788 / 826
七八七
しおりを挟む
「お前……これはどう言う事なんだ……!」
ケンが男の胸ぐらを掴まえて吊し上げる。
「ぐ……!それはこっちのセリフだ。なんでアンタがこんな所に居るんだ」
男は恨みがましくケンを見た。
「なんだと……!」
「アンタはこの件に関わる筈では無かった筈なのに。なんでこんな所にッ!」
男はそう言うとケンの手を払いのける。
「このエリアに侵入者を感知した時、愕然としましたよ。アンタの顔を見てね。こんな事は騎士団の仕事では無い筈だ」
「騎士団が麻薬の密売を追っている事は一部の団員しか知らないからな。王国内部に手引きしている者が居る事は判っている。そいつらに知られない為にも大っぴらには出来ない。けど、まさか第一騎士団の隊長が黒とは……」
ケンは明らかに狼狽していた。
こいつの性格ならそうだろうな。
人懐こくて仲間を信じる性格だろう。
こんな裏切りは想定していなかった筈だ。
俺はケンに変わって男を掴まえた。
「そんな事はどうでも良い。洗いざらい吐け。吐かなくても吐かせるがな。
口を割らないなんてのは不可能だと思え」
俺が顔を近付けて男に言い聞かせる。
「き、貴様……本当に何者だ。王国内では見ない顔だな。バーロック総隊長とはどう言う仲なんだ?」
俺は更に男を締め上げる。
「お前が質問するのは許可しない。子供たちはどこだ。黒幕は誰だ」
男は横を向いてあからさまに回答を拒否した。
なるほど。
良い度胸だ。
がしっ
俺は男の指から指輪を抜き取る。
「な、やめろ!何をする!」
「知れた事を。貴様にこんな物を使わせておけるか」
「やめろおお!それは、大事な……!」
男が必死に抵抗する。
そんなに大事か。
「誰にもらったんだ?ホラ言えよ。無くしたらどうなるんだ?殺されるのか?え、どうなんだ」
必死に抵抗する男の指から強引に指輪を引っこ抜く。
ぼきっ!
骨が折れる音がする。
「ぐあっ!」
男の顔が苦悶に歪む。
抵抗するお前が悪い。
同情の気持ちは無い。
「ちょ、待てよレオ。乱暴すぎるぞ!」
ケンが慌てて俺を止めた。
「情けなど無用だ。子供たちがどんな目に遭っているか、どんな絶望の中で殺されているか、お前に想像できるか?今もだ。今もこの瞬間に痛めつけられている子供の気持ちを考えているか?例え一秒でも時間が惜しい。指の一本や十本、別に死にはしない。吐かなければ何をしても吐かせる。俺を甘く見るなよ」
俺は殺意を込めて男を見た。
「く、狂っている……!助けてくれ総隊長!こいつ、イカれている!」
「レオ!」
「可哀想可哀想で何も出来ない勇者なら引っこんでいてもらおう。神は弱者を憐れんでも助けてもくれん。誰かがやらねばならんのだ」
俺はケンの制止を無視して男を更に締め上げる。
「楽に死ねると思うなよ。絶対に死なせん。貴様が舌を噛み切ろうが、喉を突こうが、必ず生き長らえさせる。俺の尋問は終わらない。容赦もしない。吐くまで永遠にぶちのめしてやる!」
「ひいいぁ!」
男が苦し紛れに魔法を唱える。
「ファイヤーボール!」
ゴオオッ!
突然炎が燃え上がると、それが至近距離から俺の顔面へと放たれた。
ボガアンッ!
目の前が爆炎に包まれる。
男も巻き添えを食って吹き飛んだ。
掴まえていたローブは派手に引きちぎれた。
「レオ!」
ケンの叫び声が聞こえる。
「……どうした。お前のファイヤーボールなど、この程度だ」
俺には少しのダメージも無かった。
今さらファイヤーボールなど痛くも痒くも無い。
「なんて、なんて奴だ……」
男が地面に這いつくばって俺を見上げた。
「レオ……君は、やはり」
ケンの言葉を無視して俺は男に歩み寄る。
「時間稼ぎもここまでだ」
ダンッ!
