、どうなんだ」

 必死に抵抗する男の指から強引に指輪を引っこ抜く。

 ぼきっ!

 骨が折れる音がする。

「ぐあっ!」

 男の顔が苦悶に歪む。
抵抗するお前が悪い。
同情の気持ちは無い。

「ちょ、待てよレオ。乱暴すぎるぞ!」

 ケンが慌てて俺を止めた。

「情けなど無用だ。子供たちがどんな目に遭っているか、どんな絶望の中で殺されているか、お前に想像できるか?今もだ。今もこの瞬間に痛めつけられている子供の気持ちを考えているか?例え一秒でも時間が惜しい。指の一本や十本、別に死にはしない。吐かなければ何をしても吐かせる。俺を甘く見るなよ」

 俺は殺意を込めて男を見た。

「く、狂っている……!助けてくれ総隊長!こいつ、イカれている!」

「レオ!」

「可哀想可哀想で何も出来ない勇者なら引っこんでいてもらおう。神は弱者を憐れんでも助けてもくれん。誰かがやらねばならんのだ」

 俺はケンの制止を無視して男を更に締め上げる。

「楽に死ねると思うなよ。絶対に死なせん。貴様が舌を噛み切ろうが、喉を突こうが、必ず生き長らえさせる。俺の尋問は終わらない。容赦もしない。吐くまで永遠にぶちのめしてやる!」

「ひいいぁ!」

 男が苦し紛れに魔法を唱える。

「ファイヤーボール!」

 ゴオオッ!

 突然炎が燃え上がると、それが至近距離から俺の顔面へと放たれた。

 ボガアンッ!

 目の前が爆炎に包まれる。
男も巻き添えを食って吹き飛んだ。
掴まえていたローブは派手に引きちぎれた。

「レオ!」

 ケンの叫び声が聞こえる。

「……どうした。お前のファイヤーボールなど、この程度だ」

 俺には少しのダメージも無かった。
今さらファイヤーボールなど痛くも痒くも無い。

「なんて、なんて奴だ……」

 男が地面に這いつくばって俺を見上げた。

「レオ……君は、やはり」

 ケンの言葉を無視して俺は男に歩み寄る。

「時間稼ぎもここまでだ」

 ダンッ!

「ぎいゃああああっ!」

 俺は男の膝を踏み潰した。
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