見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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七七八

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「仕方が無い」

 俺はそう言うとテクノセクトを呼び戻す。
マッピングは完了していないが、ほとんど完成に近い。

「子供たちを監視して、敵が近付いてきたら教えてくれ」

 俺がそう命じると、テクノセクトたちは三方に散らばって辺りを警戒し始めた。

「この処置で奥へ進むしかない」

 俺はそう言って先へ進んだ。

「虫使いってのは意外と便利なんだな。俺も習得を目指してみようかな」

 俺のは普通の虫では無いがな。

「虫使いって何のスキルだっけ?スカウトのスキルには無かったような……?」

 ケンがブツブツ言いながら付いてくる。
俺はそれは無視してマップの怪しい箇所に当たりを付ける。
北側に他とは違う広いスペースがある。
何があるのか、あるいは何も無いのか。

 俺はとりあえずそこを目指した。

「さっきので全員かな?組織の全貌としては肩透かしだね。例の妹ちゃんも見えないし」

 ケンが言う。
虫使いの件は終わったらしい。
だが確かに、大規模な計画の割にはこの程度かとも思う。
魔法でこれだけの隠し拠点を隠蔽し、たくさんの子供たちを拐った割には、これで終わりかと言う気がしないでも無い。

 俺たちはしばらく歩いて問題のエリアへ足を踏み入れた。

「おおっと、これは」

 ケンが思わず声をあげる。
そこはエリア全体が貯蔵庫になっている。
うずたかく積み上げられた麻袋は、おそらく麻薬だろう。

 ケンは袋を一つ開けて中を確認した。

「これだよ」

 呆れたように小さな小袋を鷲掴みにして俺に見せた。
間違いない。
麻薬だ。
しかも売り捌きやすいように小袋に分けられていた。
それが麻袋にギッシリ入っている。

 それがここに積み上げられた麻袋の数だけあると言う事か。
とんでもない量だ。
王国国内だけでこれだけ流通しているとは考えられない。
もしそうなら今頃王国は麻薬中毒者だらけで、死んだ国になっている。

 だが実際はそうでは無い。
どこか他国にも大量に供給されているのか。
これだけの量から考えれば、帝国もやられているなと思った。
王国の一番のライバル国は、帝国に他ならない。
弱体化させるにしても、売り捌いて金を稼ぐにも、帝国はターゲットとして外せない筈だ。

 ソル皇子はこの事に気付いているのだろうか。
俺は皇子の事が気になった。
俺は帝国とは何の関係も無い身だが、あの皇子は嫌いでは無かった。

 ゴゴゴ……ゴゴンッ!

 大きな音に俺は振り返った。
エリアの入り口が石の壁によって塞がれている。 
閉じ込められたのか。

「やられたね」

 ケンが嬉しそうに俺を見た。
なんだ。
なんで嬉しそうな顔をしているのか。

「こう言うのってピンチっぽくてワクワクしない?」

 しない。
なんだ、ピンチっぽくてワクワクすると言うのは。
俺にはそんな趣味は無いぞ。

「いやさぁ、僕はこう見えても勇者の家系じゃん?でも平和な時代だからね、こう言う冒険者みたいなシチュエーションって憧れるんだよねー」

 何言ってんだこいつ。

「君は冒険者かもしれないけど、僕は貴族だからね。子供の頃はご先祖様の話を寝物語に聞かされて冒険者に憧れたもんだよ。立場的にその夢は叶わなかったけど、でもこう言うのって初めてだよ。凄くワクワクする!」

 なるほどな。
感心している場合でも無いが、俺は妹を養う為に稼ぎの良い冒険者を志した身だ。
そのワクワク感は俺には無かったな。

「で、こう言う時はどうするんだい?」

「騎士団の総隊長様ならどうするんだ?」

 俺はケンに聞き返した。

「そうだなあ。まずは兵を落ち着かせて、それから現状の確認。脱出口の探索かな。うわ、つまんないの」

 自分で言うなよ。
それが総隊長の仕事なんだろ。

「で、君ならどうするんだ?」

 俺は少し考えた。
俺は今は冒険者では無い。
常人とは違う力を手に入れた改造人間だ。
特にどうすると言うのも無かった。
なぜなら俺は死なないからだ。

「向こうがどうせ手を打ってくる。それまで他を調べるか」

 俺がそう言うと、ケンは少しガッカリしたような顔をした。
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