「ぎいゃああああっ!」
俺は男の膝を踏み潰した。
ケンが男の胸ぐらを掴まえて吊し上げる。
「ぐ……!それはこっちのセリフだ。なんでアンタがこんな所に居るんだ」
男は恨みがましくケンを見た。
「なんだと……!」
「アンタはこの件に関わる筈では無かった筈なのに。なんでこんな所にッ!」
男はそう言うとケンの手を払いのける。
「このエリアに侵入者を感知した時、愕然としましたよ。アンタの顔を見てね。こんな事は騎士団の仕事では無い筈だ」
「騎士団が麻薬の密売を追っている事は一部の団員しか知らないからな。王国内部に手引きしている者が居る事は判っている。そいつらに知られない為にも大っぴらには出来ない。けど、まさか第一騎士団の隊長が黒とは……」
ケンは明らかに狼狽していた。
こいつの性格ならそうだろうな。
人懐こくて仲間を信じる性格だろう。
こんな裏切りは想定していなかった筈だ。
俺はケンに変わって男を掴まえた。
「そんな事はどうでも良い。洗いざらい吐け。吐かなくても吐かせるがな。
口を割らないなんてのは不可能だと思え」
俺が顔を近付けて男に言い聞かせる。
「き、貴様……本当に何者だ。王国内では見ない顔だな。バーロック総隊長とはどう言う仲なんだ?」
俺は更に男を締め上げる。
「お前が質問するのは許可しない。子供たちはどこだ。黒幕は誰だ」
男は横を向いてあからさまに回答を拒否した。
なるほど。
良い度胸だ。
がしっ
俺は男の指から指輪を抜き取る。
「な、やめろ!何をする!」
「知れた事を。貴様にこんな物を使わせておけるか」
「やめろおお!それは、大事な……!」
男が必死に抵抗する。
そんなに大事か。
「誰にもらったんだ?ホラ言えよ。無くしたらどうなるんだ?殺されるのか?え、どうなんだ」
必死に抵抗する男の指から強引に指輪を引っこ抜く。
ぼきっ!
骨が折れる音がする。
「ぐあっ!」
男の顔が苦悶に歪む。
抵抗するお前が悪い。
同情の気持ちは無い。
「ちょ、待てよレオ。乱暴すぎるぞ!」
ケンが慌てて俺を止めた。
「情けなど無用だ。子供たちがどんな目に遭っているか、どんな絶望の中で殺されているか、お前に想像できるか?今もだ。今もこの瞬間に痛めつけられている子供の気持ちを考えているか?例え一秒でも時間が惜しい。指の一本や十本、別に死にはしない。吐かなければ何をしても吐かせる。俺を甘く見るなよ」
俺は殺意を込めて男を見た。
「く、狂っている……!助けてくれ総隊長!こいつ、イカれている!」
「レオ!」
「可哀想可哀想で何も出来ない勇者なら引っこんでいてもらおう。神は弱者を憐れんでも助けてもくれん。誰かがやらねばならんのだ」
俺はケンの制止を無視して男を更に締め上げる。
「楽に死ねると思うなよ。絶対に死なせん。貴様が舌を噛み切ろうが、喉を突こうが、必ず生き長らえさせる。俺の尋問は終わらない。容赦もしない。吐くまで永遠にぶちのめしてやる!」
「ひいいぁ!」
男が苦し紛れに魔法を唱える。
「ファイヤーボール!」
ゴオオッ!
突然炎が燃え上がると、それが至近距離から俺の顔面へと放たれた。
ボガアンッ!
目の前が爆炎に包まれる。
男も巻き添えを食って吹き飛んだ。
掴まえていたローブは派手に引きちぎれた。
「レオ!」
ケンの叫び声が聞こえる。
「……どうした。お前のファイヤーボールなど、この程度だ」
俺には少しのダメージも無かった。
今さらファイヤーボールなど痛くも痒くも無い。
「なんて、なんて奴だ……」
男が地面に這いつくばって俺を見上げた。
「レオ……君は、やはり」
ケンの言葉を無視して俺は男に歩み寄る。
「時間稼ぎもここまでだ」
ダンッ!
「ぎいゃああああっ!」
俺は男の膝を踏み潰した。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~
山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」
母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。
愛人宅に住み屋敷に帰らない父。
生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。
私には母の言葉が理解出来なかった。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる