見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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七三三

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 ごりっごりっぼりぼり

 プニーフタールはインプを咀嚼する。
骨が砕ける音がする。
今まで聞いた中で一番後味の悪い音だ。

 オオムカデンダルは黙ってその様子を見ていた。
オニヤンマイザーがその横へと静かに降り立つ。

「これはプニーフタールじゃないのか?」

「ああ。そのようだが……」

 オニヤンマイザーの問い掛けに、オオムカデンダルが振り向きもせずに答える。

「何を食っている?」

「インプだ」

「インプ?何故?」

「判らん」

 オオムカデンダルは素っ気なく言った。
確かに判らない。
前は助けたのに、何故今回は食ったのか。
それよりも、ミーアを助ける手掛かりが失われたのは痛い。
いったいどうすれば。

「判ってるのは一つだけ。この性悪女神がロクでもない事を考えていて、その為にインプが食われたって事だけだ」

 その通りだ。
結局この状況から判る事は、ヴァルキリーが全て仕組んでいたのだろうと言う事だけだ。

「何を企んでいる」

 オニヤンマイザーがヴァルキリーを問い詰めた。

「私のやる事は決まっている。神の先兵となって共に終末を戦う英霊を集める事。そして神への反逆者には天罰を下す事」

 徹底しているな。
そこだけは全くブレない。 
少しも尊敬できないが。

「そりゃ結構なんだが、インプは仲間じゃないのか?」

 オオムカデンダルがアゴに手をやる。

「仲間?目的が同じだっただけよ」

 つまり、プニーフタールの復活か。
だが、だったら何故食われたのか。

「そんな事は決まっているわ。プニーフタール復活の切り札だからよ」

 なんだと。

「彼はね、タレント持ちなのよ。ただ自分が生け贄になるのは嫌だから人間のタレント持ちをさがしていたけど。私はちゃんと判っていたわ」

 俺は呆れていた。
サタンの片割れなのだからどんな力を持っていても不思議では無いが、まさかタレント持ちだったとは。
自らが生け贄になるのを恐れて人間を拐っていただと。 

「サタンでも生け贄になるのは怖かったのか」

 オオムカデンダルが納得したように言った。
感心している場合か。

「サタンはまだ本来の力を取り戻せていない。だからその為にインプを使ってプニーフタール復活を画策していたようね。もっともこれでサタンの復活はまた遠退いたけど」

 話が大き過ぎてピンとこないが、サタン復活とプニーフタール復活は同時進行だったって事なのか。
この場合はどっちを脅威と見なせば良いのか。
いや、どっちもか。
まてよ、両者は相容れるのか。

 少しも考えがまとまらない。 

「レオ。考え過ぎるなよ。禿げるぞ」

 禿げるかよ。
俺はまだフサフサだ。

 オオムカデンダルは俺の反論は無視して続ける。

「どっちでも良いんだよ。どうせ両方排除しなければならなかったんだ。片方自滅したならラッキーじゃないか。相手の思い通りにさせないってのが、自分の利益になるんだ。覚えておけ」

 なるほど。
それは確かにその通りだ。

「そんな訳だから、アンタの思い通りにはいかないぜ」

「果たしてそうかしら?」

「そうなんだよ。なんせ、今から俺たちがお前の邪魔をするんだからな」

 オオムカデンダルはそう言って肩をぐるぐると回した。

「プニーフタール復活に必要な魔力は十分に足りたわ。インプには礼を言わなければならないわね」

 ヴァルキリーはそう言うと、走ってその場から離れた。

「ヴオォォォオオオオ!」

 プニーフタールの声が辺りを揺るがす。

 ばきっ!ばききっ!
ばきばきばきばき!
ばきいぃーん!

 まるで皿が割れるかの如く、空間が音を発てて割れた。
プニーフタールが覗く穴が、大きく開いた。

「お出ましか。思った展開とはちょいと違うが、第二ラウンドだ」

 オオムカデンダルが独りごちた。
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