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七四三
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「くっ……知った風な事を。貴様らなど井の中の蛙だと言う事を思い知れ!」
「思い知ってるよ。だから人間は試行錯誤を繰り返す。神様にはそう言う経験は無いんだろうねえ」
オオムカデンダルがヴァルキリーに向かってそう言った。
そんな事、考えた事も無い。
神が失敗を重ねて試行錯誤をするなんて、想像もしない。
神は生まれながらにして完全で完璧な存在な筈。
故に正しいのだ。
試行錯誤などする余地は初めから無い。
生まれながらにして。
生まれながらにして?
神も生まれた時があるのか。
どうやって生まれたんだ。
誰かが神を産んだのだとすれば、その者こそが神なんじゃないのか。
考えれば考えるほど混乱する。
いったいどう言う事なのだ。
そもそも神とはどんな存在なのか。
「……貴様如きが、神の何を知っていると言うのか」
「いーや、全然知らんね。想像はするが、別に興味無い」
オオムカデンダルはバッサリと斬り捨てた。
「神に対して興味が無いだと。やはり貴様らは悪魔の類、このままにはしておけん」
「はっはっはっはっ。だってお前には何も出来ないじゃん。捕まってるし。それにな、悪魔だったら神には興味持ってるだろ。あんなに敵視してるんだから」
オオムカデンダルの言葉に俺は納得した。
確かにそうだ。
つまり、オオムカデンダルは悪魔なんかと一緒にするなと言っているのだ。
彼らからすれば、神も悪魔も同じくらいの扱いだ。
邪魔するならば排除する対象である。
そう言われている事に、ヴァルキリーは気付いているのか。
俺は少し噴き出した。
ヴァルキリーが俺を一瞥する。
いかん。
俺は顔を逸らして知らん顔をした。
本当は笑い事では無い。
オオムカデンダルの言っている事は不敬過ぎて、教会関係者にでも聞かれようものならその全てを敵に回してしまう。
それでも笑ってしまうのは、俺がもう神を信用していないという事なのか。
神よりもネオジョルトの方に、オオムカデンダルの言う事に、より深く納得しているからなのかもしれない。
「私をどうしようと言うのか」
ヴァルキリーがあくまで反抗的に言った。
「さてねぇ。どうしたもんかね」
オオムカデンダルは無責任にも首を捻った。
殺さないだろうとは思ったが、やはり殺さないのか。
まさか、この期に及んで仲間にするなんて言わないだろうと思うが。
「困るんだよなあ、こう言う中途半端なの」
「な、ちゅ……中途半端だと!?」
言われてヴァルキリーが憤慨した。
そりゃそうだろう。
相手は女神だぞ。
「要らないんだよなあ。かと言って殺す意味も無いしよ。どうする蜻蛉洲?」
オオムカデンダルがオニヤンマイザーに意見を求めた。
「どうするって……必要無いならとっとと処分しろ。邪魔だ」
「やっぱ殺すのか。そうだよなあ、どう考えても使い道無いもんなあ」
オオムカデンダルがため息を吐いた。
殺す意味が無いと、殺す事さえ面倒なのか。
この男の気分は未だに読めない。
「……じゃあ、レオ君。やっといてくれる?」
突然お鉢が回ってきた。
俺か?
俺が女神を殺すのか?
女神殺し。
そんな名前が脳裏に浮かぶ。
今更正義の味方面するつもりも無いが、かと言って女神を殺すのにはやはり抵抗がある。
俺はこの世界の人間だ。
価値観がオオムカデンダルたちとは違い過ぎる。
殺すのは仕方が無いとしても、せめてそっちでやってくれよ。
俺は内心慌てていた。
ヴァルキリーの顔をチラリと見た。
目が合う。
「わ、私を殺す気か!」
ヴァルキリーが狼狽えた。
いや、ただ見ただけだ。
そんなに動揺されると、余計にやりづらい。
「思い知ってるよ。だから人間は試行錯誤を繰り返す。神様にはそう言う経験は無いんだろうねえ」
オオムカデンダルがヴァルキリーに向かってそう言った。
そんな事、考えた事も無い。
神が失敗を重ねて試行錯誤をするなんて、想像もしない。
神は生まれながらにして完全で完璧な存在な筈。
故に正しいのだ。
試行錯誤などする余地は初めから無い。
生まれながらにして。
生まれながらにして?
神も生まれた時があるのか。
どうやって生まれたんだ。
誰かが神を産んだのだとすれば、その者こそが神なんじゃないのか。
考えれば考えるほど混乱する。
いったいどう言う事なのだ。
そもそも神とはどんな存在なのか。
「……貴様如きが、神の何を知っていると言うのか」
「いーや、全然知らんね。想像はするが、別に興味無い」
オオムカデンダルはバッサリと斬り捨てた。
「神に対して興味が無いだと。やはり貴様らは悪魔の類、このままにはしておけん」
「はっはっはっはっ。だってお前には何も出来ないじゃん。捕まってるし。それにな、悪魔だったら神には興味持ってるだろ。あんなに敵視してるんだから」
オオムカデンダルの言葉に俺は納得した。
確かにそうだ。
つまり、オオムカデンダルは悪魔なんかと一緒にするなと言っているのだ。
彼らからすれば、神も悪魔も同じくらいの扱いだ。
邪魔するならば排除する対象である。
そう言われている事に、ヴァルキリーは気付いているのか。
俺は少し噴き出した。
ヴァルキリーが俺を一瞥する。
いかん。
俺は顔を逸らして知らん顔をした。
本当は笑い事では無い。
オオムカデンダルの言っている事は不敬過ぎて、教会関係者にでも聞かれようものならその全てを敵に回してしまう。
それでも笑ってしまうのは、俺がもう神を信用していないという事なのか。
神よりもネオジョルトの方に、オオムカデンダルの言う事に、より深く納得しているからなのかもしれない。
「私をどうしようと言うのか」
ヴァルキリーがあくまで反抗的に言った。
「さてねぇ。どうしたもんかね」
オオムカデンダルは無責任にも首を捻った。
殺さないだろうとは思ったが、やはり殺さないのか。
まさか、この期に及んで仲間にするなんて言わないだろうと思うが。
「困るんだよなあ、こう言う中途半端なの」
「な、ちゅ……中途半端だと!?」
言われてヴァルキリーが憤慨した。
そりゃそうだろう。
相手は女神だぞ。
「要らないんだよなあ。かと言って殺す意味も無いしよ。どうする蜻蛉洲?」
オオムカデンダルがオニヤンマイザーに意見を求めた。
「どうするって……必要無いならとっとと処分しろ。邪魔だ」
「やっぱ殺すのか。そうだよなあ、どう考えても使い道無いもんなあ」
オオムカデンダルがため息を吐いた。
殺す意味が無いと、殺す事さえ面倒なのか。
この男の気分は未だに読めない。
「……じゃあ、レオ君。やっといてくれる?」
突然お鉢が回ってきた。
俺か?
俺が女神を殺すのか?
女神殺し。
そんな名前が脳裏に浮かぶ。
今更正義の味方面するつもりも無いが、かと言って女神を殺すのにはやはり抵抗がある。
俺はこの世界の人間だ。
価値観がオオムカデンダルたちとは違い過ぎる。
殺すのは仕方が無いとしても、せめてそっちでやってくれよ。
俺は内心慌てていた。
ヴァルキリーの顔をチラリと見た。
目が合う。
「わ、私を殺す気か!」
ヴァルキリーが狼狽えた。
いや、ただ見ただけだ。
そんなに動揺されると、余計にやりづらい。
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