見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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七六一

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 とは言え手掛かりが無い。
ただ意味も無く歩き続けるのもどうなんだ。
斡旋所みたいな公的な所では話は聞けなさそうだ。

 となれば、やっぱり酒場か。
裏情報や噂話は酒場と相場が決まっている。
それでも限界はある。
それ以上は情報屋か地下組織に接触するしか無いが、一見には厳しいだろう。
とにかく、酒場へと向かう。

 路地に入って酒場を探す。
表通りの賑わっている所は駄目だ。
経験的に、路地の怪しい店の方がディープな話にありつける。

 段々とそれらしい雰囲気が強まってくる。
これはそろそろ当たりか。
背後からずっと着いてくる気配も、当たりだと言っている。
こう言う雰囲気が無いと情報にはありつけない。

 俺はわざと更に人気の無い小さな路地へと入る。
気配が嬉しそうにバタバタと路地の入り口へと集結した。
判りやすい奴らめ。

「おい」

 背後から声がする。
俺は喜びを隠してゆっくりと振り返った。

「おめえ、見ない顔だな」

「ああ、今来たばかりさ」

 俺が答えると、男たちがへへへと笑った。

「来たばっかりで悪いが、有り金全部置いて行きな」

「それは困る」

「お前まだ判ってねえのか。お前は鴨られるんだよ。選択肢は二つだ。大人しく置いていくか、殺されて奪われるかだ」

「殺すのか?」

「お前次第だ」

 見たところ三人だが、この辺りにコネを作るには問題無かろう。

「そうか。じゃあ……」

 俺はそう言いながら懐に手を入れた。

「へへへ。そうそう。物分かりが良いと長生き出来るぜ?」

 男たちが薄ら笑いを浮かべながら、無防備に近付いて来た。

「……力尽くで通るとしよう」

「なに!?」

 予想外だったのだろう。
男たちは驚いて構えるのが遅れた。

 だっ

 俺は駆け寄ると、軽く先頭の男を蹴飛ばす。

「うおっ!?」

 男が後ろの男を巻き込んで、玉突き状態で表へと転がり出た。

「くっ……痛ってえな……!」

「おい」

 俺が上から見下ろすように声をかける。

「て!テメエ……!」

「ここいらで麻薬を捌いている奴はいないのか?」

「……なに!?」

 この顔。
知っているのか。

「な、何を言ってやがる!」

「売ってくれる奴を探しているんだ。紹介してくれ」

「ふざけるな!麻薬なんぞ知るか!」

 ぐいっ

 俺は男の胸ぐらを捕まえると、思い切り引き寄せた。

「な、何しやが…」

 言い終わらないうちに、俺は男を空高く放り投げる。

「うわああああああ!?」

 男が絶叫と共に天高く舞い上がる。
仲間もその様子を口を開けたまま見上げた。

「ぁぁぁぁああああ!」

 声が段々と大きくなりながら落ちてくる。

 どさっ

「ひいい!?」

 俺は男を軽々とキャッチした。
口を割らせるのに、この方法は実に効果がある。

「もう一丁、飛んでみるか?」

「い、いいいい、いや、もう良い!」

 男が震える唇で何とかそう言い切った。

「じゃあもう一度聞こう。麻薬を売ってる奴に会わせろ」

「……!!」

 男は目をギュッとつぶった。
相当迷っているな。

「なんだ。お前ら、何やってんだ?」

 通りの店から男が二人出て来て、俺たちを見付けるとそう声をかけてきた。
なんだ。
そこが酒場だったのか。

「あっ!丁度良い!た、助けてくれ!」

 なんだ仲間か。

「は?お前タカられてんのか?こりゃあ良い!」

 二人組が笑う。

「笑い事じゃねえ!早く何とかしろ!」

「ちっ!なんだそりゃ、俺に命令してんのか?……それよりもアンタ、三人相手にずいぶんと威勢が良さそうだな」

 二人組のヒゲ面が俺にそう言ってきた。

「そうでも無い。大人しく端っこを歩いていたんだがな」

「へへっ、言うねぇ。だがよ、この辺りじゃ新参者は黙って財布を置いて行くのが慣例なんだぜ?」

「そんな事は知らん」

「……相当自信ありだな。だが、世の中には上には上が居るって知らなきゃよ」

 二人組はそう言って武器を取り出した。
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